第33話 組織・勢力・種族関連用語
一、人間/組織
怪物
怪物と聞いて一番最初に想像するのは異形の化け物だろうが、ここでの怪物とは異形を人の身で狩れる者を指す。
PHCに所属する狩人はその怪物が目覚めて魔獣を屠れる人間が大半だ。ただし、そのほとんどは心を病んでおり、大抵任務中に死亡するか報酬を独り占めしようとした狩人に“事故死”させられる。
社長は朱里に「人は誰しも怪物を飼っている」と揶揄したが、通常の人間では狩りの才を目覚めさせる前に死んでしまう。PHCで生き長らえていることこそ一種の怪物を持つ者の証明であり、そこで生き延びた狩人はとても稀有な存在である。ある意味、真なる怪物とも言える。
怪物とは太古の昔から存在した狩猟民族の遺伝子を受け継ぐ者とされている。高宮朱里は自身の怪物を余すところなく発揮して、魔獣の倒し方を取捨選択して狩り殺す。
だが、古代人たちが魔獣を本当に狩っていたのかは定かではない。アダムはイブと交わる前に、リリスとの間に子を儲けていたとされている。アダムとイブの子は人間で、悪魔とリリスの子はリリンだが、ではアダムとリリスの子は一体なんなのだろうか?
PHC
プライベートハンティングカンパニーの略称。日本語では民間狩猟請負会社とも。世界各地に支社を持つ。
PMCあるいはPMSCsの狩人版。所属するのはハンターとなる。魔獣専門の派遣会社だが、戦闘力は各国の軍隊を合わせても勝ち目は薄いほど。PHCが独自開発した技術の数々は既存の科学の遥かに先を行っており、まだ開発中のパワードスーツや通常兵器では効果の薄かった魔獣と対抗できる兵器を開発するなど、未知の領域へ入り込んでいる。狩りだけではなく、クローンの売却も行っている。
PHCは会社として見ると色々問題点が浮き彫りとなるが、PHCが怖ろしいのはそういう問題点を世界中の国々が許容しなければならないことだ。狩りの技術を常に秘匿しており、相手が例え国連だとしても交渉の余地はない。
アメリカやロシアを筆頭に、PHC相手に何度か軍事作戦が展開されているが、どの作戦も失敗に終わっている。
狩人寮や食堂など、狩人の生活支援サービスは充実している。ただし、帰宅は絶対にできないが。
狩人
狩猟を生業として生活する人々を指す言葉。もしくは、PHCで魔獣を狩る人間たちを示す言葉でもある。
狩人すなわちハンターは、PHCにスカウトされた者たちだ。そのスカウトの方法は様々で自分の意志で訪れる者から、借金を背負った者、無理やり拉致された者も含まれる。
ハンターは主に銃器を使って狩りを行う。コンバットスーツという身体能力向上の効果を持ったアシストスーツを装備して、好みの銃を使って獣を追いつめるが、殉職率はとても高い。ハンター適正のない哀れな人間はオペレーターとして仕事をするか監視係兼警備員としてPHC内を見回るか、女性であればクローン作製用の人工母体として永遠に子どもを産み続けるかの選択を迫られる。
オペレーター
PHCで狩人をサポートするオペレーター。戦況報告や敵対象の動向を伝え、狩人を戦術的に支援する。数人のオペレーターが務めており、装備管理から同行者指定、連絡通達もオペレーターの仕事となっている狩猟任務を狩人に伝え、輸送機を発注し、必要に応じて支援パッケージの投下を行うこともできる。だが、朱里の補佐をする彩月はマニュアル外の対応は好まず、無理やりPHCで働かされている境遇もあって、効率的な支援はしてくれない。
警備員
PHC内における規約違反者がいないかどうか見回っているガードマン。サブマシンガンやピストルなど、対人兵器で武装し、違反者が発生した場合速やかに制圧を行う。
しかし、彼らは狩人に比べて戦闘力は低く、質よりも数で攻める使い捨ての意味合いが大きい。さらに、アメリカ支社で起きた殺人事件の際には犯人を見つけ出すことができなかった。加えて、実際にハンターの逃亡を赦すなど、彼らには教育の必要性が感じられる。
ハンターチルドレン
文字通り、狩人の子ども。PHC内に囚われた狩人が同僚である狩人との間にできた子どものことを指す。ハンターチルドレン自体の数は少ないが、幼いころから狩人としての訓練を受けるため、戦闘力は常軌を逸している。
