THE*クソゲーイズム

烏乃実沙

第1話

—ここは、魔王の手に落ちた世界。

選ばれし者たちよ、冒険へと駆り出すのだ。


仰々しい書体の文字がPC画面の中央に映し出される。


「さあ、行こうか」

そう呟き、扉を開け—





「ん?開かないぞ?」


おかしい、扉は閉ざされたままだ。

PCのコマンドをよくみると、「扉 Lv10」とでている。

そして、おれのキャラクター「ガイア」のレベルは1。




「…………」


「なんじゃこりぁぁぁぁぁあぁぁあああ!!!!」




この、スタート時点からクソゲー要素満載のゲームは、昨日発売されたばかりの「Nightmare Of Knghits」だ。大手ゲームメーカーの1年ぶりの新作RPGということで発売前から結構話題になっていた。


「確か次世代本格RPGって書いてあったんだけどなあ」


そう落胆して呟くのは俺、甲斐谷大地(かいたに だいち)、29歳。

1日のほぼ全てをゲームに費やす無職。

まあつまりはあれだ。ニートだ。


って、そんなこと言ってる場合じゃなくて!


「どうすんだよ、この先。まだ冒険始めるどころか最初の街にすら着いてないぞ」


物は試しにと扉に初期装備の剣で切りかかってみる。




キィィィン…パキッ。


「…折れやがった」


切りかかった剣の剣先が綺麗な放物線を描きながら宙を舞う。


そしてその直後—


「GAME OVER」


重く低い音でPCがそう告げる。


「なんなんだよほんとに!」


コントローラーをつい投げ出したくなっちまうぜ。

「ただ、俺もゲーマーの端くれ。この程度の試練乗り越えてみせるっ!」



4時間後—


「はぁ、はぁ。なかなかやるじゃないかこいつめ」


俺は「扉 Lv10」の前で何度目かもわからない「GAME OVER」を聞いていた。


何度切りかかっても、何度開けようとしても。

このクソみたいな扉はびくともしない。


「こうなったら、扉は後回しだ。たーぶん他にスタート地点があるんだよな」


周りにある物を確認する。


右 白い壁

左 白い壁

後ろ 白い壁


「ほほほう。つまりはこの壁を押せばどれかが…」


そう言いながらまず右の壁を押してみる。


すると、壁が動いて、


「なーんだ、簡単じゃないか」



ドォォォォォン。


「ガイア」に向かって倒れてきた。


「……………」


「GAME OVER」


「まあまあまあ、ダミーの壁なんてよくあることだよな、うん。気を取り直して左と後ろの壁をっと」


ドォォォォォン。


ドォォォォォン。


「うん、わかってた。そうなるだろうなあっては思ってた」


これを、作った製作者はほんっっっとに腐ってるな。

何が次世代本格RPGだ。スタート地点から動けないとか次世代過ぎんだろ。


と、心の中で呟きながらも負けず嫌いな俺はもう一度ゲームを始める。


すると、先ほどとは違う画面が映し出された。


「女の子??」


画面には魔女のような格好の幼女が立っていた。

歳は大体10歳くらいか?

昔流行ったエロゲーの主人公みたいな。

可愛いっちゃあ可愛い。

この子の同人誌でもあれば即買いするだろうなあって感じの。

そんな女の子が愛らしい笑顔でこう告げた。



「お疲れ様です。ここまで通算100回GAME OVERをしたあなたに!特別にテレポートアイテムをプレゼントっ♡」



はい??


いろいろ突っ込みたいところだが、俺って100回もGAME OVERなってんの?ハンパないっしょ

俺のゲームしてる時の集中力。

まあ、だからニートなんてやってるんだけどね。


「まあ、とりあえずテレポートアイテム手に入ったって事で、冒険始めるかっ!」



—こうして、俺のクソゲーライフが始まる。

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