第4話 企画会議

次の日、みんながそれぞれ考えたであろうアイデアを出し合うために企画会議が行われた。


進行役の大隅ゆかりが

「では、本日の企画会議を始めたいと思います。議題は昨日の…。」

とちょっと言い淀んで、「"ワードナになりたい"のアイデアやゲームイメージなどですね。」と続けた。


うちの会社は企画書を作成するのは全体でアイデアを練った後に作成するため、企画が形になるまでは、企画名を決めないのが通例だ。

今のところ、複数の企画を同時に考える事はないから困ることは無いけど、そのうち企画立案の体裁は考えないと、ややこしくなりそうだ。

せめて企画の名前くらいちゃんと付けないと何のことを話しているのか判らなくなってしまう。


大隅ゆかりは、僕の名前を呼んで

「もう一度、イメージをお話いただいてよろしいですか?」と僕に発言を求めた。

僕は、「ええ、えっと、昨日話した通りなんですが…。」と

自分のダンジョンを作って、その一番奥で冒険者を待ち構えて、罠や手下を配置するゲームだと言うことを伝えた。

そして、「昨日、村田さんが言ってたように他の人が作ったダンジョンも攻略できたら面白そうですね。」と付け加えた。

すると村田さんは、「でしょ!でしょ!」という風に満面の笑みで頷いていた。


その後、座っている順でアイデアを発言していくことになった。

最初はデザイナーの染谷さんから…。

この企画会議では席次というものはなく、みんな好きな場所に座っていく。

今日の席順は進行役から見て、右手前から染谷さん、丸井さん、村田さん、僕。

左手前から、朝倉さん、藤原さん、そして吉田さんの順だ。


「えー、ゲームのアイデアとはちょっと違うかもしれないのですが…」と染谷さんが発言をはじめる。

「ちょっと気になった点で、ダンジョンものと言うことでモンスターが登場すると思うのですが、何種類くらいのモンスターを登場させるのか?が気になりました。」

続けて、武器や魔法の種類などについても言及して発言を終えた。

染谷さんの発言の内容は、デザイナーである染谷さんの仕事に直結するので、もっともだと思いながら僕は聞いていた。

進行役の大隅ゆかりは

「では、検討課題にしておきますね。」とホワイトボートの真ん中に線を引いてその左側に検討課題と書いて染谷さんの発言内容をまとめた。


次に、丸井さんが少し聞き取りにくいくらいの低い声で

「自分も村田君の言ってたようにダンジョンが攻略できるほうがいいと思うんだけど…攻略時はもちろん3DダンジョンのRPGがいいと思う。」

そして、村田さんが「なら、ダンジョン攻略時はパーティーを組みたいからギルガメッシュの酒場的なものが欲しいね。つか、パーティー見つける場所って酒場が常識になってるけど、他にないのかね?別に広場でも駅前でも便所でも。」

と言ったところで、「便所はないでしょ!!!」と全員から総ツッコミを受けていた。


続けて僕が発言し

「NPCが所有するダンジョンっていうのがある方がいいと思います。ゲーム立ち上げ時には誰もダンジョンを作っていないからその対策とダンジョンごとに稀少アイテムとかレアモンスターを配置するとかイベントを開催するとかいろんなことに使えそうですので。」

僕の次は、僕の向かいに座っている吉田さんの番だ。


吉田さんのアイデアは

ダンジョンには所有者の部屋があって、その部屋に任意のアイテムを置く。それを取られたらダンジョンが攻略されたということになる、というものだった

あのゲームではアミュレットを奪還するのが目的だったので、そのイメージなのかな?と思ったけど、単純に真似たわけではなかった。

「ダンジョンの所有者が指定したアイテムのレア度によって、攻略者がどのダンジョンを目指すかが決まるようになるはずなので、人気なダンジョンはランクが上がるとかの仕組みを作ってゲームの活性化を図れるんじゃないか?と考えている。」

もちろん、と付け足し「奪われたアイテムは失う。」


吉田さんのアイデアは要するに、いいアイテムがあるダンジョンは人気になるが、

ダンジョンに居るモンスターが弱かったり、ダンジョンが簡単だとダンジョンの所有者はすぐにアイテムを失ってしまう。

逆に、アイテムがしょぼくて、モンスターが強すぎたり、ダンジョンが難しいと不人気になってランクが下がるということだ。

結果、プレイヤーが自立的にゲームバランスを考えてくれるようになることを期待している、ということだ。

攻略の目的を明確にしながら、ゲームバランスをプレイヤーに任せてしまおうとい一石二鳥のアイデアだった。


続けて、藤原さん

「ダンジョンを作る側に制限が必要だと思っています。というのは、ダンジョン攻略のRPGが3Dなら例えば地下100階のダンジョンの攻略ってかなりの苦痛になると思うからです。」

「ただ…。」と藤原さんは続け

「ダンジョンを作る側からしたら制限があるのは面白くないので、制限はレベルか何かしらの点数…経験値でもいいんだけど…それによって制限を行って、3Dダンジョン攻略を助ける機能をゲーム内で付与するのがいいかなと。」

そこで藤原さんの言葉が途切れたので、僕は

「要するに・・・ゲームを進めていく上で取得できる点数や課金者が取得できるポイントなどでダンジョンの作成や拡張できるということですか?」

と発言してみた。

すると藤原さんは

「そう、そこで課金者と非課金者の差別化も図れますし、だからと言って非課金者が圧倒的に不利になるわけでもなさそうなので。」


たしかに、オンラインRPGでは、ユーザにどこで課金してもらうか?を考えるのは重要だし、藤原さんの案はいいバランスになるように思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンジョンマスター 神無月 御疎歌 @Kannaduki-misoka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