第37話


 首長竜種


 陸地という物が孤島程度しか点在せず、その殆どが海しか存在惑星、通称「海星」

 その海星の中で知性をもった生命体として存在していたのが首長竜種という存在だった……たしか、そうだったはず。


 で、その体躯は恐竜でいうところの首長竜目に似ているのだが、異なる点といえば、よくあるファンタジー系でいうところのドラゴン類に似た鱗が存在している点であり、口からブレス的な、そんな攻撃方法をもっているという。

 もちろん、そのファンタジー的なドラゴンのごとく、大きさも数十mは子供ともよばれ、成竜になれば優に二十m近くにまでになるという大型の部類じゃなかったかなぁ。


 そのため、その海星においては一大勢力をもつ種族であるのだが、その性格は温厚であり、翻訳機による意思疎通も可能であった為に、友好的な種族として海星における開発の協力者として、よき隣人として存在していた。と記憶してる。


 それで、えーっと、本当の名はなんだっけ?

 確か、プラ…プラ……プラリ………プラル…………


 ……


 よし!首長竜のままでいいな!




 ゲーム初期にあった星だったから、昨今では行くことすら無くなってくると、記憶が曖昧も良いところだな。

 せめて生物ナマモノ系の名前ぐらい、頭上に表示してくれても良いのじゃないかろうか。

 誰か覚えてそうな存在がいれば・・・と考えたら、なぜか活動する変態シーが記憶に浮かんでくるという。

 それはそれで聞くのがなんだか嫌になるというか・・・脱線確実というか・・・。

 まぁ、それは置いとくとして、とりあえずは



「で、あの首長竜はどうするんだ?」


「首長竜・・・?あぁ、アイツか。今は放置しておくしか無かろう?現状の我々にはどうこう出来る代物でもないからな。そもそも、こちらから刺激を与えなければ問題無い相手だ。ただ、監視はしておいた方が良いかもしれんな……。それにしても"首長竜"か、確かにそう見えるし旨い表現だな」



 ハハッハと軽く笑っているシャチ男をよそに、外湾から内湾へと悠々と泳いでいこうとしている首長竜を眺めながら聞いてみた対策としては、相手を刺激せずに監視するだけに留まるしかないという事だった。


 監視ねぇ・・・



「とりあえず、あのズィースィーが近づいてきても何もするなよ?よっぽどの事がなければ、こちらに危害を加える事はないからな」


「は、はい、わかりました」


「りょーかい」



 そういわれながら、監視の様に船べりに膝をつきながら、目標物を眺めていたけれども、監視とか大人しくしてればとか、それ、何ていうフラグ?ってやつじゃないかなぁと思う次第で。


 なにせ、さっきから四倍ズームで眺めていたらいたら、先ほどまで辺りを見渡しながら進んでいた存在が、ピタリと止まり、さらにその顔がこたちらを認識しているかの様にロックオンしているという。



 あぁ・・・ありゃぁこちらを認識してるなぁ・・・



「なぁ、あの首長竜、移動を辞めてさっきからこっちをずっと見てるんだが」


「ん?ん・・・ならば下手に動かない方がよいかもしれんな・・・」


「え、えぇぇ・・・・竜ですよ?竜種なんですよ?逃げないと!!」


「おちつけ、先ほども言ったが、刺激さえしなければ問題はない。逆に刺激を与えた者を標的として襲ってくる傾向がある。それに船で逃げようとしても、全速力のズィースィー相手にしたら、すぐに追いつかれるしかないぞ?ならば動かない方がまだマシだ」


「本当ですよね?大丈夫なんですよね?」


「大丈夫だ、心配するな。私も数回ほど経験しているから安心しろ」



 相棒は完全におびえきっている状況であり、シャチ男はシャチ男でとくに問題ないとしてはいるが、その身体からうける印象は、緊張している風ではあった。


 かくいう自分と言えば、完全にだらける格好で船べりに顎を載せて静観の構えになっているだけである。

 なんだろうか、怖いとか恐怖とか、そういうのが一切ないっていうか、そういうのが全く感じないというのは一体どういう事なんだろうか、そこに違和感を感じてはいたりしはじめてたが、ゲームの延長線上という感覚のままというか、危機感というものが一切感じずに、まるで第三者的なままでいる自分がいるという。

 こんな自分が不自然だよなぁという不思議な気持ちではあった。


 そうこう考えていると、あの首長竜もどき、ゆっくりとこちらに向かって・・・いや、徐々に速度を上げてきたり・・・



「おい、こっちに突っ込んできそうだが・・・どうする?」


「ひぇ!?大丈夫だって言ってたじゃないですかぁ!」


「落ち着け。何か刺激を与える事をした訳ではないのだが・・・やむを得ない、急ぎ移動するぞ!」



 シャチ男は先ほどからおびえてる相棒に対して、背中を叩きながらそう指示をだし、その指示にたいして「は、はい!」とすぐさま作業船を移動させる為にと操舵室へと駆け込んでいった。


 なおも、近づいてくる首長竜・・・というか、あれ、このまままっすぐこちらに向かってきたら、かなり不味くね?