軍人/自衛隊員
厳密には軍人と自衛隊員は違う組織人だが、ここでは一定の武装と技術を持ち、PHCに敵対する組織の人間として同一に扱う。
来たるべき戦争に備え過酷な訓練を受けたプロフェッショナル。しかし、そんな彼らも魔獣には太刀打ちできなかった。原因は主に二つ。対人用にしか訓練を受けていなかったことと、一部の装備しか魔獣に効果がなかったこと。敗北の要因は後者の方が大きい。
魔獣相手には魔弾が必要だったが、軍も自衛隊も魔弾の精製が上手くいかなかった。そのため、PHCに技術提供を要求したが、社長は自身の独自性が揺らぐのを嫌がり拒否した。ゆえに、彼らは魔獣に一方的に狩られる被食者となってしまった。戦闘機や戦闘ヘリ、戦車や装甲車の大口径火器を使用すれば倒せたが、魔獣の機動力がそれらの兵器を大幅に上回っていた。
PHC相手に軍事作戦を展開したが、どれも失敗。その後は、諜報機関を用いた情報戦で、何とかしてPHCから技術を盗もうと諜報員たちが任務を続けており、彼らはそれを待ち続けるしかなかった。
社長を襲撃したシールズはチーム2。主にヨーロッパ地方において作戦を展開しているため、データの暗殺作戦はヨーロッパで行われたことが窺える。しかし、シールズは全滅してしまった。日本政府のPHC対策チームもPHCには敵わなかった。唯一対抗できたのは、公式には朱里だけである。
日本
高宮朱里の生まれ故郷。小さな島国ながら先進国の一員である平和の国。しかし、彼らも魔獣の脅威からは逃れられなかった。
PHC及び魔獣の存在は、対抗策ができるまで公表しないという暗黙の了解の元、日本国民には二つの存在は秘匿されていた。無論、それを嗅ぎまわる記者や、不誠実だと訴える政治家、面白半分の陰謀論者などはいたが、彼らは政府によって“適切に”処理されている。
高宮家の生活が困窮していたのは、急に跳ね上がった税金だったり、突然発生した国家予算の損失や、政治家の不正着服などが原因だ。もちろん、これらはPHCに要求された多額の報酬を支払うためのブラフである。本来なら、父親が病気でも、贅沢さえしようと思わなければ朱里も普通に暮らせたはずだった。
PHCに朱里が事実上の誘拐をされても、日本政府は救出せずむしろ帰還を妨害しようとした。しかし、これはあくまでそう見せかけただけであり、可能な限り救助しようと水面下で動いていた。
PHC対策チーム
自衛隊員、警察官、その他志願者から構成された日本政府によるPHCへの対抗組織。地図に乗らない無人島に独自の基地を持つなど、その規模は大きい。彼らは基本的に志願者から構成されており、そのほとんどが卓越したスキルを持つエキスパートだが、彼らはPHCに一矢報いることすら叶わなかった。
小城輝夜もPHC対策チームのひとりである。対策チームは自衛隊や警察などと連携を取り、暗殺や誘拐、ハッキングなど、非合法の手段を許容されている。
レジスタンス
たった三名しか所属していないレジスタンス。その構成員の内、二人が帰らぬ人間となった。彼らは協力者と共にPHC内外から干渉し、候補の一人をPHCから連れ出した。実際にはとある計画における体のいい囮であり、誰か一人でも目的を達すればそれでいいという使い捨ての組織だった。
二、世界を牛耳る人ならざる者
魔獣
PHC内ではビーストと呼称が統一されている獣。獣型から、飛行型、昆虫型から人型まで、その姿は千差万別である。
何の前触れもなく突然発生し、世界の政府組織が隔離地域を作るはめとなった原因。ある意味、PHCにとっては世界の経済をコントロールできるようになった恩人であるとも言える。しかし、狩人たちはその恩を仇で返す。銃や特殊兵器を使い、狩人は魔獣を狩って生計を立て、PHCに借金を返済するのだ。
ビーストは主に神話や想像上の生物の姿を象っている。それは人間に恐怖を与えるためなのか、それとも人が魔獣を目撃したから語り継がれているのかは謎である。
後に、異界に通じるゲートから召喚されたことが明らかとなった。彼らは悪魔に使役される使い魔の類だ。
悪魔
