とある何かの何がしか
由文
とある何かの何がしか
季節は秋、実りの季節。秋とは言っても、夏も終わったばかりで残暑も厳しいこの季節、都会から離れて自然の中にいるのはとても気持ちがいい。夏休みの期間とは違い、人が少なくてとても落ち着いている。天気は快晴、爽やかな風が森の中を吹き抜ける。とある山中に、三人の女の子の姿あった。
「これからどうしよっか?美奈ちゃん……。」
とりあえず何をすれば良いのかを聞こうと、麻耶は聞いた。
「全く、どうしろって?よりにもよって山で道に迷うなんて……。」
顔に手を当てながら、あきれ果てたように美奈と呼ばれた女の子、志井美奈枝は言った。
「取りあえず何かしないと、暗くならないうちに。」
「でも、何も出来ないよ?私たち。」
三人の中では一番背の高い女の子、堀夜衣は控えめに、本当に控えめに、まるで呟くかのように言った。
「そうだねぇ、地図もコンパスも無くしちゃったもんねー♪」
「無くしちゃったもんねー♪じゃない!あんたが何が楽しいのか知らないけど振り回して、何処かやっちゃったんでしょうが!」
落ち込んでいるかのような様子の夜衣とは逆に、お気楽な調子の麻耶に向かって美奈枝はまくし立てる。
「だってぇ、虫が沢山いるんだもん!邪魔だから追っ払ってただけだよぉ?あたしは悪くないもん、飽きもしないで沢山いる虫が悪いんだよぉ!」
「ええい、自分の責任を逃れるだけでは飽き足らず、何の罪も無い虫のせいにするか?そんなやつはこうだ!!えい、えい!」
言い訳をする麻耶の口に指をいれて両側に引っ張る。麻耶の口は意外と伸び、かなり滑稽な顔になる。
「はうぅ、やえへひょおぉ……。」
口を広げられたままなのでまともに喋れない麻耶。それを面白がるようにさらに美奈枝は口を左右に引っ張った。
「まだよ、今日という今日は許さないんだから!えい、えい!」
「あうあう……。」
「ふふふ、まだよ!まだなんだからっ!」
「ふふぇぇん。」
美奈絵の目的は完全に変わっているようだ、ただ単に面白がって麻耶の顔を引っ張っている。心なしか目の色が変わっている。少し恐い。
「ふふふ……。」
「ちょっと美奈ちゃん、麻耶が可哀想だよ?」
そこに夜衣が割って入る、そこでやっと麻耶が開放される。ようやく開放されて涙目になって口をさする麻耶。
「痛かったぁ~。」
「ちょっと、何するのよ、夜衣!せっかく面白かったのに!」
本来怒っていた理由も忘れ、おもちゃにしていた麻耶を取られたことに腹を立てる美奈絵。
「ありがとう夜衣ちゃ~ん!」
子供のように抱きつく麻耶に、夜衣はまるで子供をあやすように頭を撫でる。
「はい、いい子ねぇ。よしよし。」
「うう、口が大きくなっちゃうよォ。美奈ちゃんみたくなっちゃう……。」
「なんですってぇ?それは聞き捨てなら無いわねぇ、だぁれの口がでかいですってぇ!」
「夜衣ちゃあん、美奈ちゃんが恐いよぉ!」
怒った様子で近づいてくる美奈枝に、麻耶は夜衣の胸に顔を埋めた。こうやって見ると、麻耶と夜衣には結構身長に差があるようだ。
「美奈ちゃん、それぐらいにしときなよ。今はそれ所じゃないんだし。」
夜衣になだめられ、美奈枝はそこに押しとどまった。
「う、うん。」
「そうだよぉ、元はといえば美奈ちゃんがみんなにお酒を飲ませたのが悪いんじゃないかぁ!」
「うぐっ。」
さらに麻耶に痛いところを突かれ、黙るしかなかった。
―――時間は一日前に遡る。大学で知り合ってからいつも一緒に行動している麻耶、美奈枝、夜衣の三人組は山に行くことになった。ただ行くだけではつまらないと泊り掛けで、キャンプをしようとなったのである。発案者は美奈枝、こういうことを計画・実行するのはいつでも美奈枝がする。
今回も例に漏れず、美奈枝が提案した。曰く、「私たち大学生はまだ休みなんだから!」ということで、特に予定の無かったほかの二人も強引に巻き込んで計画を実行に移した。別段、断る理由も無かった二人は美奈枝に付き合うことになった。当初の予定ではテントを張って、そこで一泊していくということだったのだが……。
