改変シンデレラストーリー「移ろい」

「うつろい」1話 完結

 「おお、君こそが私の捜し求めていたヒトだ!!」


 王子は素早く進み出て、彼女の手を握り大声で叫んだ。そして彼女を「お姫様だっこ」する。


 彼女の足から、「硝子の靴」が脱げ落ち。地面に落ちて砕けた。



 ★ ★ ★



 シンデレラは一瞬で事態を飲み込んだ。


 王子の顔は、愛しいヒトと巡り合った、歓喜の笑顔ではなく、「好色なゲス野朗」のソレだった。


 王子の腕に抱かれた娘は若かった。シンデレラも若い年頃の娘だが、彼女方が、二つぐらいは年下だろうか?


 こんな娘が街にいたのか?と思った。身なりを見ると、みすぼらしい自分と、然程変りは無かった。

 近隣の村娘だろうか?年に1度、村の祭りでしか着ないような一張羅かも知れない。


 だが、化粧気の無い白い素肌。村娘とは思えない、整った顔立ち。そして、大人の女性へと成長する一歩手前、これから咲き誇らんとする特定の時期の娘だけが持つ、禁断の魅力。


 まるで、天から地に迷い込んだ天使。


 同姓のシンデレラですら、彼女に見とれ、羨望と嫉妬を覚えた。



  ★ ★ ★



 「王子様万歳」「王子様万歳」「新王女、誕生おめでとう!!」


 周囲から、王子と娘に祝福の声が上がる。


 王子は娘を連れ、馬車に乗り込もうとする。娘も運命に素直に従うようだ。その表情は、これから訪れる、幸福への歓喜に満ちていた。


 誰もが二人を見守り祝福していた。


 突然、独りの近衛兵が、前のめりに倒れる、後から突き飛ばされたのだ。


 周囲でその異変に気付いた者は、まだ数人だった。


 同僚の近衛兵、そして王子は見た。


 倒れた近衛の腰から奪った剣を持ち、薄汚れた身なの、荒い息を吐く娘を。



 「このオオオオオ、ロリコン野ろオオオオオ!!」



 祝福の声を断ち切る獣の叫び。裏切られた者の、魂の叫びだった。

 

 美しいブロンドなのだろうが、手入れが悪く、痛んだ髪を振り乱し。 顔に鬼の形相を湛え、シンデレラは王子に襲い掛かった。



教訓 ヒトのココロはウツロイやすく



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物語改変。 蒼月狼 @aotukiookami

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