終わったようで、始まっている。

 元くんから告白されてしまった次の日。私は、かなり憂鬱な気分でコンビニに来ていた。アルバイトではないんですが、なんか足が向いて…。


「いらっしゃいませー。って…。」

「あっ、元くん…。」


 …気まずい。でも、そんな私の気持ちと裏腹に元くんはいつもと変わらない元気そうな笑顔で「今日は何しに来たんっすか?」と聞いてきた。


「うん。なんか足が向いてね…。今日の担当って元くんだけでしたっけ?」

「いや、今日の担当は、俺と、武さんっすよ。武さんに用っすか?」

「うーん。そういう訳じゃないですが…。そういえば、武さんが見えませんね。」

「あー。武さんなら…」



「ちょっと、何拗ねてるんですか?」

「す、拗ねてないし!」


 元くんに聞くと、武さんは職員専用休憩室にこもっていたのです。そこの隅で、体育座りをして暗くなっている。


「何があったんですか?話してくれます?」


 私は武さんの横に座って尋ねる。


「…。ロアンちゃんに申し訳ないから、言わなくてもいい?」

「言ってください。何ですか?私に申し訳ないことって…。」

「それが…。」


「俺、高浜さんにフラれた。」


「あぁ…。………はぁ!?」


 一旦落ち着こう。私。


「いつ、いつコクったんですか!?」

「昨日。」


 昨日と言えば、私が元くんからコクられて、私が元くんをフッた日。

 そんな日に、武さんが高浜さんにコクって、武さんが高浜にフラれた。なんて……。


「……。昨日、ですね。私もいろいろあったんですよ。」

「…ん?何かあったの?」

「私、昨日元くんに…。」

「ちょ、ロアンちゃん!?何言おうといてるんっすか!?」


 ちょっぴりしんみりムードの中に飛び込んできたのは、


「元くん!?」だった。


「ロアンちゃん。その事については俺から言わせてほしいっす。」

「……分かりました。」


 その場に少しの沈黙が落ちる。


「武さん、俺、昨日、ロアンちゃんにコクりました。」


 武さんがビックリしたように固まる。


「まぁ、結局フラレちゃったんっすよね。ロアンちゃん。武さんのことが、マジで好きみたいっすよ。俺が入る隙がないほどに。」


「マジかよ…。」


 私は赤面する。武さんが手で口を押さえてアワアワしてる。


 私は静かに武さんに向き直る。


「武さん。私は、やっぱり武さんのことが好きです!付き合ってください!」


 武さんも私に向き直る。


「……ごめん。やっぱり、俺は、ロアンちゃんと付き合えない。」


「俺…………




  元浩のことが好きになってしまった。」


「「は……?」」


 二人で顔を見合わせて固まる。


「「えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」


「いやいや、それはないでしょ!?」

「てかそれ、本人の前で言うことじゃないっすよね!?」


「あっ、そうだった!」


 ズコー


 やっぱり、武さんは武さんだ。また私は、武さんの恋の応援をするのだろう。


 その事を思い浮かべると、笑いが込み上げてくる。この事からは永遠に逃れられないのだろう。


「ロアンちゃ~~ん!」

「はーい、何ですか?」


 私の恋は、終わったようで、また始まったようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アンドロイドが人間に恋をしたら。 美織 @days

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