地球降下編

第8話 発進

あるコロニーのある港のある船の出来事

「やっぱり椅子に座って充電って、味気ねぇよなぁ」

一人の青年は、無人の船内で不満を漏らしていた

「そうですか?私達には当たり前過ぎて、その感覚が理解できません。」

響く声。この船内は青年を入れても無人のまま。要するに、ここにいる者。正確には、物である。ここには、機械達がいる。

「アリスは…まぁわからなくても当然か。Adaは?」

そして、いつもどうり、青年は明後日の方向を見つめながら、Adaと呼ばれる何かに話しかけていた。

「ディオの感じている感覚は共有されていますが、感覚的にはわかっていても、どういうシステムなのかは理解できません」

彼女はディオの中に内蔵されていた。正式な本体は無い。ディオの中にさえ仮住まいのようなもの。

少しの会話以外静かだった船内に、ベルの音が響く。

「時間か。準備はできたか?」

「当然です。」

アリスはそう答えると、指先の指紋型の光デバイスを船内のモニターに押し当てた。すると、港が遮蔽され、空気が抜かれていった。

空気が抜き終わると、港の壁が開き、宇宙への扉が開いた。

「目標は地球、そのために太陽系帰還用シャトルのある施設に向かう。地球軍から来てくれたら楽だが、今回は警戒されていてこちらには来れないらしい。」

ディオが珍しく真面目になる。

少し前の不祥事のせいでコロニー丸ごと面倒を見るようになったおかげで、Adaからキツイお灸を据えられたらしい。

因みに、脳内に大量のジャンクファイルを生成するプログラムを植え付けられたらしいのだが、その間アリスの本体に逃げている辺り、アリスも多分共犯

「もし軍の検問があったら…少しテロらしくなるが、宇宙軍兵士なら問題ないだろ。民間人には手を出さない!以上、作戦説明!」

地球を向け、彼らが出発した。




そしてほぼ同時刻。

シャトルのある施設…会社名は「スペースシャトル」。旧時代に消えた機の名前が、まさか航宙会社の名前に使われるとは。

スペースシャトル社のシャトル打ち上げコロニーの近くにある居住コロニー、「アポロン」

アポロンにも例外なく、宇宙軍が駐在していた。

朝8時、アポロン支部の機械兵達に、新たな情報が寄せられる。

リガロックとの通信が途絶えた。リガロック方面からの船があれば、聴取を行い、原因の解明にあたれ。


そして程なく、彼らが鉢合わせる事になる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る