第四章
「シェル!何でこんなことするんかよ!?」
タオが叫ぶ。
「あんたたちは……………あんたたちはなにもわかってないんだよ!」
「空白の書があったら、みんな優しくしてくれる………だけど!物語を持った主人公じゃ…………ダメなの。」
シェルは泣きながら叫ぶ。自分のすべてをさらけ出すように。
「…………あんたたち、気づかなかったの?」
涙で濡れ、しわくちゃになった顔をさらけ出して、シェルは醜く笑う。
「私の『運命の書』。絵の具で白く塗っただけだけど。」
すると、僕たちがいる足場が崩れ落ちる。………落ちたさきは白い世界にいたのが嘘のような漆黒の黒い世界だった。
「私の本当の名前は『人魚姫』。王子様を殺してしまい、自我が崩壊した哀れな人魚姫よ。ふふふっ…………」
シェル………いや、人魚姫が宙に浮いている。だが、その体は黒くなっていた。
「しょせん、空白の書の持ち主なんて運命が決まらなかった………ストーリーテラーに見捨てられた哀れな子供。
「………いいよね、あんたたちは。自分の運命を自分で決めれるんだから。
「でも、物語が終われば記憶のなかであんたたちは生きられない。
「結局、あんたたちは、ずっと殻に閉じ籠ったまんまなんだから。だから……だから!」
「もういい。なんも言うな。」
タオが言葉を止めた。
「…………坊主たちには黙ってたけど……俺は、全部知ってた。」
申し訳なさそうな、どこか悔しそうな顔でタオは言った。
「おまえの空白の書が偽物だってことも、お前自身が偽者だってことも……シェインがどこにいるのかも。」
「最後のは僕のお陰でしょ!」
タオが固まる。レイナが震える。そして
「んなこと、どうだっていいんだよ。」
シェルは怒った。
「くっくっく。私を倒しても、あの小娘はもとには戻らない。」
「じゃあ、」
と、レイナがタオの肩に手をおいた。
「ここは、私たちに任せて!」
「いってらっしゃい。タオ。」
「おう!」
タオを送り出してから、僕たちは人魚姫と向き合う。
「へぇー。あいつがどこまでやれるか、見てみようじゃぁないか。」
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「タオ兄!シェインはここです!気づいてください!」
シェインは、シェルと対峙していた。
「ほらほら、私はここだよ。」
シェルは素早く動き回り、シェインは振り回されてばかりだ。
「くっ。なんてすばしっこいんですか……」
タオが、シェインを見つけてくれるまで、待つしかない。
「でも……いくらあなたでも、もうすぐ耐えきれなくなりますよね…ね、人魚姫さん?」
「ぐっ……」
人魚姫は、シェインの攻撃で少なからずダメージを受けていた。
人魚姫の所々には血が滲み、擦りきれていた。だが、それはシェインも同じだ。
「お互い、次が最後のようね…………」
「そうですね………」
「しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!」
ドガーン
「はぁはぁ………」
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ドーン
遠くで地響きがする音がタオの耳に響く。
「シェイン!返事をしろぉー!シェイン!」
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「タオ兄!タオ兄!シェインはここです!」
タオの声が聞こえたシェイン……声が聞こえた方に魔法を飛ばす。
「はっ。ついに自暴自棄になったわけ?…あんたも落ちたわね。」
「でも、あなた、よく話せますね……」
シェインが、尋ねる。
人魚姫は、地面に這いつくばっていた。
「私は負けるわけにはいかないからな…」
「でも、これで最期です………」
「待てよ!シェイン‼」
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「さぁ、これでチェックメイトよ。人魚姫。」
レイナがたしなめるような笑みで言う。
正直、恐い。
「はぁ………はぁ…はぁ。」
「人魚姫。もうやめよう?こんなことをするのは………」
「そうよ!私が、調律してあげるから。」
レイナが自信ありげに言う。
「まだ、………私はまだ、終われないんだよぉ!」
チュドーン
遠くで聞こえた爆発音。それが、エクスたちの耳にはよく聞こえた。
「シェイン!タオ!」
「ふふふ。………
「ふふふ………へっ?」
人魚姫が固まる。
シュン
「……ケホッ 遅くなりました。……姉御!」
「遅くなったな!エクス!お嬢!」
そこには、ところどころに泥をつけたシェインとタオがいた。
「シェインんんんんんんんんんん!」
レイナがシェインに抱きつく。
「くっ………………」
「さぁ、これが最終決戦です!」
そして、僕達は、最後のコネクトを始めた。
* * * * * * * * * *
そして、戦いは終わった。結果は僕たちの勝ちだった。レイナは、「この世界を調律するの~!」とか言ってたんだけど、結局僕たちが頼み込んで調律はなしになった。人魚姫は、この世界からいなくなり、この世界の主役はいなくなった。
何が言いたいんだって?
結局、ハッピーエンドだったってことさ!
fin……
殻に閉じ籠った子供たち 美織 @days
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