第11話 本当のダメ人間と目的

「あのぉ、青春ドラマっぽくエンディングを終えている感じのところ申し訳ないんだけど、僕のこと忘れてないよね?」

 申し訳なさそうな顔で現実味のある発言をしたのはデスブレイカーだった。

 なんだこいつは。突然現実を見せてくる。そんなやつはJKからモテないぞ。


「3人は死んじゃったけど世界は護れたからハッピーエンドだみたいに見えたんだけど、3人は生きているから。」


 こいつ、また現実味のある発言を・・・・・っ!?

 俺はとっさに振り返り、デスブレイカーに質問をなげかけた。

「警察もPortという人たちもいなそうだし、ようやくゆっくり話せるようだね。僕の本当の目的を。」

 そう、気づけば聞いていなかったのだ。

 太一と真はゆっくりと唾を飲み込んだ。覚悟のできる顔立ちだった。


「僕の本当の目的・・・。今日という鉄の塊が落ちてくる日に備えて町の人々をデータ化して一時的に僕のPCで保存することなんだ。まぁ、君たちが止めてくれたからもう問題ないんだけどね。」


 衝撃が脳裏を走った。

「どっ、どういうことだよ・・・・!お前、今まで散々町の人たちを削除して・・・・」

「待って俊太。僕、今、察することができたかもしれない。」

 太一が俺の発言を止めた。言葉の通り、何かに気づいたように、目を大きく開けた顔をした。

「僕はただ自分の正しいことだと思ったことを行動に移す者です。でも実行したらあなたたちが何かしらと邪魔してきていたのですよね。」

「なるほどな、そういうことだったのか・・・・・・。」

 太一の顔は全てを理解した顔に変わった。予想が確信に変わった瞬間だった。


「本当のダメ人間って、僕だったのかもしれないな・・・・。」

「太一さん、一体どうしたのですか。」


 少しだけうつむく太一に、真が下から顔を見上げる。

「一言でいうと『誤解』だったんだ。お母さんが削除されたって誤解して、そこから感情的になって、あいつは悪いやつだから町と人々を護るんだっていう思考に至って・・・。デスブレイカー、データ化したみんなは今から元の姿に戻せるのか?」

 太一は顔をデスブレイカーに向けた。期待の心と共に。

「あなたたちが感情的になっている間に僕はまさにその準備をしていたのですが。感謝してくれないかな。」

 デスブレイカーはレンズフォンを操作していた。そして、あの時と同じように、手を前にだして手のひらを上にむけた。


「ヒューマンデータ転送。ヒューマライズ開始。」


 手のひらから光りがでてきて、辺りの地に落ちていった。それは少しずつ1点に集まり、やがて人間の形を形成していった。青いデータから色がつけられて、質量が重ねられていった。夜になればホタルぐらいの明かりをもっていたデータが全て人間になったとき、声が出始めた。


「も、戻った!現実世界だ!!俺たちは戻れたんだ!!」

「よかったわ!私死んでないわよ!!ひかるちゃん!私のこと見えるよね!?」

「さっきまでの感覚ってなんだったんだろう・・・まぁ戻れたからいいや!」


 人間に戻った人のうち、大半が中学校の生徒だった。その他にも町人はもちろん、老若男女問わずの人が笑顔になって戻っていた。そして、その中に3人はいた。

 こちら側へ走ってきた。


「俊太!太一!真!私たち、戻ってきたわぁ!!」

「菫は泣いていなかったんだよ!戻れるって信じていたから!」

「泣きそうになった菫を止めたのはこの蓮ですわ。」


 帰ってきた。芽花と菫と蓮が帰ってきた。相変わらずの話がもう聞こえてきた。PWという秘密組織に、解散の2文字なんてなかった。どこかしら涙がでそうになった。それは6人に共通したことであったようだ。

 すると、芽花が突然、俺を抱きしめてきた。


「つっ、芽花!?ど、どうしたんだ・・・!?」

「ううん、ただこうしないと、まだ涙が出続けそうな気がしたから。」

「あっ!この2人デキてるでしょー!」

 芽花には見えないだろうが、俺には菫が冗談顔でからかってくるのが見えた。

「お、お前!何を言って」

「いいの、俊太。このままでいいの。」

「芽花・・・・・。」


 言葉では言い表せない感情がどこからかこみ上がる。なんていい返すべきなのか分からない。だから、俺は両手を芽花の後ろに伸ばした。抱擁を交わした。

 4人がこちらを見ながら笑っていた。顔が赤色に染まった。だけど、今はこうすべきなのかなって、そう思った。

 ふと、太一と目が自然とあった。お幸せに、なんていう目をしていたが今は決してカレカノ関係ではない!と伝えたいところだったがそう言う訳にもいかず。雰囲気的に。

 そんな独り言を考えていたら、太一の後方から声が聞こえた。それはまるで、周辺を暖かい布で覆い、特有の優しさの味わいを感じさせる声だった。


「あら、そのたくましい背中姿は・・・・・。太一?何年ぶりかしら・・・・。」


瞬時に太一は後ろを振り返った。声が聞こえたときにはすでに涙がでていた。今、その温かい声の持ち主に、涙を見せているだろう。


「お・・・おかあさんっ・・・・・!!」


終わり



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニート×ニート 時川 隼人 @SHIVIARU

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