第13話:エピローグ
陽射しは柔らかくなり、風も少し肌寒さを感じさせるようになった。
しかし、このぐらいの方が昼休みの屋上は過ごしやすい。
陽那は柵に寄りかかりながら、ぼーっと街の様子を見ていた。
街路樹には、もう紅葉さえもうかがえる。
すっかり秋だ。このままきっと、何事もなかったかのように、季節は巡るのだろう。
そうだ。ここから見る景色は、何も変わっていない。
校庭から聞こえてくる学生たちの声。
電気自動車となり、静かながらも近くの大通りを走るたくさんの車。
たまに飛び交っている荷物を運ぶドローンの風斬り音。
それらの喧噪は、すべて陽那に日常を感じさせてくれる。
だが。
その地下では、人は何度も死を見つめ、何度も苦痛を味わい、それでも現実に戻ってきている。
なぜ、
結局、何もわからないままだ。
陽那は、ABCのマリアを思いだす。
あれは幻覚ではなく、BICを使った通信だったのだろう。
何とかもう一度、マリアと話したい。
そして、すべての謎を問いただしてみたい。
「お姉ちゃん、お待たせ!」
ニコニコ顔の光世と共に現れたのは、もちろん瑠那だった。
正真正銘の瑠那……なのだろうかとふと思う。
もしかしたら、この瑠那もマリアが見せているARなのではないだろうか。
また、光世が口車を合わせているとしたら?
いや、光世さえもARを現実だと思っているとしたら?
そもそも、蘇るなんてことは本当にありえるのか?
蘇ったと思った人々は、本当はすべてARなのではないか?
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「……あ、いや。なんでもない」
陽那は慌てて疑問を捨てる。
こんなふうに心配してくれる妹。
こんなかわいい顔で癒してくれる妹。
救いとなる存在。
もうそれでいいじゃないか。
「今日のお弁当、超気合入っているんだよ!」
少し伸びたショートボブの天辺をちょこんと結んだ髪。それを揺らしながら、瑠那は大きめの胸を張って見せた。
「ほほう。どんな弁当なんだ?」
「ふふん。……なんと冷し中華!」
「……いや……ちょっと待て……」
「そうだよ、瑠那。冷し中華はもう季節外れじゃないか」
「お前もツッコミどころが違う、
「僕は『こうせい』っす!」
═ ═ ═ ═ ═
――半月後。
彼らhaloは、【
裏切ったチームメンバーたちも救うが、彼らにはもちろん大きなペナルティーを背負わせた。
さらにそこから数ヶ月以内で、地下で接続されていた【銀座線・
これにより彼らは、東地区のトップグループとなる。
そして1年後。
彼らは父親を助けるため、東京駅に挑戦することになる。
陽那の大嫌いな義理の弟とその仲間と共に。
だが、それはまた別の話である……。
FIN
東京迷宮冒険者 ═Tokyo Dungeon Explorers═ (上野駅編) 芳賀 概夢@コミカライズ連載中 @Guym
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