第2話:1部 相談とは?(・_・)
俺には妹がいる。
―――正直言ってそこら辺の女子より全然かわいい。
しかし、俺はこの女を妹と呼んでもいいのか正直迷っている。なぜなら、俺は基本的に暇なときにラノベやギャルゲなどをやったりするのだが、俺が今まで見たきた妹のどのタイプにも属さず、俺に対して反抗の限りを尽くすからだ。例えば、俺が夕飯の支度をして、「おい、奈々沙!飯できだぞっ!!」て言えば、「なんでにぃがつくったごはんなんてたべなきゃいけないの!!!。そのぶんはあしたのあさごはんにでもしたらっ!!。」とか、怒り始めるし、「おい、リビングに洋服と下着置いとかずにしまえよ。」って言えば、「ゆわれなくてもわかってるし、さわらないで!!」て、怒鳴り始めて機嫌を悪くする。
もう、正直コイツにどう立ち回ればいいのか困っている。
ちなみに今日はコイツの誕生日である。苦手とは言っても、妹なのでとりあえずプレゼントとケーキを用意した。
―――――苦手、苦手って言いながら結局の所シスコンなのかもしれないな…。
ガチャッ。
「ただいま。」
「にぃ、おかえりっ!」
なんて、言ってくれる妹がいるわけでもなく静寂な家の中に俺の声が響く。いつもこんなもので、特別暗いというわけじゃない。俺が卑屈になってしまったのにもこういった家庭環境が少しは関係しているのかもしれない。でも、今日は奈々沙の誕生日なので暗い雰囲気にするわけにもいかない。とりあえず、おめでとうの一言くらい言っておくべきだろう。
コン、コン。
「なにっ?おにぃ、なんかとくべつなことでもあったっっ?」
おっと、今日は珍しくテンションが高いらしい。運が良かった。危うく受け取ってすらもらえないかと心配していたのだ。
「あ、あぁ。今日は奈々沙の誕生日だしな。おめでとう。これ、プレゼントとケーキ。やるよ。」
「そ、そうなんだっっ。あ、ありっ、ありがと…。」
恥ずかしそうに、赤面しながら答える、奈々沙。
「じゃ、じゃあ、夕飯になったらまた呼ぶからな。」
「う、うん。」
なんだろう、今日のアイツはいつもと違って可愛く見えた。俺の予測では「にぃが買ったものなんていらないからっ!!出てってっっ!!。」って、言われるかもって位には思ってたんだが。
とりあえず、今年のヤツの誕生日は順調に進んでいる。
去年の奈々沙の誕生日は色々大変だったからな。
――――――――――――――――――――――
俺が春の遅れインフルエンザになった。でも、妹の誕生日を祝いたく、ごちそうを作ろうとしたら奈々沙に睡眠薬を飲まされ、
「びょうにんはおとなしくねてて。ことしはななさがつくるから。にぃはやすんでて。」
と、意識の遠ざかる中で言われた所で記憶は途切れている。熟睡したのだろう。
…………………………………………………………
「にぃ。にぃってば。」
んん。揺さぶられる感覚と、俺を呼ぶ声がした。俺の意識は段々と覚醒し、眠る前に何があったかという事とインフルエンザにかかっていた事を思い出す。
「にぃっ!!おきてっ!!いつまでねてるのっっ!!。」
「ん。お、おう。」
奈々沙の怒鳴り声で起き上がる。
「その、きょうはななさのたんじょうびだからななさがごちそうつくったの!」
「は、は?自分の誕生日に自分で飯つくったのか!?。」
「し、しかたないじゃんっ!だれかさんがっ、そのっ、インフルエンザなんかにかかってるからでしょっ!!。」
それは、そうだけど別に誕生日の本人が作らなくても、外食だったら外出したり、出前とったりしてもいいと思う。
「そーだな。で、何作ったんだ?」
俺の妹は多分料理が下手だ。いない両親の代わりにいつも俺が作ってるし、まず、作っているところを見た事がない。
「そ、それはもうじゅんびしてあるからはやくおりてきてっ!!。」
と言われたものだから階段を降りる。しかし、すぐに昇りたいという衝動に駆られる。
「お、俺さ、ちょっとまた体調悪くなったみたいだし、寝てきていいかな?。」
具合を悪そうにしながら言う。
「にぃ、なにゆってるの?。さっきねつはかったけど、にぃはもうねつさがってたよ。どうして、ぐあいがわるいふりするの?。」
どうしてって、さっきから一階から異様な食いもんじゃないモンの臭いがするからだよ。
「…………………………うん。すまん……。」
ギシッギシッ。
一段降りれば降りるほどその臭気の強さは増していく。ほんとにこれは生きて帰れるのだろうか。
キィッ―――――バタンッ
リビングの扉が閉まる。
ガチャッ(奈々沙がリビングの鍵をしめる音)
ちょっ!?は?
