第2話

美華達が召喚されてから半年が経過した。

二人・・は短期間でメキメキと強くなり、今では魔王十幹部と互角とまではいかないものの、いい勝負をするまでに育った。

ちなみに、アンナは十幹部のトップであることを言っておく。


「黒薔薇ちゃん、君、どれぐらい強いの?」

「え?十幹部全員纏めて秒殺できるレベル?」

「嘘言わなくていいよ?黒薔薇ちゃん?どうせ守られてるしか脳がないお姫様でしょ?」


まさか、修業の途中で進くんが天狗になるとは思わなかった。

雑魚の癖に調子にのって女の子を喰い荒らしているらしい。

そんな進くんにぶちギレた私は、この国の王族たる者の実力を見せ付ける事にした。

いや、体験させる。


「さぁ!始まりました!第57回魔王国王族決闘会!司会進行役は皆さんお馴染みローゼ=ノワール王女専属メイド兼魔王十幹部。アンナ・メティでーす!どうもどうもー!」

「「「わぁぁぁぁぁぁぁー!!!!」」」


王族決闘会とは、ルール無用の何でもありな体のいい公開処刑の場である。

主に不敬罪とか、気に入らない罪人を王族直々に処刑する為のもの。

これがけっこう国民に人気だったりする。


「さて、今回の決闘会は、異世界から召喚された青年が我らが姫様を『守られてるしか脳がない』等とほざいた事が原因です!皆さん、姫様はそんな王族ですかー?」

「「断じて違う!」」

「では姫様は?」

「「俺達(私達)の恩人で希望!!」」


......国民がアンナに洗脳されてないか不安になってきた。

まだ掛け声が聴こえるしね。

ソレが終わったら賭けのベットを発表するのだが、当然のように全員私に賭けたので、賭けにならず大爆笑してた。


「それでは入場して頂きましょう!異世界から召喚された青年、ススム・アキハラ!」

「「ブー!!ブー!!」」


物凄いブーイングを浴びながら進くんが入場する。

しかし、その顔はニヤけており、とてつもなく気持ち悪い。

生理的嫌悪を引き起こすレベルだ。


「続いて、我らが姫様。【黒薔薇】ローゼ=ノワール王女!」

「「わぁぁぁぁぁぁぁー!!!!」」「姫様ー!!」「黒薔薇様ー!!」


進くんとは打って変わり、大歓声が私を迎えた。

それに軽く応えた私は、彼をチラッと見るが、完全に私を倒せる気で居るらしい。

下卑た顔をして舐め回すように私を見る進くんが気持ち悪い。


「それでは、戦闘開始!」


アンナの声と同時に私の方へ距離を詰め、素早く攻撃を仕掛けてくる進くんだが、過信できるほど速くないことに気付いているのだろうか?

右パンチ足払いからの蹴り上げ、その衝撃を利用した踵落とし。

それらの動き、一見キレがあって凄い様に見えるが、見る人が見れば軸も身体の使い方もぐちゃぐちゃで汚いの一言に限る。


「弱い。」

「は?」

「いや、何でこの程度でこの私を、【黒薔薇】を倒せると思ったの?」


進くんの攻撃をテキトーに捌いていたのを止めて、強く踏み込み、側頭部を後ろ回し蹴りで蹴り飛ばした。


「話にならないわ。美華と結婚?論外よ論外。不誠実で力に溺れて現実を見れない、稼ぎも普通以下な男に美華を任せられないに決まってるじゃない。」

「ぐっ...色欲:魅了!」

「無駄よ。暗黒:暗黒世界ダーク・オブ・ワールド!」


二人の周りは黒一色の世界になった。

いや、三人・・だ。


「いい加減出てきたら?色欲の魔神アスモデウス?」


私がそう言えば進くんの影から2m超えの悪魔が現れた。


「だぁぁ...やっぱ姫には敵わねぇ...」

「残念ね?アスモデウス。久しぶりの再会だけどアンタは今日で終わりよ。」

「やっべ、地雷踏んだ?!」


アスモデウスはこの世の終わりの様な顔をして頭を抱えている。

このバカたれが消滅しても次期アスモデウスに力が受け継がれるだけだし、大きな問題はない。


「次期アスモデウスのあの子の方が見た目気持ち悪くなくて断然いいわよ。あの子が男の子でなければ私の好みだったのに。」

「酷くねぇ?!俺の扱い酷すぎると思うんだけど?!」

「身内に手を出すクソッタレに用はねぇ!!」

「すんませんしたっっ?!」


暗黒:帝波を乗せた声は、アスモデウスを竦み上がらせるには十分すぎ、膝を抱えてガタガタと震え出した。

かといって手を抜くほど優しくないし、手を抜く理由も無いので、全力でアスモデウスを消滅させる事にする。


「黒炎:薔薇蔓之鞭ローゼ・ランケ・パイチェ!!」

「ッア”ア”ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!」


私の腕から黒炎で出来た薔薇の蔓が鞭となり、私の意思通りにアスモデウスの両脚の付け根、腰、両肩、背中、首に巻き付き、じわじわと細胞の再生を許すことなく焼き切っていく。

その間に逃げようとしていた進くんを黒氷:薔薇蔓之鞭で捕らえ、逃げられないように固定しておく。

勿論、薔薇の棘が全身に刺さる様にしてきつくしてある。


「そろそろかしらね。暗黒:魂喰い《ソウル・イーター》」


アスモデウスが完全に死んだのを確認すると、魂を喰らい己の力とする。

実はこの魔法は禁術中の禁術なのだけど、私には関係無い。

デメリットは〝暗黒系統の魔法しか使えなくなる事〟〝発動するのに魔族5000人分の魔力が必用な事〟〝術者の腕1本無くなる事〟の三つだが、私は元々暗黒系統しか使えないし、魔力も膨大な量を持っているし、腕1本持ってかれても私の腕は魔力で構築されてるのですぐに再生する。


「さて、進くん。」

「ひっ...ひぃぃぃ...!!」


私が声を掛けただけでこの怖がり方は酷いと思う。

え?自業自得?そんなバカな...


「進くんは〝元〟とは言え一応友人だから、苦しむこともなく逝かせてあげる。」

「や、やめろ......」

「暗黒:黒薔薇之剣ダーク・ローズ・ソード


私の剣の一振りで進くんの首と身体は離ればなれになり、息絶えた。

その死体に剣を突き立て、剣に血を吸わせる。

こうすることで剣の切れ味が増し、更に凶悪になる。


「調子に乗るとロクな事がないね。」


そう呟きながらも暗黒世界ダーク・オブ・ワールドを解除して、私と進くんの死体は姿を現したのだった。

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黒薔薇の転生物語 ゆあ @dear_about_me

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