第3話 仲間 ーwhiteー
太陽の日差しをうけ目を覚ました。ここは小屋の中なのか、部屋の中は殺風景で生活感が全く感じられない。ふと異変に気付く。違和感だ、いつもとは違った景色が窓をの外に広がっていた。当たりは暗いのに太陽は夜も輝いていた。湖の水面は輝きを反射しており神秘さが感じられる。その湖畔に一人の少女が立っている。
「自分の部屋から森へ、そして森からベットの上で外は見たこともない異様な光景、どうなってるんだ……」
森の中でケガをした手足は手当がされており、誰かがここまで運んで治療をした。
「きっとあの子が手当してくれたんだ。お礼をいわなくちゃ」
女の子に話しかけるきっかけを脳内で勝手に作り俺は小屋を出て湖畔へ向かう。
髪はセミロングで白のニット、下は上とは不自然な青色のジャージを履いている不思議な恰好だ。夜でも輝く湖と不自然な恰好の女性が相まって今までのよくわからない出来事すべてイッサイ忘れるような感覚に落ちた。
女性に話しかけるのは母を除くと十数年ぶりだろう。失われた青春を取り戻すために声を振り絞る。
「あ……あの……」
すごい胸がドキドキする。こんな感情いつ以来か、いや初めてかもしれない。
心臓の脈が一つ一つ打っているのがわかる。これは
「もうケガは大丈夫?」
言葉を交わしたその刹那、私の体に電流が走った…… そう、俺は彼女のことが好きだ。
「あっ…はい」
素っ気ない返事を返しても彼女はニコニコしながら話をつづけた
「あなたあいつらごときにやられそうになってたけど、ここまでどうやってきたの?」
彼女の言葉は笑顔とは裏腹にどこか冷たい感じがした。
「気が付いたらあそこにいて……俺もよくわからないんだ」
「……」
彼女からの返答はない。さすがに怪しまれたかと思ったそのとき
「前にあなたと同じようなこと言ってた人がいたわ。その人もこの先の村にいるよ」
「本当か!?」
「ええ、あなたの体も大丈夫だし向かいましょう」
彼女と一緒に村にいくことになった。女の子と二人きりで歩くなんて初めてだ。
「あなた名前は?」
「あ、えっと、ヤギ…です」
「敬語じゃなくていいんだよっ」
こんな近くで女の子の笑顔が見れるなんて俺は今幸せだ。
「えっと、なんて呼べばいいです・・・呼べばいいかな?」
「わたしはマシロ、心も体もまっしろなマシロちゃんだよ!」
急に痛い自己紹介が来たがそれすらもかわいく見えてしまう。
「そういえば俺、あなたより一回り体が大きなガタいのいい女性に助けてもらったんだけど、その人は?」
「あっ……」
彼女の顔が一瞬曇ったかのように見えたがすぐに答えた
「その人なら今向かってる村に先にいったよ。あなたを私に任せて先にちょいちょいーっていっちゃったの。本当困るよね。そして私が手当したの」
やっぱり俺はこの子に手当されたと内心喜ぶ。
「あの森にいた青いやつらはなにものなんですか?」
「け・い・ご・は・ダ・メ!」
そういって彼女は俺にでこぴんをしてきた。ちょっと痛かったが嬉しかった。
「あなたもしかして記憶喪失かなにかなの?村についたらそのことあまり言わないほうがいいわ」
「はい」
そういうとまた俺はでこぴんされた。そして彼女はそのまま続けた
「あれは帝国が作った生物兵器、私たちはトイフェルって呼んでるわ。帝国は禁忌の魔法を使って罪のない動物を兵器として利用しているの」
「帝国……?」
俺がキョトンとした顔をするとマシロが少し驚いた顔をしていた。
「……君って本当に全部忘れちゃったの?これは重度……私が全部思い出すまで話してあげる」
少し戸惑う俺を見ながらマシロは小さな子どもに聞かせるように話したはじめた。
「むかーしむかしあるところに平和に暮らしている国がありました。そこに悪い神様がやってきてみんなをいじめるの。人間はどんどんやっつけられちゃうけど、そこに大きなドラゴンさんが力を貸してくれるの。バハムートケンシ様よ。龍の力を得た王様は魔法の力によって悪い神様を追い返すことができました。めだたしめでたし」
語り終わったマシロにはどこか哀愁ただよう雰囲気を感じた。
「ここがその平和な国っていうわけか?」
「せいかーい!1マシロポイントあげるね!ちなみに3マシロポイント貯まると、なんと!マシロの言うこと聞く権利がもらえるよ」
「俺が命令されるほうなのかよ!」
マシロは先ほどまでの暗い顔から一転して笑顔になっていた。
「さっきの話ね、妹が小さかったころ、マシロがよく聞かせてあげたんだ」
「優しいお姉さんなんだな」
「……うんっ!」
マシロの返事は少しカラ元気だった
——次枠続く
12人の魔女とラグナロク @takadakirito
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