黒薔薇の転生物語

ゆあ

第1話

黒園 薔薇ローズ

両親に「ローズってカッコよくね?」という理由で付けられた私の名前。

正直、名前の由来を聞いたときにぶん殴ってやろうかと思ったりもしたけど、そこは、理性を総動員して止めた。

友人からは黒薔薇と呼ばれ、「薔薇に恥じないレベルで美しい顔してるよね。」等と言われている。

......同時に中身が残念だとも言われるが。


そんな私だが、アッサリと死にました。

えぇ、もうアッサリと。


大学の友人と二人で来てたファストフード店に強盗が入ってきて、人質にされた私は、得意の古武術で三人の足と肩の関節を外した所で、四人目にお腹をグッサリ刺されて出血多量で死にました。

とてつもなく痛かったです。


それで、だ。

何で死んだのに意識が在るのか気になるでしょう?

え?気にならない?大体分かってる?スミマセン。

だが、敢えて言おう!

私は転生した!

も大切な事だから、もう一度言おう!

私は転生した!

テストに出るからな!


現在7歳。

性別・女。種族・魔族。名前・ローゼ=ノワール。魔力・膨大(いくら使っても枯渇してません。)。使える魔法・黒炎、黒雷、黒氷、暗黒。

魔族国のノワール王家に生まれました。

つまり、王族。

殺人童貞は卒業済み。

力が全ての魔族国で三番目に強いのです!

一番はパパで、二番目におにーちゃん。

三番目に私が来て、四番目にママ。

将来安定♪


「ローズ。これから聖王国との戦争が始まる。準備をしなさい。」


......安定してませんでした!誰だ安定なんて言ったの!...この私だ!!

家族での食事中に、黒髪黒目イケメンパパから告げられた爆弾で、目が死ぬ。


世界を巻き込んだ人魔戦争から70年。

人族の国の9割とは和平条約を結んだのだけど、人族至上主義の聖王国とは戦争が続いている。

他の帝国や王国、連合国なんかは不干渉を決め、巻き込まれないように我関せずを決め込んだ。


「聖王国、ウザいなぁ...」


私が生まれてからも、5回ぐらい戦争やってる。

圧倒的な力量差で勝ってるけども。


「いっそ地図から消滅させっかぁ?」


おにーちゃんが物騒な事を言ってるけど、物凄く賛成。

むしろ全力で推奨したい。

何故なら、聖王国の聖王から「魔族国の王女聖王性王に嫁がせる(生贄を渡す)なら戦争を止めてやってもいいぞ?(上から目線)有り難く思え?(意味不明)」という書状が山の様に届くから。

聖王は一度だけ会ったことがあるが、もう、嫌悪しか浮かばなかった。

汗だくのデブが女を十人侍らせて、ぐちゃぐちゃ音を立ててご飯を食べる姿は、最悪。

女の人達も目に生気が無く、全員死んだような表情をしてた。

私が嫁いだら、アレの仲間入りだろう。

それだけは勘弁願いたい。


しかし、聖王国程度滅亡させる軍力が有りながら、さっさと潰さないパパの平和主義にも困っている。

聖王国には、異世界召喚の魔法陣がある。

私は、前世異世界人としては、そんなもの使わせる前に潰したい。

あんな大掛かりな盗人の真似事、許せる筈がない。


「パパ。私はパパに反対されても、聖王国を潰す。おにーちゃん。手伝ってくれる?」

「何で潰すんだい?」

「いい加減ウザいのと、異世界召喚の魔法陣が、この世界に存在してはいけないものだから。転生者として、見逃せない。万が一に前世の友人が召喚されたら正気を保っていられる自信がない。あと、書状がウザい。」

「うーん......」

「もし、私が異世界に召喚されたら、パパは黙ってられるのかな?」

「無理!」

「つまり、そう言うこと。」


私を溺愛しているパパの事だから、神(実在する)を殺してでも追ってきそうだけどね。

それに、私は前世と顔が大して変わっていない。

友人に「薔薇に恥じないレベルで、美しい顔してるよね。」と言われた顔だ。きっと、召喚されたとしても、気付いてくれる筈だ。


「ローズの為なら何だってやってやるぜ。愛しの妹。」

「サラッと妹を口説いてくるおにーちゃんがカッコよすぎる!」


おにーちゃんはシスコンだけど、私はブラコンなのだ!

