銃社会と日本人の組み合わせで描かれる「捻じれ」。

 銃を手に入れた主人公。銃とは人を殺すための道具として使われている。そしてその歴史の中で、より簡単に扱えるように改良がなされてきたものでもある。銃社会では、「銃が人を殺すのではない。人が人を殺すのだ」という論理がある。確かにそうではあるが、「銃を使うのは人間である」という大前提が無視されている。日本では、銃は持つだけで犯罪である。しかしだからこそ、もし銃を手にしたならば、相手の生殺与奪を決定してしまえるという幻想が生まれる。つまり、自分は他人よりも「上」なのだ、と。
 本作では世界一危険な場所で、日本人の主人公が銃を手に入れる。上記したことを踏まえれば、一種の「捻じれ」がそこにはある。そこでは正規に銃を持つことは犯罪であるが、主人公のように銃を譲渡されることは違法である。作者はこの構造的な「捻じれ」を活かして、現実の力関係(例えばイジメなど)を巧く書ききっている。
 虚ろな感情で手にした銃は、果たして主人公をどこへ導くのか?
 主人公は残りの実弾を、どこで使うのか?
 目が離せなくなる一作。
 是非、ご一読ください。