異食
@mutsuki0115
第1話
なぜ、食べるのか。
人はその答えを、いくつ答えられるのか。
腹が減るから。美味しそうだから。
義務だから。
いくつかは、答えを導けるだろう。
ただ、わたしはそれらに付け加えて、こう述べたい。
無性に、逃げたいからだと。
さて、わたしの食をもう少し話そうじゃないか。
わたしが、わたしという異常に気がついたのは小学生の時だ。
まず、一つ目は枯れ枝だ。
枯れた木の枝。その中にある、白い部分をわたしは、当時食べていた。
醤油やわさびをつけるわけじゃない。
ただ、そのままを食べるのだ。
味は、これぞ木の枝だという味だ。
決して、美味ではない。
だが、木の枝ならなんでもいいというわけでわない。
枯れた木の枝。これに限る。
だから、わたしは秋や冬が好きだ。
夏よりも、枯れ枝に巡り会えるからだ。
もしも、地球が枯れ果てる時は役に立ちかもしれない。
さあ、次は中学生の時だ。
その頃わたしは、紙にはまってしまった。
コピー紙より、色紙が最高だった。
中学生になり、途端に色紙は色をなくしていった。それは、大人になるにつれて色紙に必要性がなくなったからだ。
それが、悲しくなりわたしは色紙に思いを馳せ、少しづつ食べるようになった。
味は、インクの味だった。
決して美味ではない。
ただ、たべたかったのだ。
大人になるのが怖くて、食べていた。
わたしは、何も不味いものを食べたいのではない。
わたしは、普通に美味しいものが好きだ。
一番に好きなのは、おでんだ。
おじさん臭いが、味のしみたおでんが好物なのだ。
さあ、次を紹介しよう。
わたしは、高校生になった。
その頃、わたしは体毛にはまった。
一つ付け加えるが何もそこら中に落ちている体毛全てではない。
わたしが、食べるのはわたしの体毛だけだ。
特に、まつ毛がすきだった。
痛みを感じると、すっと落ち着いたのだ。
鏡を見ながらではなく手探りで抜き取ることが快感だった。
歯に毛が挟まり、違和感に苦労したことも多々ある。
歯を磨けば、水と一緒に出てきたことも多々ある。
その時、わたしは異食を自分で感じた。
それは、世界とのずれだった。
涙があふれた。
過去の異食もいま考えるとわけがわからない。
けれど、やめられなかった。
特別に虐められたわけじゃない。
不幸だったわけじゃない。
お金に困ったわけじゃない。
けれども、わたしはやめられなかった。
それが、わたしの欲だったのだ。
食べている時は、無性だったのだ。
わたしが、わたしの異常に気付いたからといって欲がなくなるわけではない。
わたしは、次の欲に走った。
その時、気づけばわたしは大学生だった。
わたしは、プツリと異食を止めていた。
次にわたしがはまったのは塩だった。
食塩を手始めに食べ始めた。
辛い。
辛い。
塩辛い。
喉が渇いた。
渇きに水を飲んだ。
そしてまた、塩を食べた。
なにかに、つけて食べるのではなく、塩だけを皿にだしたべた。
体が乾燥していることが、わかった。
異食 @mutsuki0115
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