胸糞悪い小説を読みたくて、読み始めました。ところが、最後まで読み終えたあとに残ったものは、最初の期待を180度反転させたものでした。ですが決して期待外れではありません。してやられた。どうしてそう思ってしまったのか?
序盤は血なまぐさいシーンの連続。人物の過去が描かれる箇所もあり、復讐に狂う者たちの活劇が「まだやるのか、(倫理的に)大丈夫なのか?」と不安になるほどの筆致で描かれます。ですが、その「大丈夫なのか?」は、やがて意外なかたちで方向性を変えます。とにかくその過程が鮮やかで、気がついたら物語に呑み込まれます。必然性のある胸糞ものでした。未読の方はぜひ、この読後感を味わってください。