1つの悲劇

50匹近いウィランを倒した後。また階段を登っては、遭遇するウィランを倒しながら進んだ。

魔女の部屋のフロアにやっとの思いで到着した。

魔女の部屋に進んでいく。

そこには王子の父がいた。

「父上!」

王子が駆け寄ろうとするが、近づいて気づいたのだろう。王子はしゃがみこんだ。それは、王子の父の亡骸だった。

しかし、それは動きだした。

魔女の呪いに操られ。

数多くのウィランを引き連れて。

魔女の声がフロア全体に響きわたる。

「お前の愚行でお前の父は命を落とした。お前を庇う為に死んだのだ。お前の招いた結末だ。結末を精々楽しむといい。」

その冷酷な魔女の声が、王子の心に追い討ちをかける。

「貴様…よくも…父上を…」

怒りを隠しきれない王子に魔女が囁く様に言った。

「父上か。フッ!笑わせるな。血も繋がっていないのにか。」

囁く様にとはいえ、かなりの音量なので嫌でも僕たちにも聞こえた。魔女の言葉に動揺が隠せない。

「あぁ。お前の言う通りだ。しかし、彼が私に与えたその気持ちだけでいい。血の繋がりなんてあってないもの。私は彼を父として認めている。それを貴様の戯れ言に利用するなら容赦はしないぞ。」

王子がそう言ったとたん彼の持っていたタガーが輝き出した。

「剣よ!我に力を!」

そう呟きタガーをウィランに向けてひとふりする。途端に100匹近いウィラン達は消し飛んだ。

「剣よ!我に奇蹟を!」

そう呟き、動く屍となった父に向かって歩いていく。父は魔女の呪いに操られ剣を振るう。しかし、王子にはかすり傷の1つもつかない。そのまま歩みより父の亡骸に触れるとそれは動かなくなった。

呪いを解いたのだろう。

「安らかに眠ってください。」

その一部始終を見ていた僕たちは唖然とした。しかし、魔女は無情にも突然姿を現しウィランを呼び出した。

王子は見るからに戦える状態では無かった。

「仕方ない。ここでケリを付けるわよ。」

僕たちはそのままウィランとカオスストーリーテラーを討ちに出た。



僕たちは魔女を倒した。

しかし、次の瞬間床が崩れ落ちた。そのまま重力にしたがって、一階に落ちた。







気が付くと、レイナが心配そうな顔で上から僕の顔を見ていた。しかし、僕はレイナの後ろにいた人物に驚いた。その人物は持っていた剣を降り下ろそうとする。僕は慌ててレイナをかばいながら、その一撃を間一髪で逃れた。

その人物は、僕がよく知っていた人物に瓜二つだった。

「まさか、君は…」

「知っていたの。あら意外だわね。そおよ。私がシンデレラよ。」

近くの王子も目を覚ました。

「チッ!永遠に起きなければ良かったのに。」

「いったい、どうして。」

僕は尋ねた。

「簡単なことよ。王子と結婚したくないから。他に好きな人ができたからよ。とても、シンプルでしょ。」

シンデレラがそういうと、剣を突然振るう。

「危ない!」

王子は慌てて僕らをかばった。

近くに落ちていた『氷の剣』で…

彼女はたちまち凍りついた。

僕らは呆然としていた。

王子は涙を流していた。

彼の作ったあの隠し通路は、シンデレラと会うためのものだった。


しかし、彼には話しかける勇気はなかった。


ただ遠くから見守ることしか出来なかった。


片思いだった。


今となっては、永遠に片思いのまま。


王子は彼女をそっと抱いた。


彼にはきっと凍りついた彼女の体温が伝わっているのかもしれない。


愛する者を守ることが出来なかった王子。


愛する者を失った悲しみと、

守れなかった自分への失望と怒り。



僕らはまだ王子がおこす行動を予測出来なかった。




王子は彼女を抱いたまま自らの指に剣を当てた。




剣の刃は彼の指に微かな切傷を残す。




『ただの剣』であれば大したことはない。




しかし、『氷の剣』であれば別の話だ。




王子の体が少しずつ凍りつく。


「ごめんな。お前を救えなくて。」


その一声を残し、凍りついていった。




時の関節は、外れてしまった。


それを治す僕らにとっては、


関節が外れた事実は変わらない。


レイナのいつもの調律が始まる。


「…に…調律を……」


調律が終わったとき、僕は泣いていた。



しかし、僕らの旅は、運命と言う旅路はまだまだ続くようだ。





新たなシンデレラ達に幸せが訪れるように。

祈りながら、僕らは想区を後にした。

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暗闇のシンデレラ 滝尾 陽 @ambernannan1107

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