第3話 頭に

少女は歩き出した。英語は少し分かる、今の文の意味は”私は残されている”だと思う。眠たくなってきた、今まで以上に瞼が重い。眼を擦ってみたが大して変わらない。緊張の糸がぶち切れたからだろうか。糸は修復する気配を一向に見せず、代わりに眠気というイラナイものを供給してくれる。さっきは運よく?助かったが次は無いだろう。少女は辺りを見回す。ちょうどいい洞窟があった。お邪魔させてもらおう、少女は息を殺して歩いて洞窟の中に入る。洞窟は広く、中は外程寒くはない。色々なところに鍾乳洞があり、それを苔のようなものが青白く照らしておりとても幻想的な風景を醸し出している。少女は少しの間その景色に見惚れた、だが眠気が彼女を正気に戻した。彼女は頬を少しつねる。眼が少し覚めた、よし行こう。少女はずんずん中へ進んでいく、何故か分からないが何も居ない...いや危険が無い気がする。苔が少女の体を青白く照らす。途中分かれ道はあったがどれもすぐ行き止まりや崖になっていた。結局元の一本道を進まざるをえなくなっていた。誘導されている感じに少女は少し怖くなった。しばらく進んでいるとまた分かれ道が見えてきた。二股の道だが一つの道に違和感を覚える、横の道と比べて少し明るい。それに今までの分かれ道と違いどちらも道が続いている。問題の横の道は苔の青白い光ではなく、カンテラのような人工の温かい光だった。見ると目印のように床に蠟燭と豪華な燭台が置かれていた。少女はそちらの方へと誘われるように入っていく。

通路はここまでの洞窟と違い、曲がったり急な坂になっていたりした。少女はそれでも進む。進まなければならない気がする、橙色の温かい光が強くなる。少女の恐怖と安心感が同時に加速していく。しばらく歩いていると、カンテラの光が見えた。少女はその中を覗き込む。何か小さい...5cmくらいの少女が三人居る。服装は”絵本”に出てくるような妖精の服を着ている。背中からは美しい翡翠の翅が生えている。彼女たちは忙しなく飛び回っていた。

「痛い!痛い!止めてよ!お願い...止めて...」

声が聞こえた。少女は顔を素早く岩陰に隠して、もう一度そーっと顔を出す。妖精三匹が何かを攻撃していた。

「何言ってるの、”マガイモノ”を私たちが許すわけないでしょっと、ふぅ」

「ケラケラケラ、それに何?この冠、自分が王様ってわけ?」

向かい側にもう一匹妖精が見える。その妖精は明らかに今居る三人の妖精とは違う。まず性別が男だ、男性器は見てないし見る気もないが顔立ちと胸を見るにそう確信できる。止めなきゃ、目の前で繰り広げられている事を。でもどうやって、自問。答えは...

「ケタケタ...ヒッ?何だお前?」

「で...でかい...」

出てから決める。

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硝子の扉 稲葉真綺 @layanderson

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