第3話 ハンター編(エピローグ)
「は〜、この間買ったマラスキーノ・ティー、おいしいなぁ!」
お菓子の家の修復作業が終わり、ジュニアが、家でのんびりしていると、ドーン! という爆発音が聞こえ、慌てて外に出てみました。
炎と煙を背にして、歩いて来るのは、長身の東洋人二人です。
一人は黒髪に碧い瞳の青年で、魔道士のよくはおっているフード付きの黒いマント姿、もう一人は、黒いウェーブの長い髪に、黒い切れ長の瞳の女性で、部分的に甲冑をつけた魔法騎士の、美男美女の組み合わせです。
「お菓子の家なのに、大人が来た!?」
驚いたジュニアは、何度もまばたきをして、二人を見ました。
「私の名は、ヴァルドリューズ。こちらは、妹のラン・ファ。私たちは、国から派遣された保安部隊。最近、行方不明の子供たちが続出している件で、ここへ来た」
淡々と、ヴァルドリューズが説明すると、ジュニアが、二人を交互に見ながら、必死に訴えました。
「もう飢饉もおさまったしさ、最近は、もう誰も来ないよー! ホントだよー!」
ですが、ヴァルドリューズの表情は変わりません。
「不法に建てられた家は、例え、材料がお菓子であっても、撤去することが国の命令だ」
「この不吉な森は、この際、森林伐採して、いなくなった子供たちを探し、保護してから、リゾート化することが決定したのよ」
二人の話に、ジュニアは、目を白黒させています。
「それって、かえって、自然破壊じゃないの!?」
「王の命令だ。逆らう者は、首が飛ぶ」
「ええーっ!? この国、そんなに物騒だったっけ!?」
「国が腐敗していることは置いておいて、さっさと出て行け」
「国が腐敗してるの、それ一番置いといちゃダメだよねぇ!?」
「保安部隊として、ぶっ壊す権限を持っているわ」
「やめて!!」
「妹よ、撤去を」
「はい、お兄様」
ジュニアが止めるのも聞かず、ラン・ファは、てのひらをお菓子の家に向け、膨大な魔法エネルギーを集結させると、一気に放出し、破壊しました。
「いやーーーーー!!」
ジュニアの悲鳴は、かき消され、爆風と爆音とともに、お菓子の家は、消し飛びました。
「あんたたちは、悪魔か!?」
「お前が言うか?」
無慈悲な表情で一瞥すると、ヴァルドリューズとラン・ファは、去っていきました。
ぺたんと地面に座り込んだジュニアは、しばらく、そのまま、呆然としていました。
「なっ、なんだ、貴様らは!?」
遠くで、神経質そうな声が聞こえます。
「ああ、あれは、三丁目のダグトさんだ」
ぼやっと、そんなことを考えていると、あの保安部隊のヴァルドリューズという男の、平淡な声も聞こえました。
「違法に建てられたお菓子の家は、撤去する」
ジュニアが聞いたのと、同じ説明です。
それから、魔法攻撃音と爆発音が聞こえました。
「なにをする! 馬小屋まで破壊しやがって! それでは、俺の帰りのウマがないではないか!」
「ああ、ダグトさん、通いだったんだ……」と、ジュニアは、ちらっと思いました。
「二丁目のリリドさんとこは、数日前、火事で焼けちゃったし……」
途方に暮れていたジュニアは、そろそろと立ち上がり、荷物をまとめることにしました。
保安部隊の働きによって、ジュニアの家以外に、森のあちこちにあった、魔女のお菓子の家からは、続々と子供達が見つかったのでした。
めでたしでした。(?)
おーしーまい
ヘンゼルとグレーテル かがみ透 @kagami-toru
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