ええ。頼りになるおにーちゃん大好きよ!

パパの黒髪とママの赤目を継いだワイルド系イケメンおにーちゃんは私の好みドストライク。

完全にハートを撃ち抜かれてる。

そうそう。私今、7歳だけど、容姿は既に死ぬ直前まで成長している。

魔族は成長が早く、寿命も平均500年。

さらに、私達は王族だから寿命1500年と、超長命だ。

つまり、1450年ぐらいはこの容姿のまま生きるらしい。


「ノーゼンハレン?ちょっとオハナシしようか?」

「断る。その嫉妬を聖王国滅亡の力に変えろし。」

「ハレンの言うとおりよヨウラク?」

「...分かったよフリージア。」


今まで一声も出さなかった金髪赤目の美人さんこと、ママがおにーちゃんの援護をしたことで、大人しく引いたパパ。

ママって、すごい。

私もママみたいになれるかな?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私がパパとおにーちゃんの協力を得てから数日。聖王国に放っていた密偵から聖王国が異世界召喚を成功させたと情報が届いた。

召喚された人は「園宮 美華みはな」「久米 響華きょうか」「秋原 すすむ」の三人。

そのうちの美華と響華は私の友人。

進君は、美華の彼氏だった。今でもそうなのかな?

何はともあれ、私はこれを黙っているわけにはいかない。

内心、聖王国への殺意が半端なくなっているのだから。


「黒氷:黒薔薇。」


自然に溶けることのない黒色の氷の薔薇を3輪造り出し、手紙とネックレスを添えて密偵に渡してもらう。

勿論、私が造り出した物なので、普通の物ではない。

まず、氷の黒薔薇は私の転生を報せるだけでなく、三人が触れると私の部屋に転移する仕掛けがある。

次に、ネックレスは毒、魅了、洗脳完全無効化させ、攻撃自動反射バリアが展開される。

手紙は保険。

もし、黒薔薇で分からなかったり、信じなかった場合に見せてもらう。

内容は、私達女子三人しか知らない個人の恥ずかしい過去話をつらつらと書き連ねたモノ。これを読んだら信じざるを得ないだろう。


聖王国、覚悟しろよ?


「ちょ、ローズ、殺気!殺気が漏れてるから!あっ、何人か気絶しちゃった!助けてフリージア!」


パパが物凄く情けない姿をしているのを見てると、このおじさんが魔王なのを信じられなくなってくる。

パパ、なにも言わなければイケメンなおじさんなのにな。


「おにーちゃん。聖王国軍って今何処か分かる?」

「確かプリローダ大草原だったな。」

「ん。ちょっと八つ当たりして来る。暗黒:ダークゲート。」


プリローダ大草原は聖王国と魔族国を隔てる大草原で、国境でもある。

まず、そこから先に進めない聖王国は弱すぎると思う。

プリローダ大草原から魔族国の王都まで10の領地があるのに。


さて、ダークゲートでプリローダ大草原上空に転移して来たのだが、うん。

魔族国軍、やる気無さすぎ。

聖王国軍は目測7万の軍勢。それに対して魔族国軍は100人ジャスト。しかも、全員1ヶ所に固まっていて、私が流行らせた花札をやっている。

一応、戦場だよ?ここ。


「やっほー!」

「あ、姫様!お久し振りです!」


100人の魔族は私に気付くと、手を振ってくれた。

いや、そうじゃなくてね?

