第9話 再起とは

 「絵梨、おはよう。そろそろ、目を覚まさないかい…。」

こちらに越して来てからは絵梨は管につながれたままだ。

会社の仕事をしながら、絵梨の傍にいる。

「斎藤が君の仕事をしてるよ。そろそろ君の手料理が食べたいなぁ…。」

誰がこんな生活を予想していただろう。

自分が何かしただろうか。

自分の会社が人間型ロボットの開発に貢献したからか?

もう、どうしようもない。

絵梨はきっと目を覚ます。そうして、再び幸せになるのだ。

こうなった以上自分がなんとかするしかないのだ。

 「ねぇ、絵梨。君はいつになったら完璧に僕の元に帰ってくるんだい。最近、うっすらと目を開いていることは分かっているんだよ。昨日もだったじゃないか。なぁ…?」

 だめだと分かっていながら絵梨に負担をかけるのだ。

会社の部下も斎藤さえもだましていながら、自分は絵梨の前で弱音を吐く。自業自得だ。もう、誰にも絵梨を見せることはできないかもしれない。すべては、うまくいくようでいかないものだ。


 「ただいま戻りました。」

家に戻れば私の仕事はたくさんある。

昼食の準備をし、掃除をする。そして、晩食の用意をするのだ。

昼食は旦那様の部屋の前に置いておく。

「絵梨…。お願いだから…。」

旦那様のお声がする。

私は足早に部屋の前から離れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

光影 牡丹一華 @anemone01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