第38話

 先ほど脚部に取り付けた追加兵装、それは数ある機械生命体用のフロートユニットの中でも、比較的小型ともよべる代物であり、水上走行を可能にする為の物である。


 構造的にどうなっているかはわからないが、解りやすくいうと反重力的な何かがとでもいうのか、水面上を微妙に浮いている状態を維持し続ける機能を付加させるものである。


 ただし、こいつの欠点として、小型のためか浮揚するために重量制限があり、1stキャラではその機能が使えず、浮く事すらまったくできない。

 が、この人もどきの生物ナマモノにこだわった2ndキャラであるならば、その重量を抑えられたために使用できる代物である。


 だが、それにともない、その後に携行する兵装によっては、その重量制限の限界を超えてしまう事もある為、兵装に関してもある程度の制限が加わる形にはなる欠点が存在はするのだが、それ以上に返ってくる恩恵がこの小型フロートユニットには備えられている。


 それは、余剰分がある時、その分を移動速度へと還元させることができるという点であり、基本的ともいわれる他のフロートユニットより、さらなる機動力を確保できる方法があるという点がある。


 他のフロートユニットには、そういう機能がなかったりするのだが、重量の限界値が小型のこのタイプの倍以上持っていたりとする。

 その為、この小型化したフロートユニットだけの特典といえる、そういう仕様の代物である。


 まぁ、デフォルト作成したキャラクターの場合だと、兵装すら持てないというネタ装備的な欠点があったりするが・・・裏技的な方法を使用も駆使すると、この2ndキャラでは、かなり特殊な方法でそれ以上の事がやれないこともない。


 が、今はそれはおいておこう。


 現状、その追加兵装のステータスを確認すると、その重量的な状況がモニタリングでき、現状の状況をみてみれば、約三割の余裕は保たれている事を示していた。



「(三割余剰か、なら余裕でいけそうだな)」



 海上をスケート感覚で移動しつつ、向かってくる相手の正面からその側面へと円を描く様さらに移動する。

 とりあえずは、相手の気を引けれる恰好にするにはどうしようかと、手にした小銃へのコントロールリンクを行い、視覚に映し出される小銃の状況画面および照準が現れる。

 照準に関しては波間の高低差は下半身が自動で吸収してくれるのと、ある程度の補正はオートで腕部が調整してくれるため、よっぽどの精密射撃を行うのでなければ、現状でも命中率は高いはずである。


 その映し出されるコントロールリンクの状況表示の中から、射撃に使う弾の種類を選択し、まずはあそこを狙うかと手に持つ小銃を腰だめに構えては引き金を引く。



 "パゥ"という独特な音を放ち小銃に多少の反動を作り出し、その反動を腕部がオートで吸収され、そうして放たれた弾は、昼間でもはっきりと見える一筋の光跡となって飛んでいく。


 このエフェクトは、まるでVRMMOの時と寸分変わらないなぁと思いつつも、次弾の設定情報が映し出される内容を変更し、続けて二つ、今度は弾を変え、狙いを変えて順次撃ち出していく。



 一つ目は曳光弾、目標の顔の前をわざと通り過ぎ認識させる為に。

 二つ目は通常弾、威力確認のためと、鱗のなさそうな白い肌の長い首に命中。

 三つ目は榴弾、その堅そうな胴体に命中したと思えば小さな爆発が発生する。



 その放たれた三つの内、二発を命中してはいた。

 なにしろ、最後の一発は着弾付近に炸裂とでもいうのか、それらしい小さな破裂みたいな物を発生させていたからだ。


 一応、相手はおとなしい部類という事と、暴れだしたら手が付けられないという話から、対応の仕方しだいでは高いリスクが伴うだろうが、まずはこちらに気づいてもらわなければ先にすすみそうでもない。


 そのため、威力が効きそうか効きそうにないか、そんな微妙な場所を狙ってみたのだが・・・。


 小銃の銃口を上に挙げてモードをSafeへと移行させ、相手の状況を伺ってはみるが、変化があるのかどうかがあまりわからない。


 精密射撃をしたわけでもない指切り三点バーストな撃ち方で、きっちりと命中はしてはみたが、相手のダメージがいったいいかほどの物かがはっきりとわからない。

 確認のために命中したところを2倍ズームで確認してみるが、どこもその鱗や肌を貫通したまたは傷つけたという後らしいものもなく、少しばかりその表層が変色したという感じだろうか。


 とりあえず、何かダメージが入った様子は見受けられない。

 見受けられないが・・・


 仕方ない、さらなる衝撃を与えてみるか・・・と、榴弾をセットし照準を相手にあわせ



「気づいてくれよ・・・って、お?止まってくれそうか?」



 先ほどまで、船へと一直線に向かっていた首長竜のその速度が徐々にだが衰えさせ、ついには大きな波をつくって停止しているのが視認できた。

 そして、その作られた波は、先ほどいた船を上下に持ち上げたかと思うと、移動を開始するのが確認できた。



「(修理は、間に合ったか)」



 そんなことを想いながら対象を視認してみると、その首がこちらへとむけられ・・・



「クァァァァァァ!!」



 首長竜から、大きな咆哮が放たれ・・・たかと思えば、その口から液体のようなものがこちらへと・・・それも最後まで確認できたところで六発が、アラートと共に表示される。



「ちょ!それ聞いてない!倍返しとか飛び道具とか聞いてない!!」



 まさか、飛び道具で反撃してくるとは思わず、慌てて急加速の最速モードで後退移動を開始していた。

 だが、とっさに動いたのがよかったのか、先ほどまでいたあたりに着弾と同時に水柱が幾つも高くそびえたった。



「ちょっとまて!どんだけでかい水柱なんだよ!!」



 作られた水柱の高さは、目測でもゆうに10mをこえるといったところ、そんな水柱が発生するということは、それだけの質量またはエネルギーが発生しているというわけで・・・


(ちょ、ちょっぉと、洒落になってなくない・・・?)


 とりあえず、あんなものをぶち込まれたら、作業船なんて木っ端微塵が想定できる。


 というか、自分もかなり危ないというか・・・が、こちらにおびき寄せないと不味いだろうしと、先ほどから水柱がつくりだした水しぶきが降り注ぐ中、いくつか作られていく水柱を避けつつも体制を変えて牽制射撃を行い、命中はしてそうなのだが、なんか、当てるたびにその倍として返ってくる始末な気がしないでもない。



「やめ、ちょ、これ洒落になってねぇ!!」



 愚痴ともいえる叫び声をあげている中、多数の夾叉となる水柱が壁になり、進行方向が一定方向にまるで誘導されたかと思った矢先、その先に新たにそびえ立つ水柱・・・そして、振り向いて確認した先には、こんどはいままで以上の代物が迫ってきているのが視界にはいる。



「し、シールドォ!!」



 そういう意思を示した途端、視界隅にEnableと緑枠の文字表示されたかと思えば、勢いよく迫りきていた水の塊は、自身から頭上をすべるように後方へとそれる。

 それは、まるでどこかのだれかが操っているかのような不自然な軌跡を一瞬描いては逸れ、その速度を保ったまま着水した。



「あっぶねぇ・・・何だよあれ、首長竜にあんなんなかったはずだぞ!?」



 着水した場所から、衝撃波の様な振動と音とともに、見上げんばかりの水柱を作り上げ、一面に豪雨のようなしぶきを無造作にまき散らしていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界召喚~ただし身体はVRMMO種族の機械生命体~ zaq2 @zaq2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