何というか、この人達を見てたら怒りも段々とバカっぽく思えてきた。


「ねー、あいつ等私が殺っていい?」

「ご自由にどーぞー!」

「ありがと!」


まぁ、段々と怒りが冷めてるとはいえ、聖王国を許せないのは変わりないので、ブッ潰します。


「黒炎:炎の黒薔薇シュヴァルツ・ローゼ・フランメ!!」


聖王国軍が居る所の地面に、巨大な魔法陣が顕れ、その魔法陣から放出された黒炎が聖王国軍全てを飲み込み、跡形もなく消し去った。

そして、その地面には、巨大な薔薇の焼き印が綺麗に残っているので記念に写真を1枚撮ってから帰る。

けっこうスッキリした。


「ただいまー」

「おう、早かったな。」

「まぁ、こんがりと焼くだけだしねぇ?」

「7万の軍勢にそんなこと言える妹がおにーちゃん誇らしい。」


おにーちゃんが何故か目頭を押さえて上を向いてるけど、気にしないことにする。

それよりもおにーちゃんに誇らしいって言ってもらったのが何よりも嬉しい!今日は赤飯だね!


「姫様。」

「なーに?アンナ?」

「姫様のご友人の方々が転移でいらっしゃいました。」

「ほんと?!」

「はい。姫様のお部屋にて寛いで頂いております。」


さっすが私の専属侍女!

緑髪緑目の美人なだけあるね!

あと、私のハーレム要員!

私、男はおにーちゃんしか恋愛対象に見れないし、女の子はドンと来いな感じです。

前世からこれは変わっていない。


「俺も行っていいか?」

「勿論!むしろおにーちゃんも付いて来て!」


そうと決まれば、急ぐのみ!

早足で私の部屋に着いた私は、勢いよく扉を開けた。


「やっほー!前世の友人達!元気に...アダっ?!」


元気に挨拶しながら入ったら、いきなり本を投げられた。地味に痛いのですよ。分厚い本の角の部分だから。


「酷いじゃないか!美華さんや!?」

「うっさい。私の読書タイムを邪魔した罰よ!」

「だからって本の角はやめて?けっこう痛いからコレ!」


ギャーギャーと久し振りの再会で騒ぐ私と美華。

それをオロオロしながら見ている響華に笑いながら仲裁する進君。

懐かしい光景だった。


「うぅ...ぐすっ...」


涙が止まらない。

また再会出来たのが夢みたいで、でも、さっきの本の痛みが現実だって教えてくれて、ちゃんと目の前に大切な友人が居るんだって分かる。


「ごめんね、勝手に死んじゃって。」

「ホントよ!どれだけ私達が泣いたか分かってんの?!......って言いたい所だけど、こうしてまた会えたから許してあげる。感謝しなさい。」

「うん。ありがとう。」


うん。美華のこういう所が好き。

ツンデレおねーさんっぽい所が大好き。


「わ、私もまた会えて嬉しいよ!」

「ありがとう響華。」


響華も、ちょっと控え目な所があるけど、頑張って前に出ようとする所が好き。

あと髪の毛ふわふわで触るのが好き。


「黒薔薇先輩、俺と美華の結婚を許してください。」

「お前、表に出ろ。」


空気読まない(わざと絶対わざと!)所は変わらない進君。

無駄にイケメンである。チッ!

おにーちゃんの方がイケメンだもんね!


「にしても遅かったじゃない。何してたのよ?」

「聖王国との戦争という名の八つ当たりに行ってた。」


〝戦争〟の二文字にピクリと反応する三人だが、コレは理解して貰うしかない。


「この世界は、日本と違って戦争や殺し合いが普通なの。殺さなければ殺される。そんな世界だよ。」

「そんな...」

「私は、実際に命を狙われてる。一国の王女だからね。」

「黒薔薇が王女なんて務まるの?」

「ちゃんとやってますよ?!政務こなしてます!」


いきなり何て事を言い出すんだね!?

