夢の中の小さな異世界
伊左衛門
第1話 2度目の夢
僕は目が覚める。
いや、もしかしたら覚めてないのかもしれない。なにせここは普段寝ている部屋とまるで違うのだから。僕は確かに自分の部屋で寝たのを覚えている。だからこれは夢なのだと分かる。
それに根拠はもう一つある。それは僕がこの部屋を知っているからだ。まるで森の中にあるような小屋を僕は知っている。ここに来るのは2度目だ。そしてこの小屋には・・・
「あら、気づいたのね。勘違いしないでよ。別に私があなたを呼んだわけではないのよ。むしろあなたの方から来たのよ。別に呼んだわけでもないのに来るなんて、あなたも物好きね・・・・」
このように、なかなかの過激な女の子が一人いるのだ。
彼女はアンリエッタ。今日も銀髪のショートがよく似合ってる。それにその豊満なバストがシャツの上からでもよくわかる。いいパイオツ様だ。挨拶しなきゃ・・・
「久しぶりだね。会えて嬉しいよ。」
アンリエッタに。そしてパイオツに・・・。
「は!?い、いきなり何を言ってるの!?まさか本当にあなたの方から来たって言うんじゃないのでしょうね!?!?あなたが来たって別に私は嬉しくもなんともないわ!むしろ私は自分の時間をあなたのせいでいま奪われて怒っているほどよ!!全くだわ・・・・さっきからどこ見てるんですか?」
こんなに表情がころころ変わって面白い子だと僕は思う。
最初に出会った時なんか、殺意いっぱいで、「いきなり私の部屋に来てなんなんですか?焼き殺しますよ」って言われたもんよ。その時と比べたら今のアンリエッタは可愛いね。
「今度はニヤニヤして気持ち悪いですね。とりあえず早く私のベッドからどいてくれます?とても不愉快なの。ちなみに私のベッドで何かしようとしたら本気で焼き殺すからね。」
「それは怖いね。」
これは本気の目だ。僕にはわかる。名残惜しいが大人しく従っとこう。
しかし、ここは一体どこなんだろう。前にも聞いたが「ここは私の部屋でありそれ以上でもそれ以下でもないわ」と言われそれ以上のことは何も聞けなかったなあ。
これはいわゆる異世界というやつなのだろうか。
と言っても、小屋だけなのだが。
「ほら、あなたに教えてもらったコーヒーよ。これでその腐った目も覚めるでしょ。」
「この腐った目は元からなんですけどね。あと別に腐ってないですけどね。」
では、ありがたくいただこう。うん・・・・相変わらずまずいね。苦い泥水を飲んでる気分だ。実際に飲んだことはないけど。
「なに、その不味そうな顔は?言っとくけど残したら承知しないからね。こんな私でも、あなたの言ったとおりにちゃんと作っているのよ。」
僕は泥水の作り方は教えてないんだけどね。
「アンリエッタが入れてくれたどろm・・・コーヒーだ。ちょびちょび飲ませてもらうよ。」
「ちなみにこのコーヒーは泥水を元に作り上げたオリジナルコーヒーよ」
「なるほど。こりゃ納得だ。」
「冗談よ。そんな飲み物あるわけ無いでしょ。なに納得してんのよ焼き殺すわよ」
「アンリエッタはすぐ焼き殺そうとするなあ・・・。」
ちなみにこのコーヒー豆やらは元からこの部屋にあったものだ。以前にコーヒーの作り方を知らないアンリエッタに僕が教えてあげた。
コーヒーの他にもいろんな本や、何故かテレビやゲームまである。
ここは異世界なのかホントに・・・。アンリエッタいわく、
「気づいたらいつもあるのよ。使い方なんて分からないし、嫌がらせなのかしら」ということらしい。
「さあ、そのコーヒーを飲んだらさっさと帰りなさい。ここはあなたがいても仕方の無いところよ。」
「そんなこと言って、僕が簡単に帰るはずがないの分かってて言ってるでしょう。ここに来たのもまた何かの縁だ。時間までここに居させてもらうよ。」
「はぁ・・・。あなたも物好きですね。こんな私といるよりも、早く自分の世界に帰ったほうが楽しいことがいっぱいあるでしょ。」
「まあ確かに現実には楽しいことがあるにはあるが、それはここでも同じさ。この夢の中でも楽しいことがいっぱいある。またいつ君と会えるかわからないからね。思い出をいっぱい作りたいんだよ。」
「……好きにしなさい。」
実際、元の世界に帰る方法は2通りある。1つは簡単な話、そこにある小屋の出口からでればいいのだ。試したことはないが、アンリエッタが「そこの扉から出れば帰れると思うわよ」と言ってたのを覚えている。
2つ目は、タイムリミットになったら自動で元の世界に戻されるというもの。だから僕はタイムリミットになるまで、この部屋をでないことにした。
「さて、アンリエッタ。コーヒーを飲み終えたら何をしようか。」
夢の中の小さな異世界 伊左衛門 @killsy
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