第9話 2つの太陽

鈍い光を放つ金属製の床の上に、これまた鈍い光を放つ机と椅子。

静かにしていなければ聞こえないような振動音のなる空間は、大音量の音楽に浸っていた

「そろそろ電力もたまったろー?そろそろワープでもしようぜー。さすがにやることがないぞ」

だるそうに机にもたれる青年。青年は向いに座る女性型のロボットとカードをやっていた。

しかし、もう何回もやっているようで、さすがに飽きがきたらしい。

「ダメです。ワープを出来る船は少ないので、見つかったら確実に怪しまれます」

備え付けのモニターにAdaの文字。モニターのスピーカーから声は出ていた。この船は8時間前に出航したばかりだが、青年は新たな刺激を求めていた。

そこに、1通の通知が送られてきた。どうやらリガロックで改修し船に積んだグアラスの整備が終わったらしい。

「VRで遊んでくるかなー」

そんなのんきな事を言っていると、船内に警告音が流れた。

「宇宙軍の船が停止信号を送っています。聴取をするようです」


そして聴取が始まった。


「あー。まず、この船はどこから来たんだね?」

どこから来たのか聞いてはいるが、リガロックから来たことは知っているようだ

「リガロックからだがどうかしたか?」

「いや、それはいいんだが、少し前からリガロックから連絡が途絶えてね。どうしたものかと」

「そうなんですか。こっちはしばらく前に出航したもので、リガロックの状況は分かりませんね。」

「それはしかたない。ところで…この船は何の目的で?見たところ観光用でもなさそうだ」

「船の外装の通り貨物船です」

「貨物?何を運んでいる」

この質問をされるのは予想していた。ディオは既に心の中で準備はしている。Adaも、その他のAIも然り。

「日用雑貨を運んでいます」

当たり前のように嘘。しかし、必ず確認が入る。

「そうか。まぁまず確認させてもらおう」

そして、機械兵が貨物用スペースの扉を開けようとした時、ディオがしれっと一言。

「現地調達のな」

整備用の作業機が、壁の内側に隠されたマシンピストルを機会兵の腹に押し当てぶっぱなした。

機会兵の人工血液が飛び散り、膝から崩れ落ちる。そこに、頭部に1発。もう動くことは無い。

「何事だ!」

接続用のドッグから機械兵が渡ってくる。

ディオは壁に隠れ、ちょうどすれ違い際に脚をかけた。機械兵は見事に転び、そこに作業機の一撃。

「よし、トンズラだ!」

ディオは再出発の準備を進める。

「ドッグを切り離します。酸素圧縮開始」

そして、宇宙をまたにかける軍相手に鬼ごっこを始めた。

そして宇宙軍の船内。

「あいつらが逃げ出したぞ!グアラス2機を出撃させろ!」

出撃ハッチから2機のグアラスがでる。

1機はマシンガン、もう1機はミサイルを持っている。マシンガンを持ったグアラスがまず先ほど繋いでいたドッグの位置にマシンガンを向ける。宇宙では音はでないが、ここに酸素があればすぐ近くの人は鼓膜が破れていただろう。1秒間に3発ほどのペースで発射された弾は。確実に貨物船に当たっていた。

「それそれ!落ちろ落ちろぉ!」

感情が戦闘向きに変えられているため、とても楽しそうに戦っている。が、次の瞬間、彼の感情が絶望にかわることになる。

「相手が、グアラスを使っている?…」

貨物船からは、グアラスが出ていた。

「よくも俺の船にぃ…」

改造型のグアラスは、見た目はあまり変わらないが、宇宙軍の中心部で使われている新型に劣らないよう改修されている。右手にはマシンピストル、左手にはマチェットと斧の中間のような独特の形をした武器。

「俺の遊びに付き合って貰おうかぁぁぁぁ!」

ディオの叫びに応じて、改修型グアラスが加速する。

「なんだあの機体は!」「相手はリガロックの宇宙軍兵士か!?」

機械兵が混乱しているのを利用し、ディオが一気に詰めよる。

「まずはこいつだ!」

マシンピストルでマシンガンの発射口を潰す。

相手のグアラスは詰め寄ってきて、ショルダータックルを仕掛けるつもりだ。

「どうやら遊ばれてぇみてぇだな!」

ちょうど新開発のアクスマチェーテを振り下ろし、胴体に命中させた。

しかし、グアラスの質量に負けたのか、装甲を抜いてすぐに折れてしまった。しかし、結果的にエンジンを破壊し、最低限の活躍はできたようだ。

「まだ終わってねぇぞ!」

もう1機のグアラスがミサイルを撃ってくるをディオはそれをぎりぎりでかわした。しかし

「くそ!当然だがセンサーがついてる!くそが!」

せっかくの新品に傷がついた事に怒りを覚えたが、それは表面上で、まだディオは冷静だった。

マシンピストルで威嚇しながら距離を詰める。

「近づいて撃たせない気か?その前に当ててやる!」

敵も馬鹿ではない。当然距離をとりながら狙ってくる。

「なんだ?弾切れか?」

ディオのグアラスがマシンピストルのマガジンを外したその瞬間

「死ねぇぇぇ!」

グアラスのミサイルが放たれる。

ディオは、それを待っていた。

「くたばれマヌケが!」

ディオのグアラスは、明らかに遠い位置で拳を突き出す。そして、

「ロケットパァンチ!」

グアラスの左手が、炎を吹き上げ飛んでいく。

そして、敵のグアラスのミサイルに命中し、グアラスもろとも吹き飛んだ。

左手のないグアラスは、右手のマシンピストルを捨て、船に戻った。

一部始終を見ていた宇宙軍の船は、混乱に満ちていた。

「この光景をすべて報告しろ!撤退だ!」

宇宙軍が、貨物船ごときに創設以来初の撤退をしていた。

そんな中、貨物船の壁に、謎の穴が開いていた。これは銃で開けられたものでも、最初からあったものでもない。

機会製の女性の声が一言

「ミサイル発射」

5発のミサイルを規則的に発射したその穴は、ステルス迷彩の要領で壁にすりかっていた。

そして、すべてを食らった宇宙軍の船は、第2の太陽となった。

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メタリック アレックス @alex0314

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