「このままだと、ぶつかるぞ」


「う、動かないんです!!さっきからやってるんですけどぉ!うごかないんです!!」


 

 操舵室へと走って行った相棒に、そう叫んで状況を伝えたのだが、返ってきた内容は、まさにフラグ的なお約束な言葉が聞こえてくるわけで



「いかん!このままじゃ船もろとも巻き込まれるぞ!こうなれば、船を放棄して・・・」


「えぇぇぇぇ!?け、けど、泳ぐよりこちらの方が早いし・・・そ、それに船を壊されたら」


「船の心配より、自分達の事を心配しろ!」



 何やら操舵室では問答が行われている様であり、きこえてきた内容をざっくりと言えば、シャチ頭は作業船を放棄して逃げるというごもっともなご意見を発し、片や、相棒は作業船を復旧させて為に何とか動かそうとしている。



 さてはて、ここはどう動けばよいのやら・・・


 一、船を修理して逃げる・・・修理する時間的余裕がない

 二、船を放棄して逃げる・・・結局追い付かれ各人が襲われる可能性が高い



 まぁ、正直に個人的な意見を加味していうなれば、その二は認めたくない。

 なんせ船を壊されるのは気にくわない。

 人が作り出した英知の塊の一つであろう存在を、いともたやすく壊されてたまるかっ、それにこの船の動力源とか知りつくしてない訳で・・というか、スクリューやらそういう代物がないのに、どうやって動いていたのかがすごく不思議すぎて気になる事この上なく、それを解明する前に沈まされるというのは、とてもとても気に入らない。


 かといって、その一も修理的な事を行っている相棒を見ても、間に合う可能性はとても低い。そんな中つっこまれでもしたら、破壊されることは予想できる事である。


 そんな思案をしながらも、再び迫りくる存在を見ると、数百メートルを切りそうな勢いというか、この時点で1倍でもしっかりと見えてきていたりする。


 ただ、あの速度なら、自分だけなら・・・・・・何とか逃げ切れるよな・・・たぶん。



「なぁ、刺激を与えた者に襲い掛かってくるって、言ってたよな?」


「ああ、そうだ。ズィースィーの特徴として有名だ。特に、一番危害を加えるモノを排除する傾向が強い。この船はそういった行動をとってはいないのだが、ズィースィーがそういう対応をとってくるのが不思議なのだが・・・」


「なら、この状態で別の対象が一番危害を加えるという状況をつくれば?」


 と、携えていた小銃と脚部への追加装甲を倉庫デポットから取り出し、脚部へと取付を行いつつ小銃の状況を確認する。

 エネルギー残量も蓄えてあり、本体の活動エネルギーも半分以上は存在する。

 たぶん、逃げるだけならヤれる。

 "倒してしまっても"という事は考えない。

 それ、何ていうフラグ状態は機械生命体にとってはアウトだからな。

 うし、脚部の追加装備との接続も正常っと。



「ならば、その別の対象に向かう、だろう・・・って、それは魔導小銃か?しかもハクの・・・どこからそれを?いや、それよりも、ソレをどうして持って・・・」


「まぁまぁそこらは後で、で、アレとまともに相手にする気はないが、逃げ切る事はだけは可能、だとは思う」


「逃げ切れる?我々の種族ですら水中で逃げ切れ・・・いや、ハク持ち、そして戦士の証持ちだったな。いや信じよう、なら私は修理の手伝いに回る。頼むぞ」



 シャチ頭は、こちらの手に持つ小銃をちらりを見、魔導小銃とか言ってたから、まぁそんな物がこの世のどこかにはあるんだろうとは思うが、今はそんなこっちゃどうでもいい。

 とりあえず、アイツの注意を引き付け。船という装置を守るついでに相棒たちに被害が及ばないを事さえできれば、御の字だろうし。



「了解、任された」


「えっ!?ア、アーネストさん!ど、どうされるんですか!?」


「ちょっくら、鬼ごっこしてくるわ」



 相棒にそう伝えた後、船べりに手をかけ飛び降り、先ほどの追加装甲をEnableに変更し、海面へとフワリと降り立った。



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