迷宮回路
黒縞文月
第1話:全ての始まり
現代社会の中で一際輝いていたものがあった。誰もが目にして誰もが羨む存在感。そして、それはテレビの中で輝き続けていた。はずだった――
「えー、本日未明。アイドルグループである
朝、八時を回った時、ニュース番組は一人の人物がいなくなったと報道した。それは、人気アイドルグループ・splashのメインでもある、心崎夢は超が付くほどの人気者だった。それが突如の行方不明と報道されているのだ。何があったのかも誰にもわからず。ただ、不思議なことだけが残っていたそうだ。彼女が消えたとする場所には防犯カメラが設置されていた。なのに”映っていない”そうだ。どこのカメラにも映っていないのだ。それが世間では大騒ぎになり、警察も次々と証拠集めの為に動き出した。知名度が高いこともあってか、警察の動きは活発である。ニュースキャスターは戸惑いの声を洩らしながら一体どういうことなのかとお互いに考えて話し合っている。ネットの方でも早速話題になり、「幽霊とか?」や「カメラが壊れていたんじゃ」など色々と意見が広げられていた。心崎夢は何処に消えたのであろう。と街中が騒ぎ、それを一人の少年はただ黙って見ていた。少年はざわめく街の中のにあるビルに取り付けられた画面を見上げ溜め息をつく。耳にはイヤホンをして聴いているのはラジオだ。ラジオでも同じように心崎夢の話題で持ちっきりになり、今や街中は彼女の存在で埋め尽くされている。心崎夢はアイドルグループの中でも飛びっきりかわいいわけではない、それに加え話が上手でもない。特に目立つような特技があるわけでもなく、ただただ普通な少女である。そんな彼女の消失は世間を揺るがすほどの存在であったらしい。少年はイヤホンを外し目の前に立って居る女の子に話しかけた。
「最近、心崎夢の話題で持ちっきりだな」
にこやかに笑いながら言ってみるが目の前の少女はぶっきらぼうなままだ。
「遅刻しといて最初の発言がそれか。まあ、確かに話題は彼女で持ちっきりね。どれを回してもみんな同じ事を話している。何度も繰り返して同じ事を話しているわね。本当に不気味」
少年と少女はビルに取り付けられた画面を見つめ話をしだした。この街はとても不可思議な事が起きるのだ。人が消え、そのうち死体が発見される。そして死体には外傷はなく、ただ一点。「DEAD」と顔に書かれているのだ。今回の心崎夢の失踪はどう進んでいくのか。誰にもそれはわからないのだ――
そして現在は朝の八時を回ったところ。この街に起きたもう一つの不可思議。時間が何度も繰り返しているのだ。この街の不可思議は必ず誰かが消えたときに起きる。条件が必ずあるみたいなのだ。そして、その現象が終わるとき。それは死体が現れたとき。少年と少女はこの街の住人ではないからか自由に動けていた。時間が一定を繰り返しているものの夜を迎える。だが、人々の動き、テレビの時間と番組は一定している。最後に極めつけなのは日にちだ。日が変わることがないのだ。
「本当におかしな場所。ここから出たら他の場所はいつものように日が変わっていくのに」
「ここだけなのかそうじゃないのかも気になるね」
そして、二人はこのおかしな街中を探索し始めた。
迷宮回路 黒縞文月 @x_fmtk_x
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