きちんとテントを張り、河原で作った夕食も終え、無事に一日目が終わろうとしていた頃、奈美枝が切り出した。
「ねぇねぇ!これでこのまま寝たら面白くないよねぇ?」
「ん?どうしたの、美奈ちゃん。」
美奈枝が一人で荷物をあさっていたので、これまで夜衣と二人で話していた麻耶が、興味心身な様子で美奈枝の話に耳を傾ける。夜衣も別に騒ぐではなく美奈枝の方に向き直る。
「んふふふ……ジャーン!!」
もったいぶったようにして少し渋った後、美奈枝は背中に隠していたものを二人の前に出した。
「美奈ちゃん、これ……。」
「わぁ、お酒だ~!!」
二人とも驚いているようなのだが、対称的な反応をする夜衣と麻耶。麻耶が喜んでいるように見えるのに対して、夜衣はただ言葉を無くしているようだ。
「へへへ、どお?これで今夜は楽しい夜が過ごせるわよ♪」
「楽しい夜~♪」
「美奈ちゃん、それ、どうしたの……?」
楽しいという言葉だけに反応している麻耶と比べて、どうやら夜衣はいぶかしげに美奈枝を見ている。
「うふふ……買っちゃった♪」
美奈枝は随分と楽しそうに言う。
「奮発したのよぉ?五千円もしたんだから!」
「うん、それはいいんだけど……。」
煮え切らない様子の夜衣、それに気がついたのか美奈枝。
「どうしたって言うのよ?不満なわけ?」
「……お酒は別にいいと思うの。嫌だけど。」
「じゃあ何よ?」
暫くの沈黙。
「何で日本酒なの?」
そう、美奈枝は日本酒を持っていた。しかも一升瓶を。
「だって、その方が面白そうじゃない?いつも飲む時はサワーとか、カクテルばっかなんだもん。たまにはこういうのもいいでしょ?」
いわゆる興味本位らしい、要するに美奈枝も日本酒を飲んだことが無かったのだ。キャンプ用品の買出しをする時に、これ幸いにと日本酒を買っていたみだいだ。自分も飲んでみたかったのだろう。
「とにかく、飲もう!」
言うが早いが、紙コップを三つ用意し手早く三人に注ぎ分ける。
「さあ、一気にいくのよ。こお、クイッと……」
手で飲むジェスチャーをする、ここで美奈枝が自分で実践しないしないところがポイントである。
「の、飲むの・・・?」
コップを手に持ちながら乗り気でない夜衣。
「さあ、口に持っていって!」
「う、うん。」
美奈枝の勢いに押されて夜衣はコップを口元に持っていく。
「そのまま飲む!」
「うん……。」
勢いに押されたまま控えめに飲み始める。
「ぐいっと!」
「!?」
夜衣が飲み始めたところに、麻耶が夜衣の飲んでいるコップの底を持ち上げた。夜衣は不意を討たれて、コップの中のお酒を全て飲んでしまう。
「エホッ、エホッ……ゲホッ!!」
「よ、良い飲みっぷり!」
「やった、やった!」
一気に飲んでしまった為にムセる夜衣、それを面白がって見ている美奈枝と麻耶。
「ケホ、ケホ……酷いよぉ、麻耶ちゃんも、美奈枝ちゃんも!」
あまりと言えばあまりの事に怒り二人を睨む夜衣。考えてもいなかった無理やり一気飲みをさせられれば、まあ当然といえば当然のことだ。
「あははぁ、ゴメン……。」
「わぁい、おこられたぁ♪」
夜衣の怒りに気圧されて少し反省する美奈枝と、全く反省の色のない麻耶。麻耶は自分が夜衣の怒りの対象じゃ無いと疑ってないみたいだ。
「こうなったら、美奈枝ちゃんにもこのお酒を飲んでもらうからね!」
コップにお酒を並々と注ぎながら淡々と言い放つ夜衣、目がかなり真剣だ。
「ははは……冗談だって、夜衣も冗談だよね?」
「本気。」
ズイッとお酒の入ったコップを奈美枝の前に差し出す夜衣、紛れもなくその目は据わっていた。
「ほぉら!!」
鼻先にまでコップを突きつけられ、たじろく美奈枝。普段無口でおとなしい夜衣が、まさかここまで怒るとは思っても見なかったのだ.
