ドラクエGO
夏秋冬
ドラクエGO
西暦20xx年、スマートフォン向けゲーム『ドラクエGO』がついに発表された。
このゲーム、基本的なシステムは旧シリーズを踏襲したRPGではあるが、そのマップが現実空間なのだ。『Ingress』『Pokemon GO』に並ぶ位置情報ゲームであり、『Pokemon GO』で採用されたAR(拡張現実)技術を搭載して、現実世界にRPGの登場人物やモンスターが現れるゲームである。
プレイヤーは現実の街を散策して、そこに現れるモンスターと戦い、経験値を稼ぎアイテムやお金をゲットする。又、村人や旅人などゲーム内キャラクターが時折出現し、彼らとの会話からヒントを得てクエストを進めて行くのである。
今までコントローラーで主人公を操作していた僕たちは街を実際に歩き回ることで剣と魔法の世界を旅するのだ。
現実の公園は、ゲーム内での村や町といったポータルになっており、武器屋や薬草その他のアイテムを売る商店が集まる場所になっている。小さな公園は小さな村、大きな公園は大都市といった具合で、各地の公園は連日プレイヤーで賑わっていた。
僕はすっかりこのゲームにはまっていた。高校受験を控える3年生なのに。
僕が挑戦しているクエストはさらわれたお姫様を助け出す為に魔王を退治するというものだ。魔王の居場所を突き止める為に、街を徘徊しあらゆるキャラクターからヒントになる台詞を収集していた。街角に現れるスライムと幾度も戦い経験値もかなり上がっていた。しかし決定的な手掛かりは中々得られなかった。
ゲームの目的は様々なようだ。同級生の中には、秘宝を探すよう命じられる者、因縁のある謎の人物を探して欲しいと乞われる者、などクエストは何十種類とあるようで出会ったキャラクターによってその目的は変わっていくらしい。
僕はその日も通学の途上スマホを見つめていた。するとコンビニエンスストアの前に黒い頭巾を被った老人のキャラクターがいるのを発見した。初めて見るキャラクターに関心をもって僕は話しかける。すると老人は
「お前は姫をさらった魔王を探しているのじゃね?」
と言うではないか。僕は老人の台詞を一字一句見逃すまいと注意した。
「渋谷へ行くが良い。そこで大きな助けが得られるだろう」
そういうと老人は霞のように消えて行った。ついに手掛かりを見つけた。こんな風に具体的に場所を提示する場合もあるのか。渋谷か。学校が終わったら速攻で行こう。部活は休もう。
渋谷にやってきたが、どこへ行けばいいのだろう。モニュメント的な場所には色々なイベントがあると聞くので取り敢えずハチ公前に行ってみる。すると画面の中に可愛い犬が現れた。こういうイベントがあるのか。すると画面に「お供に連れて行きますか?」とメッセージが。
ペットも飼えるのか。僕は喜んでその犬を連れて行くことにした。名前はやっぱり「ハチコー」だよね。
すると、ハチコーはくんくんと鼻を鳴らして僕をどこかへ連れて行こうとする。この先に「大きな助け」があるのだろうか。しばらく歩きまわるとハチコーは立ち止まりくるくると尻尾を振っている。すると画面の中に新しいキャラクターが現れ「僕も魔王を探す旅をしています」というメッセージが現れた。画面から顔を上げると高校生の男の子と目が合った。?どういうことだ?すると彼はスマホの画面をこちらに見えるように差し出した。そこには僕のキャラクターがいて「僕も魔王を探す旅をしています」というメッセージが表示されている。同じクエストに挑戦する仲間だ。僕たちは意気投合してパーティーを組んだ。彼は吉田君、都内の学校に通う高校2年生だった。
その日、僕と吉田君は新宿で待ち合わせた。二人で新宿中央公園に行ってみようという計画だ。新宿中央公園はゲーム内の大きな町になっていて、そこなら魔王とお姫様の手掛かりが得られるのではないかと考えたのだ。
僕と吉田君は手分けして公園を散策し、そこで出会うゲームの中の町の住人と片っ端から会話していった。僕はハチコーを連れて公園内を彷徨ったが「姫さまは魔王の塔に囚われている」という情報しか得られなかった。
しばらくすると吉田君がニコニコして戻って来た。水の広場、新宿ナイアガラの滝の前で出会ったキャラクターから決定的なヒントを得たと言うのだ。それは「新宿中央公園前交差点から東を見上げれば魔王の塔が見える」というものだった。
僕たちがそこで現実に見たものは東京都庁。そしてスマホの画面を通して見たものは禍々しい魔王の塔だった。
もしかして最近都知事になったあの女性が囚われのお姫様?それとも魔王?
おしまい
ドラクエGO 夏秋冬 @natsuakifuyu
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