第3話“覇者”
ゼーレ城下町の一角、『渓谷の大通り』にて。
普段であれば大勢人が往来し、賑やかであるはずの大通りが、静まり返っている。
一体何があったのか、と戸惑う俺に一人の女が寄ってきた。
その女は、恐ろしい言葉を語るように口を隠し俺の耳元にささやくように呟いた。
「あなた、異国の旅人?こんな所にいると捕まるわよ。国王陛下がお隠れになったらしいから」
彼女が言うには、国王を殺した人物を探る為、国民の外出と旅人の訪問を禁止したようだ。
俺は心底驚いた。
王が死んでも後継ぎがいれば殺した人物を探す前に次代国王が就任するはずだ。
しかしそんな事は大したことでは無い。
俺は女の忠告に従い、次の城下町に向かうべく宿で荷物をまとめ、門を出た。
静かな大通りを背景に、そそくさと立ち去る旅人達の中、俺の後を走って付いてくる人影が見えた。
「待ってくれ!」
俺は急に呼び止められ、ぎょっとして振り向いた。
しかしそこに居たのは、ボサボサの頭をした整った顔立ちの少年で、俺は思わず吹き出す羽目になった。
「はっ、なんだ少年。俺の後に付いて旅でもしたいのか?」
こいつもいつもと同じ、弟子(笑)希望なのだろうと思い、軽くあしらう。
「ああ、そうだ!」
少年は挑戦する様に俺に言葉を投げかける。
そんな装備で俺に付いて来ようと思ったのか、といいかけたが、良く見ると旅に必要な荷物をある程度持っている事に気づいた。
俺は小さくため息を付くと、少年の肩を叩いて言った。
「俺に付いてくるなら、相当な覚悟は出来てるよな?
なんてったって、お前はこのディラン様に付いてくるんだからな」
少年はこくり、と頷くと俺の後ろをとぼとぼと付いてきた。
まったく、愛想のないやつだ。
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