第4話
グレイウルフの事件から9年。俺とレイは15歳になった。俺らの誕生日は、拾われた日を生まれた日とし数えていっているらしい。
この国で15歳と言えば、成人である。
そう、成人である。つまり、孤児院から旅立つ年齢だ。エリアは既に去年ここを出ていった。今は神殿でしたっぱとしてコキ使われているらしい。たまに送られてくる手紙を読んでいるかーちゃんの顔が気持ち悪いぐらいニヨニヨしていたので、元気しているのだろう。
あれからの俺らといえば、専ら強くなる為の修行というか努力をしている。
どのぐらいかと言われれば、かーちゃんがひきつった顔でガンバってるねと言うぐらいだ。その話は追々するとして、だ。
今は俺はとてもワクワクしている。なぜか、それは成人式と同時に行われる魔力測定の儀式があるからだ。この儀式は自分の魔力の属性が分かる。
属性とは、その人の体に棲む精霊の使える力の指針となるものだ。
例えば土属性だったら、土を作り出すなり、操るなりすることができる。だが、水を使えなかったりする。努力すれば少しは使えるようになるが。このように、属性によって色々な差が生じる。
属性とは人生を左右するのだ。余談だがエリアは光属性だったので人を癒すことができるので、神殿で働いているのだ。
また、精霊は一種の生命体であり産まれたときからその人と生きている存在である。精霊は子供の頃は眠っており、本人の才能、経験によって強さや属性がかわり、多種多様な姿を見せる。
魔力測定の儀式はその精霊を眠っている状態から、起こす事を言う。それをすることによって初めて魔法が使えるようになるのだ。
しかし、精霊も生命体なので知能があり、怒らせたりして嫌われると力を振るうことが出来なくなってしまう。
さて、と。魔力測定の話はこのぐらいにしておいて、かーちゃんとレイが遅い。今日は魔力測定の日なので、今から魔力測定ができる神殿に行くところなのだが、二人とも全然来ない。もう始まる3時間前なのにだ。ここから神殿まで歩いて30分。何らかのアクシデントにあう可能性を考えると丁度良いぐらいの時間なのだが…。
みたいな事を考えながら玄関前で凄いソワソワしている人は俺だ!
いや、自分でも分かっているんだ。楽しみすぎてテンション上がっているというのは分かっている。だが、しかし、無理だろう楽しみすぎてヤバイ。俺は堪らずこう叫ぶ。
「かーちゃーん、レイー早くしろー」
すると喧しくなったのか、早々に行くのが吉と思ったらしいかーちゃんがレイを連れて降りてきた。
「やかましいねぇ。少しは静かにしな。ガキじゃあるまいし。少しはレイを見習いな」
「いや、母さん。僕も限界です。早くいきましょう」
「はぁ。コイツらは。去年のエリアは大人しかったってのに。何で男ってのはこう堪え性が無いんだろうね。あんたら忘れ物はないかい?じゃあ行くよ」
そう言って俺らはエリアの待つ神殿へと急いだ。
神殿に到着しました。神殿は全体的に白を基調としており、所々に金色の装飾がしてある。形は塔のような形をしており、天へと続くと言われている伝説の塔を真似しているらしい。
この国の国教は精霊教であり、己の心の鏡と言われる精霊を尊きものとする教えだ。大体の子供たちは親にこの教えを説かれており、国民の殆どが信仰している宗教だ。
俺?かーちゃんに『一応常識として覚えとけ。でもな、あんまり信じると痛い目見るぞ』と言われていたためあまり信じていない。
「えー。今日、この日から大人になるものたちよ。今から魔力測定の儀式を始める。全員目を閉じ、何も考えず、己の中にある物へと意識を向けなさい」
魔力測定の儀式は、大人数で行うので、前々から大きな魔方陣を用意し、全員をその中へ入らせ精霊の覚醒を促す。
皆は司祭の声を聞くと、魔方陣の中へ入って行く。
「何だか緊張するな」