「え、えと、リビングに鍵なんてあったっけ?」
「……!?。そ、そ、そんなこともしらなかったのっ!!ごひゃくねんくらいまえからついてたっっ!!!!。」
……………ウチの妹は不老不死らしい…。
まぁ、それはおいといて、
「な、奈々沙?あのーー、これなに?。」
「え?これはななさとくせいのっ!びーふかれーだよ。」
「《ビーフカレー》ッテ、アオムラサキイロダッタッケ?。」
そこにあったのは青紫色の料理で、奈々沙曰くビーフカレーらしい。それ以外にも黒いスープや、一部赤みの残ったチキンなど食べることができるかどうか不安な物体がテーブルに複数、鎮座している。
「でしょ?おいしそうっておもったから、むらさきいもたるとってゆうのをいれてみたの。おいしそうでしょ!!。」
そう、パーって感じの笑顔になるなよ。罪悪感で残せなくなる。
「んー、そっか………、確かに奈々沙特製のビーフカレーだな………。」
「でしょ?だからたくさんたべてね♪」
「た、たくさんは無理かな…?だってまだ病み上がりだよ?そこまで食欲もないし。」
「じゃあ、ななさがたべさせてあげる。はいっ、あーんして?」
そう言いながら奈々沙は俺に向かって紫色のビーフカレーの乗ったスプーンをつきだしてくる。普段ならば少し恥ずかしいシチュエーションだが、今は不思議と恥ずかしいという気持ちは湧いてこなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ奈々沙。」
「どーしたの、にぃ?。」
「高校生にもなってその、妹にあーんしてもらうなんて、は、恥ずかしいと思うんだが…。」
「そ、そんなことないよっ!!。これはせかいじゅうのにぃといもうとのあいだでおこなわれているじょうしきてきなできごとだよっ!!。はずかしいことなんかじゃないのっ!!。」
俺の妹は世界中の兄妹関係について把握しているらしい。
「で、でもな…?」
「でもじゃないの!」
「いや、やっぱ…。」
「もんどうむようっ!!。」
奈々沙は俺の口にスプーンを突っ込んできた。油断していたのと、病み上がりの体のダルさ相乗効果で俺は抵抗することもできずにムラサキビーフカレーを口に含ませられていた。
「ぐっ……ぐもっ!!!。」
電撃が走った。体温が高くなり、心拍数が上がっているような気がする。その割に意識が薄れていっているような気もする。
「ど、どうっ!!おいしいっ??。」
奈々沙の問いは俺の耳に届かない。そして俺の意識は段々と薄れていく。
「ちょ、ちょっと……にぃっ!!にぃってば、どうしたのっ!!!。」
俺の意識は完全に沈んだ。
その日俺は救急搬送されたらしい。医者によると俺の体内からは大量の毒素が発見されたらしく、奈々沙は危うく殺害未遂の疑いにかけられるところだった。しかし、家のビーフカレーを調べたところ市販物しか見つからなかった為、証拠不十分で疑いは晴れたらしい。
家にきた調査官はそのビーフカレーをみて動揺の色を隠せてはいなかった。
――――――――――――――――――――――
なんてかんじだったので今年はちゃんとやりきりたいと思っている。
夕飯のメニューとしては奈々沙の超好物である焼き餃子を筆頭として大体のものが奈々沙の好物となるように作ろうと思う。
そう思いながら餃子の具を革に包む作業をしていると、スマホの着信音が俺しかいないリビングでけたたましく響いた。
スマホのディスプレイには爽香の名前が表示されていて、一瞬それに出ようか迷ってしまう。ただ、無視する方がよっぽど後から怖いと思い、電話に出る。
「もしもし、賢杜だけど…。」
「―今すぐボクの家に来い――――。ブチッ。」
ディスプレイには通話時間3秒という文字が踊っている。
しかし俺はそんなことより、早く行かなければと思った。
………なぜかと言われれば、その爽香の声は泣いたように震えていたから。
「奈々沙!ちょっと買い忘れたものに気づいたから出かけてくるな?いってくるっ!!」
「え?にぃ?うん。いってらっしゃい!」
ちょっと奈々沙に嘘を付いたことを後ろ暗く思いながら爽香の家に向かって全力で走る。
――ピーンポーン――――
「――どなたでしょう?。」
「爽香の知り合いの神貴というものです。用があって来ました。」
「――そうですか。少しお待ちください。」
しばらくすると門が開き、使用人が立っていて
「お待たせしました。お嬢様はこちらです。」
と言って案内を始めた。
爽香の家に来るのは久し振りだったが、広いにも関わらずその豪邸の構造は全て覚えていた。
「お嬢様の部屋はこちらでございます。」
俺はその人に会釈をしてその部屋に入ると、爽香の部屋は想像を絶する状態だった。
服はタンスにしまわれておらず、そのタンスと冷蔵庫にはボコボコに穴が空いており、テレビはそれがテレビだったのか分からないほどに折れていて、壁にも殴ったように無数の穴が空いていた。それ以外の物も異常な状態でその真ん中に爽香が座りこんでしゃくり上げていた。
とにかくそれは異様だった。
「おい。爽香どうしたんだ?お前の部屋といえばキレイってことで有名だったじゃねぇか?」
「……………。」
「この冷蔵庫だってパパが買ってくれたって嬉しそうに自慢してくれたよな?。」
「……………。」
「で、何があったんだ?どうせ黒騎の事だろうけど。」
「………!!。」
悲しそうな血走った目で俺を見上げてくる爽香。
「あぁ。喧嘩したんだな?。」
「……キミってエスパーだっけ?」
悲しみよりもその顔は驚きに変わっていた。
「そう思うなら、それでもいいけど。」
「いや、冗談だよ。」
さっきよりも、その顔には明るさがあった。
「で、教えてくれ。なんで俺を呼んだんだ?」
「そ、そうだったな。ちょっとキミに相談がある。」
高二病の俺と中二病のアイツが普通に高校生活を送れると思うか! 流水 滝 @Potechoco0620
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