第4話ワン、ツー、スリー

「まずその格好……そのままだと山や谷を越えるのに適さない。」

「冒険に出るってんだから金はあるんだろう?……はぁ!?こ、こんなに……」

「どこの貴族だよ!!?……まぁいい、もっと動きやすくて強い武具を買ってやる、付いてこい」


ディランに指導され、僕は着々と旅に出る支度を進めていた。

元々来ていたチュニックやローブはディランが無理矢理売り払ってしまった。

形見のネックレスまで取られそうになったので、バレない様にそっと隠した。


「よし!これで良いだろう!」


ディランが陽気にそう言った。

目の前の鏡には、布と装飾された金属を組み合わせた鎧を着た僕が映っていた。

軽い金属を使って居るのか、飛んだり跳ねたりしても問題ない。

ブーツは特殊な素材で出来ており、走ったり、跳ねたりするのがとても楽だった。

こんな服装をしたのは初めてだったので、僕は浮かれてそこら辺をぴょいぴょいしていた。


「ゼーレ渓谷はその名の通り岩場が多いからな、そのくらいの軽装じゃないと通れないんだ。

それに、ゼーレ式の鎧はどこでも通用する硬さだから、冒険者や旅人に重宝されるんだぞ。」


得意気な風をしたディランを横目に、僕は自分の荷物を背負う。


「そろそろ、出発ですか?」


僕がそう問うと、


「今日は夜が更けたから宿で休んで明日出発だ。

それと、そんなに堅苦しくしなくていい、もっとしゃんとしてろよー!」


わしゃわしゃと僕の頭を撫でながら、ディランがにぱっと笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

渓谷の覇者 Josh Lemon @DragonsDogma_yu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