「そうだね。でもそれと同時にワクワクもするね」
「分かってんなぁ」
「まあずっと一緒にいればね」
俺たちは笑いあって他の奴等に続く。目をつぶり、意識を己の中にある物へと向ける。すると、何も音が聞こえなくなり、可笑しいなと感じ、目を開けると辺りは暗闇で目の前に俺と同じぐらいの女の子がいた。
レイside
僕たちが魔力測定の儀式を始め、意識を己の中にある物へと向けた瞬間、辺りが暗くなったように感じ、目を開けると、そこには5人の人がいた。いや、人と言って良いのだろうか、所々に鱗が有ったりするヒトがいた。そのヒトたちは、それぞれ爺の姿や、幼女の姿など、規則性のない集団であった。ただ、一つだけ、生物の格が違うことに気付き、僕は立て膝をつく。
「その若さで格の違いに気付くとは将来有望な若造であるのぉ。いやはやそんなに堅苦しい格好をするでない。我らはそちに用件があって来たのじゃ。楽にするがよい」
どうやらリーダーらしい茶髪の温厚そうな爺が喋りかけてきた。その声音は穏やかなのに、本能は警鐘を鳴らしているので、気を張りながら僕は気になっていた事を一つ質問する。
「申し訳ないのですがあなた方はどなたであるのかを聞いて良いでしょうか」
「おぉ。すまんかったのぉ。竜王種と言えば分かるかえ?」
僕は内心絶句する。
竜王種。
それは、生きる天災とも言われる。生物の頂点であるドラゴンのなかの頂点の存在。世界中に5体のみいるとされ、それぞれ火、水、木、土、光、闇の基本属性を司っているとされる存在だ。天災の名前通り、過去に町を幾つも潰してきた、人間として、尊び、恐れる存在である。
「し、質問に答えて頂きありがとうございます。して、用件とは何でしょうか」
「そうであったの、我らはの、そちに加護を与えようと思っておるのじゃ」
「加護、でございますか…」
加護とは人間より格の高い存在から賜ることのできるものであり、与える者によってその効果は異なる。竜王種の加護は…司る属性の才能開花と威力に補正がかかるというものであったはず。
「何ゆえ、私に加護を与えて下さるのでしょうか」
「それはの…お主の連れの、黒髪の男がおったで有ろう。そいつに加護を与えた存在がちと厄介でのう。お主に押さえてもらおうと思っての」
黒髪の、と聞いて真っ先に思い浮かぶのは相棒であるシェイドである。僕は一抹の不安を抱きながら爺に聞く。
「そ、それはどなたがお与えになったのでしょう」
「邪属性を司る龍と闇の属性を司る龍である。コイツらは厄介でのう、邪属性の方に対抗すべく、聖属性の龍を連れてきたが闇の方はのう光の野郎が拒否しやがってワシらが来たというわけだ」
邪属性と聖属性という聞いたことのない属性を司る竜王種が居るのは驚きだが、町をぶっ壊して居ないだけだろうとあたりをつけ、再度質問する。
「お答え頂きありがとうございます。では、私がシェイドを監視すればよいのでしょうか」
「いいや、普通に生活してくれて構わぬ。こちらは 目 が欲しかっただけじゃからの。では、加護を与えるぞ、そなたの活躍を待っているぞ」
その声を聞いた瞬間脳内に声が響く。無機質な声であったがそんなことよりも流れてくる内容の方が気になった。
【火炎龍、深緑龍、氷結龍、聖龍、大地龍の加護を受けました】
気がつくともうあの爺どもはいない。あの爺以外喋らなかったなとどうでもいいことを考えつつ、
「はは…どうしよう」
と現実逃避をし始めるのであった。色々有りすぎて無理だろ。助けて。
願いが届いたのだろうか真っ暗な空間がパリンといって崩壊する音を聞いたと共に、僕の意識は暗転した。
to be contunied
されど僕らは月夜に笑う 鯨 @Jotasan
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