第4話 読んでいる貴方に

目の前の扉が開き「大丈夫」と女の人が駆け寄ってくる、私は唖然として何が起きているのか本気でわからなくなった・・・

女の人の顔は見覚えがある。ここに来る前に見た赤い車の運転手の女性だったのだ。

女性は他の人とは違う全身白の服を着ており私にこんなことを聞いてきた。

「何で転んだの!頭打ってない?名前と歳わかる?ここはどこだかわかる?」


私はわからないまま、助かるかもと思い、自分の年を言いここはどこだかわからないから助けて、足が痛くて動けないと話した。

女性は私の腕に「動かないで」と言いながら太い布を巻く、少しすると腕に巻いた布は音とともに大きくなり、私は腕が折れるかと思うほど締め付けられた、「痛い、痛い、助けてよ」と言うも女の人は大丈夫だから動かないでと言うのみで助けてくれない。

急に巻いていた布が緩むが私の事は忘れているかのように、女性は先ほど向こうから慌ててやってきた大男の方へ行き二人で話し始めた。


私はこの女性も大男の仲間だと思い、助けを求めるのを諦めた。


二人の会話は何となく聞こえてきたが私には何の話かわからなかった・・・正確には理解できなかった。同じような話を聞いた気がするがわからないのだ、私はわからないのだ・・永遠に。


これを読んでいる貴方ならこの会話の意味がわかるのではないか?


・・


白い服を着た女性が男に話し始める。

なんで、転んでるのよ!ちゃんと見ててよ。

この施設だと頭打っても内出血はわからないんだからホント困るのに。血圧は大丈夫だし、呂律はしっかりしてるからよっぽどいいと思うけど。歳は一応聞いたけどいつものように85歳なのに25だっていってる、頭打ってなくてもこんなんだからわからないけど。

右手足は脳梗塞の後遺症で麻痺があるから痛みが鈍感になってて折れててもわからないから、骨折は考えられるかも、念の為に隣にある病院にレントゲン写真撮りに行きましょうかね?

男の人が口を開く、

すいません、奥でカルテ書いてました。

こちらとしても何ともなくてもレントゲン撮ってもらうだけで安心しますからお願いしたいです、それと主治医の先生に診てもらうなら、最近昔に自分が起こした事故の事をまた言うようになったので夜の薬を検討してもらえないか確認してきて欲しいです。昨日も歩いて徘徊してました。

女性は、わかったと言うと、今日も忙しいのに仕事増えてしまったー、いつもいつもこれだから認知症はぁ。とボソリと呟いた。


・・


私は動く椅子に無理やり座らされ奥に連れて行かれた。出口だと思っていた扉が開くがそこは外では無く通路が続いている同じような場所だった。奥は寒く時折どこからか悲鳴気味た声も聞こえてくる、怖い・怖い・怖い。

ここはどこ、私はどうしているの、どこに連れて行かれるの・・


・・


私はいつになったらここから出られるのだろうか。


完結

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