第8話 日常とは
旦那様がお部屋に戻られたら、私は家の掃除や買い出しをする。
旦那様は食事に興味をお持ちでないのか、何をお出ししても食べて下さる。大奥様が亡くなられたあと、私はこの家に一人だった。
私自身、食事に興味がないためどちらかと言えば苦手だった料理は最近になってするようになった。とは言っても、大奥様や奥様が残してくださったレシピに沿って作るだけだが・・・。
「旦那様。買い物に行って参ります。何かございましたら連絡をお願いします。」
一応、お声をおかけしてから外に出る。仕事で部屋にこもっておられる旦那様には声を掛けても届いていないことの方が多いが。
「こんにちは。」
外に出ればご近所の奥さんたちが声を掛けてくる。
「今日はいいお魚がはいったそうですよ。」
「あぁ、あとね、スーパーよりも駅の方の八百屋さんの方が今日はお野菜安いですよ。新鮮だしね。」
奥さんたちとは仲良くしていて損になることはない。
「ねぇ?戻ってこられた将人君と絵梨さん、どうしてるの?」
「ちっとも見ないけど、元気にしてるの?」
ただ、旦那様を幼いころから知っているが故に面倒なこともある。
「奥様がお身体を壊されておられるので・・・。旦那様がつききりで看ておられますよ。きっと、よくなりますから。それでは、僕は買い物に行ってきますね。」
「斉藤君、よく働くいい子よねぇ。」
「本当に。亡くなった森内のお二人に恩があるからって。ねぇ。」
「いつの間にやら生活に溶け込んでるし。あれ?斉藤君っていつから森内さんのところで働いていたのでしたっけ?」
「ん~・・・。いつだったかしらね。思い出せないわ。年かしらね。」
今日も奥さんたちの楽しそうな声がしていた。
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