「わ、分かったわよ!飲む、飲むから!」
このままでは殺されかけない勢いで迫ってくる夜衣に美奈枝は折れた。手にコップを受け取り、それを眺める。コップにはギリギリまで日本酒が注がれていた。
「さあ、飲みなさい!」
「分かったわよ……」
コップを口元に近づけ、恐る恐る飲もうとしたその時。
「えーい!」
「んぐ!?」
またも麻耶がコップを押し上げて、今度は奈美枝が強制一気飲みをする羽目になった。
「ぐはぁ、げほ……!」
「奈美ちゃん、おげひーん!」
思い切り咳き込む奈美枝に麻耶は面白そうだ、夜衣は普段なら見せる心配そうな顔はひとかけらも覗かせない。むしろ、あざ笑うかのような表情を見せている。
「どお?これで人の苦しみがわかったでしょう?」
「夜衣、キャラ変わりすぎ……」
呻きながらも一応突っ込んでおく美奈枝、それからハタとあることに気が付く。
「麻ぁ耶ぁぁ?あんた、さっきから人に無理矢理一気させてばっかりで自分では全く飲んでないじゃない?」
「ん?えへへ……バレちゃった?」
笑いながらごまかす麻耶、少し後ろに逃げている。
「えへへ、じゃない!あんたにも絶対飲ます!」
酒ビンを片手に麻耶を追い詰める美奈枝、それに簡単に追い詰められる麻耶。
「だってぇ、お酒嫌いなんだもぉん!」
「んふふ……問答無用!」
麻耶に襲い掛かり、あっさりと麻耶を捕まえる、そして夜衣に声をかけた。
「ほら、夜衣!今のうちに麻耶にも飲ませるのよ!」
夜衣は美奈枝からビンを受け取ると、紙コップになみなみとつけ、口の中に流し込んだ、美奈枝の口に!
「ん!んぐぐ!?」
「人に命令するんじゃないわよ!あんた何様だと思ってるの?」
口元を手で押さえつけられ、抵抗できずにお酒を飲まされる美奈枝、目を白黒させながらもがいている。
「今日はこれくらいにしといてあげるわ。」
そう言うと、夜衣は美奈枝を開放した。
「ゲホ……死ぬかと思った。」
この瞬間、美奈枝は酔った夜衣には絶対逆らうまいと心に誓ったという。
「美奈ちゃん、大酒のみだぁ!」
一人呑気にしている麻耶に、酔いが後ろから忍び寄る。
「あんたも、人の苦しさを味あわせてあげるわ!」
今度は麻耶にもコップを口に突っ込むようにして酒を飲ませる、いきなりのことに麻耶には一瞬、何が起きているのか訳がわからなかったみたいだ。
「あははぁ~、世界がぐるぐる回ってるぅ……。」
「それは麻耶、あんたが回ってるんだよ……。」
あれからお酒を飲まされた麻耶は、散々頭をシェイクされてからようやく夜衣から開放された。無論、アルコールはしっかりとまわっている。麻耶は頭をふらふらさせながら下にぐたっと座りこんだ。
「あうぅ、もう駄目……。」
そのまま寝込んでしまった、早くも一人目ダウン。
「うう、私も目が回ってきたぁ……・」
美奈枝が立とうとするが今ごろアルコールが回ったらしく、上手くバランスが取れず、また座り込んでしまう。
「あ、あれ??」
立とうとしてもどうしても立てない、気づかないうちにかなり飲まされていたみたいだ。
「……。」
無言で美奈枝のその様子を眺めている夜衣。
「フフフ……♪」
「ちょっと?夜衣、非常に恐いんれすけろ……。」
突然笑い出す夜衣に抗議するが、微妙に呂律が回っていない美奈枝。
「酔って動けなくなった美奈枝って、可愛いわねぇ♪」
「え……?」
「お姉さんが可愛がってあげる、ウフフ……♪」
