十ノ回廊 夢は終わらない

 ――こんな夢をみました。


 気がつくと、そこは見渡す限りの砂の海であった。

 地平線の向こう、遥か彼方まで砂に覆い尽くされた世界。天上にはナイフのような新月とスワロフスキーみたいに星々が煌めいている。

 ――ここは何処だろう? 

 自分は駱駝の背に揺られていた。アラビンナイト風の衣装を身に着けて、まるで東郷青児の描く女のように、深い憂いの睫毛を瞬かせて砂の大地を眺めて……。

 ――もしかして、ここは砂漠なのかしら?

 駱駝の手綱を見知らぬ男をひいている。シンドバットのようなターバンを巻いた異国の若い男だった。


「眼を覚ましたのか」と気配に気づいて、声を掛けてきた。

 知らない国の言葉だったが、何故か意味は理解できる。ここはどこですかと自分が訊ねようとしたら、男はくぐもった声で、

「おまえと今日で百日、砂漠を旅している」と云った。



               ― ∞(無限) ―

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夢回廊 泡沫恋歌 @utakatarennka

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