漫画原作コンテスト最終選考に今さらレビューだけど――そこはご愛嬌!!
本作は日本各地に突如として『ダンジョン』が現れた以後の世界を描く物語で、具体的にはダンジョンを管轄する役所の職員が奮闘する物語だ。もちろん、こんな突飛な場所を扱うのだから、集まってくる職員も個性的な奴らばかりで、その軽妙でコミカルなやり取りがおもしろい。
漫画原作と言うこともあって、テンポよく人間ドラマとアクションシーンが進行していき、短い中に凝縮された物語が詰まっている。
僕が一番おもしろく読んだのは、『ダンジョン』と言うファンタジーを現実に落とし込む際の辻褄合わせの部分。ファンタジーにリアリティを持たせる嘘がとても巧妙で、考え抜かれている点がとてもおもしかった。
そこには、きな臭い陰謀や利権や、大勢の思惑があり、『ダンジョン』という存在とどう向き合っていくのかという作者なりのシミュレーションがある。それに振り回される公務員の悲哀ももちろん見どころだ。
第二部ではラーメンを巡る噂話から物語が始まり、またしてもきな臭い話が持ち上がる。
第一部はわずか四万字。第二部はまだ始まったばかり!
さぁ、この有名作品を一気読みして最新話に追いつこう!!
役所務めの公務員とひとくちに言ってもかなり色々な部署があるわけで、彼ら彼女らが具体的にどんな仕事をしているのかはっきりとイメージを持っている民間の人はそんなに多くないのではないだろうか。
本作は「魔界の入り口」が発生した日本では行政がいかなる行動を取るかを題材としたシミュレーション作品である。
とりわけ面白いのは、ダンジョンから現れた魔物に対して警察や自衛隊が対抗するという方向性ではなく、ダンジョンをある種の観光資源とみなし、地方経済の活性化のためさまざまな企画によって運用していこうというところである。
ダンジョンという物理的な市民に対する脅威すら政治にとっては利権であり、衆議院議員の先生が、地元に利益誘導するために「箱モノ行政」のネタとしていっちょ噛みしようとしてくる様子はある意味で非常にリアルであり、そしてダンジョンものとしては切り口が新鮮である。
こんな感じで、現実でも我々の見えないところでさまざまなやりとりが行われているのかもしれない……。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)