エピローグ
「疲れたぁ……」
私は、机に戻ると、両手足を投げ出して脱力した。
結局、ビル・クリストファーの体験談は、ボツだと判断した。
お金に困っていない分、金銭的な要求はなかったが、店から押し出す最後まで「せめてご褒美だけでも‼」と言い続けていた。
記事としてはボツだけれど、個人的には友人に、婚約の破棄の真相を教えてあげても良いかもしれないとは思った。
「はぁ、今週の記事どうしよう」
実のところ、締め切り間近だと言うのに、ネタがない。投書(来客)は数あったのだが、結果は全てボツ。
困った。結構、本当に私は困っている。
レイチェルに期待したいところだけれど……彼女の獲物待ち蜘蛛の巣作戦は収穫率がとにかく低いのだ。
持ち帰ってくる経費の領収書は、毎月束になるって言うのに。
カラン カラン
私が、そろそろ編集から催促の電話がかかってくるだろうな。とため息をついていると、ドアベルがなり、
「たっだいま~っ」とレイチェルが帰って来た。
「お帰りレイチェル。って、また正面ドアから入って来てっ!」
「小さいことは気にしなーい。っでどうだった?成金の話はネタになりそう?」
取材用の鞄をポールハンガーにかけながらレイチェルが聞いてきた。
「全然ダメ。あんなの与太話の方がまだまし」
「与太話って…」
「与太話ってなかなか聞かないにゃ~」
そしてソファに寝っ転がるレイチェルは、ニカニカしている。
「期待はしてないけど、一様聞くわね。レイチェルは収穫あったの?」
「むっふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました、エマさん!」
あ、これダメなやつだ。私は直感でそう思った。
「今、あ、これダメなやつだ。って思ったでしょ‼」
「えっ、私、声に出てた?」
「うぅ、思ってたんだね……エマってば酷いやい!」
「だってぇ、いっつもレイチェルったら、思わせぶりするだけして、一日カフェに居たってことばかりじゃない」
「うぅぅ、まぁ、否定はしないけど……今日は違うんだにゃー」
「えっ、嘘っ、収穫あったの?本当⁉締め切り間近だからとっても助かるんだけど‼」
「私よくわかったよ。エマに信用されてないってことが……」
涙を浮かべながらレイチェルはそう言ってから、続けて、
「カフェテラスで聞いた話なんだけどね」と話し始めたのであった。
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