02

 薄明かりの中、十数名の男女がそれぞれ指定された席に座り、各々に課せられたタスクを遂行している。各人の机には概ね2台から3台の液晶ディスプレイが並列に設置されており、ある者は首ごと、ある者は目だけを左右にずらしながら、刻一刻と変化する数値や画像を追いかけては、別のディスプレイに解析した結果を算出していく。そうして完成したデータは、彼らが正対する壁一面に設置された大型モニターの隅に、小さく分割されて映し出されていた。

 そのモニターの大部分を占めているのは、彼らが作業する部屋の上、つまりは地上で行なわれている大会の映像だった。

「いよいよ、か」

 地下室のほぼ真ん中、モニターが一番見やすい位置に陣取った流星治ながれ・せいじが、リアルタイムで投影されている会場の様子を眺めながら呟いた。

「……しかし、上の連中もお気楽だな。こんなのに熱狂するなんて」

 星治の嘆息に、「仕方ないさ」と声が返ってくる。彼のすぐ右隣に立っている、黒髪の青年のものだった。

 視線をグイとそちらへ向ける。腕組みしている彼もまた、先ほどまでの星治と同じようにモニターの方をじっと見つめていた。

「お客さんにとっては、ただの『ゲーム大会』だからね」

「そりゃ、ゲーム大会だろうよ。だけどなぁ−−」

 星治の言葉を、白川秀人しらかわ・ひでとが腕組みを解きながら「例え、このゲームと同じことが現実世界で起こっていてもね」と遮る。星治の顔を見やり、「そんなもんだよ、残念ながら」といった様子で首を傾げ、何かを諦めたかのような、少し寂しげな笑みを作った。

 セリフを盗られた恰好となった星治は「フン」と鼻息を鳴らすと、視線をモニターの方に戻した。秀人の言わんとしていることはわかっている。しかし、だからといってそれを素直に聞いて、モヤモヤする気持ちの矛を収めることはできなかった。

 −−わかってるか? あんたたちが夢中になってるそのゲームは、海を越えたら人殺しの道具なんだぜ。

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パーソナル・ソードマン @HiroOka1220

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