ちゃんとやってますから!街の復興支援だったり、外交だったり、悪徳領主を潰したりやってますよ!


「ちゃんとウチの妹は頼りになるぜ?なんせついさっき7万の軍勢を一瞬で消し飛ばしたんだからな!はっはっは!」


美華達が「ななまん......??」とか言いながらぽかーんとしちゃってるし!

アンナは「流石姫様です。」何て言いながら涙を拭いている。


「ま、まぁ、それは置いといて、取り敢えず、三人には、この世界での命の価値を知っていて欲しかったの。これから国一つ墜とすから。」

「わ、分かったわ。」

「ね、ねぇ、質問、いいかな?」


おずおずと手を上げる響華。


「何?」

「わ、私達...地球に帰れるの?」


確かに、響華達にとっては重要視するべき問題だろう。

無理矢理連れてこられた訳だし。


「聖王様からは魔王城に帰還魔法陣があるって聞いてるよ。」

「たぶん、無かったと思うけど。おにーちゃん何か知ってる?」

「んや、そんなもんは無いな。」

「だよねー。まず、帰るにしても、地球の〝世界格〟が高過ぎるんだよね。魔法陣造ってこの世界の9割の生物を犠牲にしたら行けそうだけど。」


詳しく説明する。

まず、〝世界格〟というのは名前の通り、世界としての格のこと。

そして、格が高ければ高いほど、世界の文化基準が高くなり、低いと文化基準が低くなる。

現在のこの世界と地球の差を表すと、この世界の世界格がエレベーター故障中、階段封鎖中の地上50階建てビルの1階だとしたら、地球が45階以上の差がある。

異世界召喚は、ビルの45階以上のベランダに立っている人を1階から縄でカウボーイばりにハンティングする魔法。

その魔法陣が落下した時のクッションの役割に成っていると思っていい。

まぁ、人の屍で出来たクッションだけどね。

そして、帰るときは、梯子を渡せばいいと思うだろうが、地上45階までの長さのある梯子なんてあったとしてもバランス取れなくて落ちるだろうし、縄を登ったとしても、体力が持つ筈がない。

てなわけで、魔法陣で簡易ロケット発射機を造り、ブーストで加速して打ち上げて帰すしかない。

このブーストの時に消費する燃料がこの世界の9割の生物の命。

こんなこと、神々が黙ってる筈がないし、成功率は50%を切るから、不可能だ。


これを懇切丁寧に教えて差し上げると、その場に居た私を除く全員が顔を土気色にしていた。

響華に至っては、半分白目を剥いていた。

可愛い顔が台無しだよ。


「チョーっと待て!何で知っているのかな?!妹よ!!」

「え?2年前に調べてたからだよ?あと神王呑み友に聞いた。」

「妹の人脈が怖い。」


やだなー、ちょっとO H A N A S H Iしに行っただけだよ?

私の事を異分子として殺そうとしてる糞神が居たから。


「まぁ、そんなわけでこれから一生この世界で過ごしてもらうのだけど...困ったな...」

「何が?」

「いや、魔王国は実力主義で居ずらいと思うし、同盟国は今は関わってくれないしでね。それに敵を殺せないと何処の国も受け入れてくれない。というか生きていけない。うーん......」


別に私が匿っても良いのだけど、それだと私が居ないときにクソ貴族共が何をやらかすか分かったもんじゃない。

安全なのはおにーちゃんか私の近くに要ることなんだけどね。


うんうんと思案している私の隣に居るアンナが、おずおずと手を挙げた。


「あの...私が彼女達を鍛えても宜しいですか?」

「...いいの?」

「はい。暫くは姫様と寝所を共にすることが出来なくなりますが、それでも構わないのでしたら問題ありません。」


うーむ...アンナと寝れないのは問題あるけど、その間おにーちゃんの所に潜り込めば良いかな。


「わかった。許可する。」

「ありがとうございます。姫様。」

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