完全に固まってしまっている美奈枝を置いて服をさっさと脱いで下着姿になる夜衣、酔いが回っている頭で美奈枝は何が起こっているのか把握するのに暫く時間を要した。
「ちょ、ちょっろぉ?」
「だいじょうぶ♪優しくしてあげるわぁ……。」
怪しい(妖しいではない)笑いを浮かべながら美奈枝の近くに腰を下ろし、美奈枝の服にも手を掛け始める。
「はいはい、邪魔なものは脱いじゃいましょうねぇ♪」
「や、やえなひゃい!」
「ふふ、何言ってるのか分からないわよ?でもそれがまた可愛いわぁ……」
美奈枝の抗議を巧み(?)に交わし、服を脱がしつづける夜衣。とうとう、美奈枝も下着姿にされてしまう。
「さあ、二人で危ない世界へ行きましょう♪」
「!?」
―――完全に飛んでる!?
夜衣の意識が別世界に旅立ってしまっていると気づいた美奈枝は、この上ない身の危険を感じた。思うように動かない体を懸命に動かそうとして何とか逃れようとするが、夜衣に捕まってしまっていて逃げることはもはや不可能だ。何とかならないかと辺りを見回していると、手の届きそうなところに諸々の小物が入れてあるリュックが目に入った。
―――よし、これで……。
夜衣に気づかれないように必死に手を伸ばし、リュックに手をかける。
「美奈枝ちゃんの胸って、可愛いわぁ♪」
夜衣が美奈枝の胸に手を伸ばした時、美奈枝は思い切り振りかぶって―――。
「悪かったわよ!それについては身をもって反省してるわ、もうあんた達とは飲もうとも思わないわよ。」
「どうして?楽しかったじゃない……。」
とても不思議そうな顔をして美奈枝の言葉を聞き返す夜衣。
「何処が楽しかったもんですか!夜衣、あんたは覚えてないだろうけど、こっちはあんたに襲われかけたんだからね!なんとか切り抜けられたから良かったものを。」
なおも不思議そうにしている夜衣に向かって力いっぱい説明する美奈枝。
「そう、そうよ!美奈ちゃんッたら水筒の入ったリュックを思いっきり投げつけるんだもん、まだ頭が痛いよ。」
少し恨みがましい目で美奈枝を非難する夜衣、手を頭に持っていってさすっている。恐らくそこに水筒がヒットしたのだろう。
「……。」
思いっきり黙りこむ美奈絵。一番速くダウンした麻耶は話に思いっきり取り残されている。もっとも、麻耶の場合は酔ってからの記憶は全部抜けているので、酒を飲んだということぐらいしか覚えていないのだが。
「どうしたの?」
美奈枝の様子が変わったことに気づいた夜衣が尋ねる。
「覚えてるの……?」
「何を?」
「昨夜のこと、覚えてるの……?」
夜衣を、心持ち見上げるような感じで聞く美奈枝、心なしか少し固まっている。
…………。
暫しの沈黙、そして夜衣は。
「ポッ♪」
かすかに顔を赤らめた。
「やめい!顔を赤らめるな!もじもじするな!熱いまなざしでこっちを見るなぁぁぁっ!!!」
もじもじと熱っぽい眼差しを送ってくる夜衣に向かって肩で息をしながら叫ぶ。
「だって、昨夜の美奈ちゃん可愛かった。」
「私にはその気は無い!」
「私だって、無かったわ。でも昨夜目覚めたの。」
「目覚めなくていい!そのまま眠って!!」
二人で激しい(?)言い争いをしていると、今まで取り残されていた麻耶が割って入ってきた。
「ねぇ美奈ちゃん、夜衣ちゃん、道を探さなくていいの?」
