第4話 酒場騒乱.その4

 グラサン男が機関銃を向け続けている中、俺はマスターのふところからマスターキーを取り出した。そして鍵のひもを人差し指に掛けながら手を上げてカウンター席に戻る。それを見たグラサン男が今度は例の物を取りに行くと、首を振って合図した。カウンター席の奧にある瓶棚びんだな奥にそれはある。マスターキーで、ボトルキープが立ち並ぶボトルストックの扉を開ける。高価なボトルキープをかき分けて木箱に入ったスコットランド・キャンベル産スコッチ・ウイスキーを取り出す。いろせた木箱の年輪が雰囲気をかもし出していた。木箱をカウンター席の上に置く。

「これが例のスコッチ・ウイスキーか?」

「木箱の外側にSCOTLANDスコットランド CAMPBELLキャンベル.と刻印こくいんされているのが、そのあかしです。」

「そうか。それじゃあ、試しに一杯飲んでみるか」

 木箱を開けると、赤い布がボトルを包んでいた。一見してワインボトルの様に見えるガラスボトルだが、れっきとしたウイスキーボトルだ。外栓のカバーを外すと、コルク栓が見えた。ウイング型コルク抜きでコルク栓を回すと、スモーキーフレーバーのほのかな香りがただよってくる。グラスにそそぐとはくせきけたかの様なき通ったがねいろの液体が姿をあらわした。

「これがまぼろしのウイスキーか…」

 グラサン男が感嘆かんたんしたように一言つぶやいた。

 

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『NOT BLOOD STREET~血塗られない通り道~』 新庄直行 @Shin__Nao

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