第3話 動機
企画会議の後、自席に戻った僕は落ち着かない気持ちだった。
―ー ワードナになりたい。
実は、企画会議で思いつきで言ったような言葉だったけど、本当にそういうゲームが作りたかったのだ。
そのためにこの会社に入社したと言っても過言ではないくらいに。
この会社に入社する前、僕はSEをやっていた。
新卒で前の会社に入社した頃はひたすらプログラミングをしていた。
その時のプロジェクト毎にいろんなプログラム言語でプログラムを書いて、単体テストを実施するということばかりをやっていた。
だいたい、どのプロジェクトでもプログラミングから単体テストという期間はスケジュールがタイトで、少しでもつまづくと残業ばかりの日々になってしまう。
少し説明するとシステム開発というのはだいたいが提案・要件定義・基本設計・詳細設計・プログラミング・単体テスト・結合テスト・システムテスト・ユーザーテスト・本番リリースという流れで行われる。今説明したようなものはウォーターフォールと言われるプロジェクトの進め方で大規模なシステム開発はこのやり方が適していると言われている。他にも、アジャイルだとかいろんな流儀があるんだけど、それはまた機会にでも…。
本題に戻って…僕はプログラミングをして、単体テストを実施する仕事が多かったわけだけど、なぜか触ったことも無い見知らぬプログラム言語のプロジェクトにアサイン(参画するという意味)されることが多く、他の人がすらすらとプログラムを書いている隣で入門書とかリファレンス本を片手に、時にはグーグル先生で調べたりしながら四苦八苦してプログラムを完成させていた。そんな訳なのでもちろん他の人よりもプログラムの完成までは大幅に時間がかかるくせに、〆切りは同じなのでひたすら残業の日々だった。その頃の残業時間は今思ってもとんでもなかったように思う。残業時間が200時間に達しようかということもあった。
しかし、そのおかげで今ではVisual BasicやPHP、java、C#など主だったプログラム言語はほとんどこなせるようになった。 当時、日本で初めて扱うといったようなマイナーなプログラム言語にも携わったこともある。
そんなこんなで、プログラマーとして2年ほどの経験を積んだ頃からは段々とプログラミングをする事は減ってきて、基本設計や詳細設計、そしてテスト仕様書のレビューなどの仕事が多くなってきた。
さらに数年の経験を積んで、前の会社を辞める直前には提案や要件定義と言った、いわゆる上流SEと言われるような仕事に携わるようになっていた。
上流SEをするようになってから「SEという仕事は誰かの夢を実現する仕事だなぁ。」と思うようになった。
誰かがシステムを作りたいといえば、
どんなシステムにしたいのかを伺ってどうやって実現するかを考える。
少ない予算でやりたいと言われれば、予算に応じたやり方を考える。
早くやって欲しいと言われれば、工期が短いやり方を考える。
そして、完成系がイメージできる資料を作成して、「これでどうですか?」と確認して作成に入る。
そこに僕は作りたいと思ったものを作れる要素はほとんど無くて、ただただ依頼者の希望を叶えるためだけに仕事をしていたように思う。
それはそれで素晴らしい仕事だとずっと思っていたけど、ある日なぜかふと、自分の好きなものを作りたいと思い立ってしまった。
きっかけは、お酒を飲んでる席での友人との他愛も無い話だったように思う。特に心に残った言葉とか話題とかあったかどうかも覚えていないけど…。
あの日の帰り道では、強く自分の好きなものを作りたいと思うようになっていた。
その帰り道、歩きながらいろいろと頭に描いてみた。僕は何を作りたいんだろうか?と。
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