『主役』との出会い

「はあ~。見かけによらず大したもんだな、お前さんたち。」


町人は海賊がいなくなったと知ると、一行の前に姿を現す。


「そう言うおっさんはすぐに逃げ出していたけどな。」

「しょ、しょうがないだろ。どこからともなく湧いてくるし、周りの奴らも海賊になっちまうんだ。」

「なぜでしょうか、姉御と同じ危険な匂いがします。」

「ちょとシェイン、どういうことよ。」

「あ、やば。」

「待ちなさい!」


シェインはそう言いって、レイナから逃げ回っている。そんな二人を尻目に僕は、町人さんに話を聞くことにした。


「町人さんは、どうしてここに?」

「ああ、オレは海が恋しくなっちまって....

それで来てみたらお前さんたちがいてな。」

「そしたら、海賊が現れて、隠れていたと....」

「ま、まあそうだが。こんなのすぐに『シンドバッド』様がどうにかしてくださる。」

「「「「『シンドバッド』?」」」」


さっきまでしていた追いかけっこが終わったのか二人も僕とタオのように知らない人の名前に首をかしげている。


「お前さんたち、シンドバッド様のことも知らないのか。シンドバッド様は三度も海へ航海されて、数々の財宝を見つけ、様々な冒険をした御方だぞ!」

「財宝....!冒険....!」


町人さんから『シンドバッド』について聞いたタオは、目が輝いている。


「おっさん、そのシンドバッドはどこにいるんだ!」

「シンドバッド様ならオレの住んでいる町に住んでいらっしゃるが....」

「そうか、ありがとなおっさん。よし、お前らいくぞ。」

「ちょっと、待ちなさい!どこにいこうとしてるの?」

「そんなの決まってるだろ。シンドバッドに会って冒険話を聞かせてもらうんだよ。それに、そいつが『主役』かも知れねーだろ。」

「そうかも知れないわね。というか、何であなたが仕切っているのよ。リーダーは私なのに。」

「姉御、今はそんなことよりも先を急ぐことが優先です。新入りさんも行きますよ。」

「三人とも待って!あ、あのありがとうございました。町人さんも気を付けて。」


エクスは町人に挨拶をすると、すぐに三人を追いかけるのであった。



「やっ!」

「クルルゥ~」

「ふぅ~。これで粗方のヴィランは倒したかな。」


最後の一匹だったと思われるヴィランを倒した僕は、ヒーローの魂との接続を解くため『空白の書』から『導きの栞』を引き抜いた。


「そのようですね。ヴィランの鳴き声が聞こえません。」


僕の近くにいたシェインは『空白の書』から『導きの栞』を引き抜くと、僕の独り言が聞こえていたのか答えてくれた。


「こっちも終わったわ。」

「オレの方もな。」


レイナとタオもヴィランとの戦いが終わったのかこっちに戻ってきた。


「それにしても、まさかシンドバッドが町にいなかったとはな。」


タオが悲しそうに話した。

僕たちは、海で会った町人さんから聞いた通り、シンドバッドの住む町へ訪れることはできたものの。


「まさか、海賊を倒しに海に行ったなんて。」


シンドバッドの住む町へ訪れた僕たちは、近くの町の人に話を聞くと海賊を倒しに海に行った、という情報を得る。

そのため、僕たちはシンドバッドを追いかけている。


「さっきまでとは違って、ここからヴィランの数が増えた気がする。」

「そうね。下手したらこっちの体力が持たないわ。一刻も早く、そのシンドバッドていう人を見つけないと。」

「さっきから話に出てきますが、シンドバッドとはどんな人なのでしょう?」

「そりゃー、オレ様のように出来た人間に決まっているだろ。」


タオがシンドバッドについて話すと、レイナは「ぷっ」と笑った。


「あなたが出来た人間?何かの冗談でしょ。」

「なんだ、お嬢。今回はやけに喧嘩腰じゃねーか。」

「そうかしら。あなたが突っかかってくるんじゃなくて?」

「なんだと~。お嬢がその気ならさっきの喧嘩の続き、ここでやってもいいんだぜ。」

「ふん。やってやろうじゃないの。」

「二人とも、今ケンカしたら....」

「クルル....クルルゥ....」

「はぁ~。なんで学ばないんでしょうか、この二人。」

「ギャー。誰か助けてーー!」


シェインが二人の行動にあきれていると、どこからともなく叫び声が聞こえてきた。


「困りましたね。誰かが襲われているみたいです。」

「そんなことよりも、早く助けないと。」


僕はそう言うと、ヒーローの魂と接続をした。そして、助けを呼ぶ声がした方向に走っていった。



「た、助けてもらい、ありがとうございます。」


僕たちは、叫び声が聞こえた方向に向かった。そこには木の上で大量のヴィランの攻撃を必死によけている少年がいた。

そんな少年をヴィランから助けた後の話。


「ほ、本当に何とお礼したらよいか....」


助けた少年は頼りなくお礼の言葉を言った。

そんな少年に対してタオの返した返事はさっぱりしていた。


「はいはい、じゃあな。」

「あ、はい。....って、え?」

「なんだ、まだ何かあるのか?オレたちは先を急いでいるんだ。」

「え、いや。....なんでみなさんは急いでいるんですか。」


タオの気迫ある言葉に負けたのか、少年は僕たちの急いでいる理由を聞いてきた。

そんな少年の質問に対してシェインが答える。


「私たちはシンドバッドという人を探しています。何か知っていることはありませんか?」

「え?」

「おいシェイン、今は人と話すよりも先に進むことが優先だろ。」

「あ、あの~。」

「そうよ、ここで道草を食っている場合じゃないわ。」

「あ、あのー!」


少年は何か言いたかったのか、助けを呼んだときのような大きな声で呼びかけてきた。


「そ、そのシンドバッドは、僕なんで、す。」


その言葉を聞いた瞬間、僕たちは見合った。


「えぇーー!」


そして驚いた。

僕たちの目の前に立つ臆病な少年が、船乗りシンドバッドなのだから。

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