物語 祟のきつね

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街ができあがり、人々は自分たちの技術による恩恵を受けて、発展を遂げていた。そこには古来から続けていたことの形骸化も含まれていた。

それを象徴する出来事が起こる。豊穣、作物が実り豊であることの感謝の化身ウカノミタマの眷属神の稲荷のきつねが住まう小さな赤い社は感謝を忘れた人に取り壊された。



「人の子に、感謝と畏敬を思い出させなければ」



神様を忘れぬよう、神様を通じて様々なものに対する感謝を思い出すように。神様を軽んじることが無いように、稲荷のきつねは自らの神様としての生命をなげうってでも必要なことがあるとして、きつねの祟の決行を決意する。


そして、稲荷の社を壊されてから幾日か経ち、件の家は燃やされた。青白い光がどこからともなく現れて、伯爵を追いたてて、家を焼いた。


神様の掟である『直接的に人の子に干渉してはならない』これを犯したとして稲荷のきつねは神様でなくなる。




この物語には続きがある。




祟から幾年か過ぎ去り、稲荷のきつねという眷属神を無くした豊穣の神であるウカノミタマは再度眷属神を迎えることになる。

その眷属神は社の軒先に住み着き、社の掃除を欠かさなかったある白いきつねであったと言われている。



「いらっしゃいませ」



また今日も参拝客に対して、鳥居の手前で微笑む童子の姿があるという。

変わった派手な赤い衣装の子どもは、逢魔が時と呼ばれる夕暮れときに掃除をしている。





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夕暮れの風車 藤原遊人 @fujiwara

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