番外編 小さいころの話

 「綾奈、健人くん来たわよ〜」

「あうあうあー!」


うちの綾奈は健人くんと仲が良い。今も会いに行こうと必死でハイハイしている。


 「あうあー!」


何故か後退している。


「綾奈ねー、まだ後ろにしか進めないのよ〜」

「かわいいわねぇ」


11ヶ月で、ちょっと成長してスピードアップしただけに、余計に健人くんとの距離が離れていく。

少し涙が出始めた。


「うぅああー……あぁうー……」

「あやなー」


健人くんがハイハイして綾奈の隣に辿り着いた。彼は成長が早い子で、まだ8ヶ月なのに喋れる。


「あううー」

「あやなー」


もっとも、まだ「綾奈」しか言えないが。仲がいいなぁ。

絵本を見始めた。


「あううー」


虫のページだ。綾奈が嬉しそうにそのページを叩く。

健人くんは次のページに進むべくめくろうとしているが、綾奈に阻止されている。

 次の絵本は苦難の末王子様と結婚する話だ。心なしか健人くんを見る目がキラキラしているが、健人くんは別の絵本を見ていて、綾奈の絵本に興味を示さない。おいコラ。



 お菓子を出すのを忘れていたので、一旦持ってきた。随分静かだ。

見てみると、綾奈と健人くんがくっついて寝ていた。

こんなところで寝ていたら風邪引いちゃうよ、とは思いつつ、注意する気にはなれない。そっと布団をかけて、ふたりを見守った。

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「単に前歩いてただけの他人に一目惚れした」 @sakasaman

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