第三章
「おい!お嬢。それは………本当なのか?」
タオが顔を青くして聞く。レイナの顔も青い。僕も不安になってきた。
「ほ、本当よ!だって、帰ってきてないもの………」
「どこに………」
「…………………テントよ。寝ていたテント。シェルと何処か行ったきり……っ!そう!シェルも居ないの!」
レイナが焦る。まさかの事態だ。この場所は、見渡しても白い景色しかない。女の子が隠れていてもすぐに分かるだろう。
「……………………………まさか…」
「エクス。その考えは………」
「うん…………………ごめん。」
「レイナも、坊主も、しっかりしろ!………何で俺たちなんだよ。」
僕たちは意気消沈していた。
「……………さん……ェ………さん……エクスさん……………エクスさん!」
シェルがこっちに走ってきた。
「おい。あれ……………」
タオがそういう前に、レイナが動き出していた。
「シェル!シェインは!?シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!シェイン!」
「………………………………………」
レイナがシェルを問いただす。だが、シェルは何も答えない。
「…おい!姉御!答えろ!シェインはどうした。答えろ!シェインはどこだ!」
僕はレイナたちを押さえにかかる。だが、二人は止まろうとはしない。
「…………タオとレイナも落ち着いてよ!」
「どうやって、落ち着けって言うんだ!」
「落ち着けないわよ!」
パチン パチン
僕はレイナたちを叩いた。
「シェインがいなくなって悲しいのはレイナたちだけじゃないんだよ!僕だって悲しいよ!だけど………」
『ほら、新入りさん。行きますよ。』
頭の中で、シェインの声がこだまする。
「シェインは絶対ここの何処かにいる!探そう!シェインを!」
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「………………ここは……」
シェインは、目覚めると光の中にいた。体がふわふわ浮いている感覚がある。
目の前で赤い光や、青白い光が、ぽわぽわ浮いている。とても幻想的だ。
「……綺麗。……です。」
シェインは死んだのか。と、思う。だが、向こうに川が見える。まだ、自分は死んでいない。だが、そこを渡るか渡らないか。気持ちの問題になってくる。
「……ふふふ。あの川をわたれば、シェインは楽になるんでしょうか。」
独り言を漏らす。
「…………そんなことしちゃ、いけないですよね?タオ兄。」
そして、シェインはここから脱出するために、もといた場所に戻る。
クルッ
そこには、一体のヴィランがいた。
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その頃、僕は、シェルに荷物番を頼み、捜索に出た。
ぶつかったものにはさわって確認をしたし、足元も何回も確認した。だが、シェインらしき人はいなかった。
「シェイン………どこにいったの?」
レイナも心の拠り所をなくしたようで、悲しんでいる。
クルッ
そこに、一体のヴィランが現れた。
「……ヴィラン。どうしてここに………手に、何を持っているの?」
レイナが、その手紙を受けとる。ヴィランは去っていった。
「レイナ、この手紙、開いてみてよ。」
「…………そうね。」
レイナが重たそうな手で手紙を開ける。なかには、こんな文章が書いてあった。
『タオ兄たちへ。
突然すみません。シェインは、何処かに飛ばされてしまいました。すみません。何処かは分かりませんが、川が近くにあります。ふわふわしていて、とても気持ちがいいです。
でも、シェインは必ずそこから脱出して見せます。
シェインは、昨日の夜、テントから少し離れたところにいました。近くを探してみてください。
P.S. あの女は危険です。今すぐに、逃げてください。 シェイン 』
シェインから送られてきた文章だった。
「ねぇ、レイナ、タオ。」
「何?エグス…………」
僕は直感で思った。
「シェインが危ない。急いでシェルのところに戻ろう。」
僕達は、テントに向かって走り出す。
走っている途中に、タオから話しかけられた。
「坊主。なんで、シェインが危険なんだ?」
「………多分、シェインは三途の川の近くにいると思う。肉体だけ残されて、意識だけと思うけど。だから、シェインの体はあのテントの近くにあると思う。」
「………じゃあ、あの女って言うのは?」
レイナが口を開く。
「……シェルよ。」
「僕もそう思う。」
まもなくテントにつく。
そこですべてが分かるはずだ。
僕は、そんな期待を胸に走る。
どんな苦痛が待っていようと。
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「ありがとうございます。………ヴィラン。」
まさか敵に助けてもらうなんて……と、シェインは笑う。
「これで、タオ兄達が気づいてくれればいいんですけど………新入りさんがいるので安心ですね。」
そこまでいうと、自分がいつの間にかエクスに信頼を寄せていることに気づく。
「ふふっ。新入りさんに、帰ったらご褒美をあげましょうかね。……無事に助けてくれたら………」
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「………シェル、そこで、」
テントにつくと、シェルが………いや、シェルらしき何かが、たたずんでいた。
「ん?なんですか?」
「なに、してるの?」
「遊んでるんですよ………卵で。」
そうシェルが言うと、大量のヴィランが僕たちを囲む。その数…………
数百体。
「絶望的な数だよね。これって………」
シェルが言う。骨がおれそうだと思う。ここにはシェインはいない。
「戦おうよ!エクス!」
「そうだ!坊主。こんなところで、俺たちは終われないんだよ!」
レイナとタオが僕を励ます。
シェインのいない僕達は、変身してヴィランに突っ込んでいった。
僕とタオが蹴散らしている間に、レイナが回復してくれる。僕たちの連携を見てシェルは怖じ気づき出した。
「くっ…………」
「逃げたぞ!」
「追うわよ!」
僕達は駆け出した。
『新入りさん。無理、しないでくださいね。』
シェイン。今、
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『………助けにいくからね!』
シェインは、エクスの声が聞こえ、上を見る。だが、エクスは、いないし、タオもいない。だが…………
「必ず、助けに来てくれますよね。」
自分に言い聞かせるように言う。あの人たちは助けに来てくれると。
誰もいない光の中で思い続ける。
ふわふわした感覚がシェインを襲う。
「……諦めた方が、いいんですかね。」
上を見上げ、涙をこぼす。
「………………諦めたくないですよぉ!」
クルッ クルッ
そこに、ヴィランがやって来る。精々、十~二十匹くらいだろう。
ジャリッ
傷だらけで震える足をたたせて、シェインは叫ぶ。
「もう少しで助けが来る!だから、シェインは、諦めません!かかってこれるものならかかってきてください!」
シェインは、落ち着いて一匹一匹に魔法を当てていく。でも、数は減らない。
「………これならどうですか?」
必殺技を発動する。
ヴィランを誘導しただけはあって、ヴィランが集中している場所に大爆発が起こる。
どうにか全部倒しきったようだ。
「ふ、ふへぇー。久しぶりに一人で戦いました。一騎討ちのとき以来ですかね……」
そこら辺に立っていた樹に背を預ける。
「…………………早く迎えに来て。」
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そして、僕達は、シェルを追い詰めた。
シェルは人格が変わったように笑う。
あの、純粋そうなかわいい笑顔ではなく、醜く歪んだ笑顔で。
「ほら、最終決戦ですよ!私に………勝てますかね?」
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