世界を裏で操る真の主。人間が世界の主だと誤解する姿を見て愉しんでいる存在。確認された悪魔は数体だが、実際にはもっと多くの悪魔が存在するとされている。
彼らはゲートからこちら側に現れ、好き勝手に遊ぶ。まるで、人形遊びをする子供のように。様々な勢力に働きかけて、戦争を起こさせたり、非道な行いをさせて、それを観察し愉悦している。
リリンの話から、彼女はフランス革命でイタズラをしていたとされている。同じように、色んな種類の悪魔たちが、戦争を起こし、苦しむ人間に無償で力を与えて堕落させたりしていたようだ。
人が苦しんだり悲しみに包まれると、悪魔はそこに手を差し伸べる。過酷な境遇に身を置く人間はその手を取るが、実際には悪魔の力に人の身が耐えられず、おぞましい異形へと姿が変わってしまう。理性を失い、欲望だけで動く姿はもはや人ではなく怪物だ。あるいは、彼らのなれの果てが魔獣なのかもしれない。
堕落者
悪魔と契約を交わした者。あるいは、悪魔に協力する者。
――あなたに力を与えましょう。心配しないで。何の不利益もありません。
悪魔はこのような甘言で、苦しみ喘ぐ者に契約を迫る。何のデメリットもないと言っているが、実際には悪魔の力が人の身に適合せず、欲望のみで生きる化け物へと変えられてしまう。人間とは理性と感情という相反する思考論理が心に備わっているため、片方がなくなるということは、人間ではなくなるということと同義だ。
ただし、それでは操る悪魔側にも問題が出てしまう。そのため、堕落ではなく間接的な方法で契約者に報酬を与え、コントロールする手立ても存在する。そのような手合いには、政府の要人にも混ざっていると思われる。
天使
直接的な天使は観測されていないが、シェミハザやアザゼルのような堕天使の姿は目撃されているので、恐らく存在するだろう。悪魔の箱庭と化した世界になぜ干渉しないかは不明。
天使の反対が悪魔と言われているので、天使が手を貸すと人間が壊れてしまうからなのかもしれない。しかし、その点を除いても、天使はとても厳しい戒律に縛られているようだ。
グリゴリたちが堕天し罰せられたのは、彼らが人間に対して優しかったからとも考えられる。
神
世界を統べる者。もしくは、人々を陰から見守る傍観者。
悪魔と魔獣が跋扈しようとも神々が人間に手を貸す様子は見られない。一見、薄情とも取れるが、彼らは人間が自分の手でそれらを対処できると知っているからとも取れる。神が手を貸せば、人間は努力しなくなる。それは一種の堕落に近しい。だから、神は手を貸さず、天界から人が努力する姿を見守るのだ。
ただし、どうしようもなく人の手に余る事態が発生した場合は、手を差し伸べてくれるかもしれない。
三、その他
エクソシスト
日本語では祓魔師。しかし、彼らはカトリック教会から一九七二年に廃止されたエクソシストでも、国際エクソシスト教会でもない。出自の古く、宗教に左右されない特殊な祓魔師たちである。
悪魔のセリフから、彼らは昔、悪魔に大敗北を喫したことが明らかになっている。彼らの存在について謎が多いのは、その出来事も関係しているのかもしれない。
エクソシストは、まず世界を混乱させるPHCに潜入した。敵を騙すにはまず味方から、との考えから味方であっても容赦なく始末し、敵の信頼を勝ち取った。
そして、最終的に大いなる敵の逃げ道を塞ぎ、討滅を成功させたのである。
マモンに借りがあったエクソシストは、一体どんな目に遭わされたのだろうか。
詳細は不明だが、悪魔の中にも人間と同じく派閥争いが存在する。
ソロモン王の七十二柱である悪魔たちはソロモンに従って、人間たちを補佐してきた。彼らは悪魔が人間を脅かすのを快く思っておらず、人に害する悪魔と敵対していたようだ。
しかし、その内実は人に対する同情や憐みではなく、そちらの方が面白いからという快楽的理由に過ぎない。
彼らは悪魔ながら、エクソシストと協力関係を結んでいた。ヴィネが水平二連を預かっていたのはそのためである。
怪物少女は狩りをする 白銀悠一 @ShiroganeYuichi
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