作者の特権
私は連載していた作品を完結させるため、最後に『おわり』の三文字を入力する。
その瞬間、物語の世界の幕が閉じ、世界は完全な姿となる。
連載作品というのは不思議だ。ある日突然、プロットから離れて一人でに動き出す。そしてその姿に作者自身が魅了される。私は物語の語り手であると同時に最初のファンなのだ。私は満足感の中、少し高揚する。
そんな私の作品に読者からのコメントが届く。
『これまで楽しく読ませていただきました。とても面白かったです。』
「面白かった」「楽しかった」月並みな表現ではあるが、作者である私にとって、これ以上に嬉しい言葉はない。私は幸福感に包まれながらパソコンを閉じる。
世界から切り離された一人きりの空間で、私はノートを開く。
連載当初からお世話になったアイデアノート。
それに綴るは完結した物語のエピローグ。
ああ、これぞ作者だけに許された特権。
誰も知らない物語の続き。
私だけが知っている本当の結末。
現実逃避症候群 はつみ @hatumi-79
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