投書Ⅰ タイトル「自殺志願者富豪」ビル・クリストファー 体験談
「はぁ」
「あはは、お客さん来ちゃったねぇ~ファイトッ!エマっ!」
丸々他人事の様にニカニカしながら言うレイチェル。
「他人事だと思って!たまにはレイチェルが対応しなさいよ!」
ビル・クリストファーを応接室へ通したあと、お茶を用意しながら、エマが言う。
「う~ん。エマがど~してもお願いってい……」
「えっうそっ!いいの?じゃお願い!お願いします!このチョコチップ入りのクッキー食べていいからっ‼」
エマはキッチンの収納棚から取り出したクッキーを紙袋から銀皿に移す作業をやめ、紙袋ごとレイチェルに押し付けながら。必死に懇願した。
「やだ」
それを軽く一蹴するレイチェル……
「なっ、えっ!えぇぇ!今お願いしたら、代ってくれるって言ったじゃない!」
涙目になりながら、さらに詰め寄るエマ。
そんなエマに対して、チッチッチッと人差し指を左右させてたレイチェルは、
「『ど~してもお願いって言ってもやだ』って言うつもりだったしー、人の話を最後まで聞かないエマが悪い!」と親指を立てて言うのである。
エマは、俯いて両肩をワナワナ震わせはじめた……
「っと言うことで、レイチェル・ドアーはただいまから、取材に行って」
「命令……」
「えっ?今、命令って言った?」
「そうよっ!命令よっ!店主命令!」
「うぅ……でも私……エマ意外の人と会話できないし、するつもりもない!」
「なっ、何よそれっ!何なのよそれ!私以外の人と話すつもりがないって‼」
顔を真っ赤にしてエマが言う。
相変わらずのちょろエマだなぁ。と思いつつ、レイチェルは饒舌に続ける。
「人には得意分野があると思うんだ!エマは応接。私は盗み聞……じゃなくて、取材っ!」
「何が得意分野よ!私が接客苦手なの知ってるくせにっ!それから今、盗み聞、って言ったわよね……まさか、盗み聞きじゃないわよね⁉ちゃんと交渉して取材して、支払いして仕入れて来てるのよね⁉」
「もっ、もちろんっ!言い間違えかけただけっ!」
「本当かなあ」
じとーっとした目で見てくるエマに、レイチェルは「それじゃ、行ってきます‼」と慌てて、取材用の鞄をポールハンガーからひったくるとドアへ駆けだす。
「あっ!街に行くなら、本社にこれ届けて!」
エマは慌てて、レイチェルの背中に声を飛ばす。そして振り返ったレイチェルに、書き終えた広告文が書かれた紙を見せた。
「レイチェル・ドアー二等兵はエマ・マドソン軍曹が応接室へ向かった後に、その機密文書を回収後、任務に赴くであります!びしっ!」
何を警戒してか、レイチェルは、ドアの前でぎこちない敬礼をしながら、そんなことを言う。
「誰が、軍曹よ。もうっ、次は代ってよね。絶対だからね!」
ニカニカしているレイチェルに頬を膨らませながらエマは言うと、紙袋に残っているクッキーを全て銀皿にぶちまけ、カップとポットを乗せてあるトレーに乗せ、大きなため息を吐いてから、トレーを持ったまま応接室へと向かうのであった。
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