その言葉を聞いてようやく二人は自分達の置かれている状況を思い出す。
「そうだわ、こんな下らないことで時間を潰していらん無いわ!まともな道にでも出る方法を探さないと!」
無理矢理話を元に戻す美奈枝。
「で、どうやって探す?あたし、いい方法があるんだけど?」
自分の話にようやく乗ってくれたので嬉しそうに話す麻耶。手を後ろに組んで体を乗り出すように喋っている。
「いい方法?一体なんなのよ?」
「んふふ……ジャーン!!」
後ろに組んでいた手を前に出すと、そこには木の枝が握られていた。
「これでね、道を決めるの!」
「却下。」
麻耶が言い終わるか終わらないかのうちに即答する美奈枝。腕を組んで、何気にこめかみには血管が浮かんでいたりする。
「えぇ?なんでぇ!」
「あんたはこの上さらに悪い状況へ持っていこうとする気か!」
美奈枝は麻耶を捕まえると、今度は両手でこめかみをグリグリしだす。
「あうぅぅ、痛いよぉ。」
「わかった?そういうことはこういう状況では言わないこと!」
「わかったよぅ。もうふざけないからぁ。」
やっと開放された麻耶はそっと呟いた。
「本当に良い方法だと思ったんだけどな……。」
「ねぇ、美奈ちゃん!こっち来て。」
一人で何か調べていたらしく、少し離れていたところから声をかけてくる夜衣。美奈枝を手招きして呼んでいる。
「何?変なお誘いならお断りよ?」
「う~ん。別にそっちでもいいんだけど。」
「いや。そっち行かない。」
「はは、冗談だから……こっち来て」
控えめな苦笑を浮かべながら夜衣は美奈枝たちを呼んだ。それに答えて夜衣のところまで行く二人。
「ここ見て、ここだけ草が生えてないの。きっとここは何かの抜け道かなんかなのよ!それで良く人が通ってるんだわ。」
「ってことは……。」
「そう、どっちかに行けば出られるわ。」
そう、道は一本とはいえ、進む方向は二つある。どっちかはあっているが、もう片方は何処へ出るのか分かったものじゃない。迷うことはもう無いだろうが、出来るだけ早くにここを出たい。暗くなってからでは分かる道も分からなくなってしまうだろう。
パタン……。
突然、木の枝が道の片方の方向を指した。
「こっちだ!しゅっぱーつ!!」
麻耶が倒したものだった。麻耶はその結果を全く疑っていない様子で勝手に道を進んでいった。
「ちょ、ちょっとぉ!?」
「あらぁ……。」
一瞬、呆気に取られた美奈枝と夜衣だったが、もうこうなってはしょうがない、夜衣の後についていった。
「出ちゃったね。」
「うん……。」
そのまま麻耶の決めた道を歩いていった三人はいともあっさりと、大きな道に出ていた。何とも納得がいかない様子で美奈枝が一人うなっている。
「世の中少し間違ってない?」
「まあまあ、出られたんだから良いじゃない?」
「なんっか、納得いかないわ!」
「あたしのおかげだよぉ♪」
そんなことを言いつつ、三人は疲れた足取りで帰り路につく。なんだかんだいって美奈枝自体も無事に出られてほっとしたようだ。
「そうだ、美奈ちゃん?」
「何よ?」
小さい声で、おずおずと、頬を染めながら夜衣は言った。
「今度、うちに来ない?もちろん親のいない時に……。」
「ぜったいお断りよ!!」
とある何かの何がしか 由文 @yoiyami
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