シンドバッドの本懐

僕たちはシンドバッドを追いかけて海へと向かう途中に少年に出会った。まさか、その少年がシンドバッドだったなんて思いもしなかった。


「まさか、探していた人がこんな出会い方をして見つかるとは。」

「な、なんかすみません。」

「シンドバッドが謝る必要はないよ。それに、歳も近いんだし別にていねいな言い方をしなくても。」

「え、はい....でもこの言い方が気に入っているので、出来たらこのままがいいか....な。あ、僕なんかがすみません。」


シンドバッドがそう言うと、レイナは僕にだけ聞こえるような小さな声で話しかけてきた。


「ねえ、エクス。本当にあれがその、シンドバッドで当っているのよね。聞いていたのと違うんだけど。」

「まあ、本人がそう言っているんだし、そうなんじゃないかな。」

「え~、やめてよ。もし嘘だったらすごく困るじゃない。」


そんなことが言えるレイナに対してタオの方は心の傷が深かったらしく、少年がシンドバッドと知ると気落ちして嘆いている。


「あ、あれがシンドバッド....

財宝....?冒険....?ふっ、なんだそりゃ。

はぁ~、何も考えたくない。」

「やばいです。タオ兄がおかしくなっています。」

「この世の終わりみたいな顔をしていて、こっちも変な気分に。」

「あははは....」


この状況を嘆く人やすぐに謝る人がいて....どうしよう、僕も変な気分に。


「ねえ、シンドバッド。あと、どれくらいで海に着くのかな。」

「あ、はい。ええと、あそこにゆるやかな丘が見えますよね?そこを越えると森の出口が見えてきて、そこが海なんですけど....」

「ありがとう。シンドバッド。」

「い、いえ....

で、でもどうして僕についてきてくれるんですか。」

「シェインたちには、やらなきゃいけないことがあります。それがシンドバッドくんと同じだけだったというだけのことです。そういうシンドバッドくんはなぜ海賊退治に?」

「僕は、周りの人たちに期待されて....かな。」


その言葉を言っていたときのシンドバッドは今までとは違って、悩んでいる顔をしていた。

そんなことを話しながら歩いていると、だんだんとタオも落ち着いてきたようで、その間に僕たちは海に来ていた。


「この想区で二度目の海だけど....」

「荒れていますね。」

「荒れているな。」

「荒れているわね。」


最初に訪れた海はきれいでゴミ一つ無かったのに、ここではゴミどころか周りにはたくさんの木や武器が散乱していて、足の踏み場もなかった。


「ここは大量の海賊が現れるから、町のみんなや国の兵士たちが戦っているんだけど....」

「あまり、変わっていないのね。」

「う、うん。」

「しっかしそうすると、どうやってその大量のヴィ....海賊を相手にするんだ?」

「そうね。いくら私たちでも大量の海賊を相手にしていたら体力が持たないわ。」

「えっと、その....僕たちはこの海の近くの島にいる海賊を倒すそうです。」

「ということは、邪魔をしてくる海賊たちを倒せばいいのね。案外、今回は楽に終わりそうじゃないの。」

「今、必要のないフラグが立った気がします。」


すると、これまでヴィランとは比べものにならない巨大なヴィランがどこからともなく現れた。


「おいおい、メガ・ヴィランが二体も現れたじゃねーか。」

「これは倒さないと前に進めないね。」

「これって、私のせいなの?」

「ときどき、自覚がない姉御が恐ろしくなるときがあるんですが。」

「ぼ、僕も戦います。」


ヒーローの魂と接続した僕たちとシンドバッドは、島を目指しメガ・ヴィランたちと戦った。



メガ・ヴィランたちを倒した僕たちとシンドバッドは、目標の島を目指していた。


「それにしても、こんなに弱そうに見えるお前があんなに強かったとは思ってもいなかったぜ。」

「タオ兄、シンドバッドくんに失礼ですよ。弱そうに見えるからといってそういうことは言葉に出さないものです。」

「そうよ。弱そうに見えるからって本人の前で言ったらダメじゃないの。」

「な、なぜかひどいことを言われているような気がします....

これでも僕は、『船乗りシンドバッド』として子供からお年寄りまで様々な階級の人たちの英雄的な存在なのですが....」

「ごめんね、シンドバッド。」


エクスがシンドバッドに謝っていると、シェインとタオが二人で話していた。


「それにしても、シンドバッドくんはあんなに強いのに、なぜあんな性格なんでしょうか。」

「さあな。でも、何か訳ありなことは違いねえ。」

「みんな、島が見えてきたわよ。」


レイナが島を見つけて少しいた後、上陸することができた。


「ここがヴィランのいる島ですか。」

「いかにもって島だな。」

「?でも、おかしいわ。ここにはヴィランが一匹もいないじゃない。」

「シンドバッド、これは何が....シンドバッド?」


僕はシンドバッドに話しかけようと後ろを振り向くと、そこには明らかにさっきまでのシンドバッドとは違う雰囲気の少年が立っていた。


「エクス!シンドバッドから離れなさい!」


そんなシンドバッドがおかしいと感じたのか、レイナは僕に向かってそう叫んだ。僕はその声に反応して、すぐにシンドバッドから離れた。

すると、シンドバッドは不気味な笑い声を出した。


「僕は、もう静かに暮らしていたいだけなのに....

運命が僕を苦しめる。だから、周りの運命を壊しているのに....

なぜ、君たちの運命は変えられないんだ!

こうなったら、僕が直接お前らを壊してやるっ!」

「そんな!どうして君が!」

「エクス、話しても無駄よ!理性を失っている!」


そう、今エクスたちの前にいるのはあの臆病なシンドバッドではなく、自分の運命に不満を持ちその身をカオステラーに憑依させられたシンドバッドである。


「壊してやるっ!」


シンドバッドに憑依したカオステラーがそう叫ぶと、周りからヴィランやメガ・ヴィランが現れた。


「クルル....クルルゥ....」

「すべて倒さないと、倒されてくれないみたいね。」

「そうみたいだな。いくぞ、シェイン!」

「了解です。一丁、やってやりますか。」

「エクスも早く接続して!」


レイナに言われて目を覚ました僕は、この想区のカオステラーと決着をつけるために戦いに出る。

















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