あとがき・小ネタ集
構想を練っているときは、実は沖田総司を出すつもりではありませんでした。ざっくりと「魔界の帝王が勇者にでも倒された後、何かの理由で召還された」くらいに考えていました。
今でも、それはそれで良かったかな?とも思います。ですが、魔王を改心させたらただのオッサンになってしまいそうなので止めました。だいたい、極悪人だからこそ魔王はカッコイイのです。
次の候補が沖田さんでした。わたしは、昔から日本史が好きです。特に詳しい訳ではないし、誰が好きとかいつの時代がいいなんてこともありませんが、好きです。近ごろ幕末がマイブームです。心がそのあたりにあるので、この時代の人にしようと思ったわけです。
あの時代は優秀な人がホイホイ亡くなっていますから、「志半ばで、しかも若くして、(恐らく)この世に未練を残して死んだ」という今回の設定において、人材には事欠きません。特に土佐藩なんて酷いもんですよね。
個人的には武市半平太が男前で賢くてステキだと思います。けれど、この方は結構過激な考えをお持ちだったようです。所謂テロリスト的な志士なので、猫のまま戻してもらえなくなりそうなので却下しました。
坂本龍馬も面白い人物です。土佐弁が難しいこと以外は適任だったかもしれません。けれど、彼はあまりに人気者過ぎるのでやっぱり却下。もし、彼が猫になっていたら紫がかってない真っ黒にしていたかな、と思います。
そこで沖田総司です。彼の儚い人生がこの設定に合う気がして、猫になっていただくことにしました。それに、彼はまだ20代。先の二人よりもはるかに若いです。人生のやり直しもし易そうですし、ヒロインと年も近いしでちょうどいいかとも思いました。
ちなみに、猫にムサシと名付けたのは沖田さんが武蔵の国のご出身だからです。武蔵と言えば小次郎だろうと命名の候補には入れましたが、宮本武蔵は一切関係ありません。
今思えば龍馬さんや武市さんを猫にして、歳の差恋愛、若しくはアラサーヒロインにしてもよかったかなとも思います。けれど、まあそれはいいでしょう。ちなみに、猫の時の黒いけど紫がかっていた毛の色は、わたしが持つ沖田さんのイメージと、普通に居そうにない色にして個別化したかった事との2つです。
そして、更に最近考えたのは、いっその沖田さんでもない無名の志士か新選組隊士でもよかったかな、ということでした。対場とか内容を合わせるならば、会津藩士でもいいかもしれません(同じではないでしょうけれども。)。
いっそ、架空のそれらしい人物を作ってしまった方がよかったかもしれないな、と今更ながら思います。もしかしたら、往生際のわるいわたしは性懲りもなく、名もない剣士編を改めて書くかも知れません。
化け猫の設定は思いつきでした。人の思念で100年生きるなんて、きっと何を調べでも出てきません。怨みをもって死んだ猫が化け猫になる、というのは有名な話ですのでこれは調べれば直ぐに出てくると思います。
猫が20年生きると化け猫になる、という説もあります。さらに、飼い猫ならそのくらいの年齢になれば人語を解する、とも言われているようです。実際に、長年猫を飼っている知人によると、どうやら思い当たる節があるとのこと。面白いです。
ちなみに、沖田さんが亡くなる前に「いつも庭に現れる黒猫を斬ろうとして斬れないまま亡くなった」というのは実話だそうです。実際に看病をしたという老婆の証言があったんだとか。そういう逸話が残っているので、これも調べると直ぐに出てくるはずです。
それにしても。斬ろうとしたなんて、それこそ化け猫になりそうな気がしますが……。斬れなかったからセーフでしょうか。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。これにて「黒い猫」は完結です。ご愛読、ありがとうございました。
以下、誰でも知ってそうな小ネタ集
1.沖田さんは年齢不詳
沖田総司の享年は三つの説があります。沖田家累代墓碑を元に24歳、沖田家に伝わる書物を元に25歳、生年から換算して27歳。本小説、「黒い猫」では24歳説を採用しました。
書くにあたって、沖田さんの享年が「確か、そのくらいで若かったような」と思い調べてみたら、三通りも出てきて驚きました。そしてなんと、「生年から換算して」としつつ、実は生年もはっきりしないんだとか。なのに「生年から換算して27歳没」ってどういうことでしょう。変なの。
2.お墓が残ってます
本作最終回で沖田さんの墓所の事にも触れていますが、今も東京都内のお寺にあるそうです。ただし、一般人の立ち入りは禁止とのこと。
昔、新選組ブームが起こったそうで、一時ファンが殺到したそうです。けれど、ファン達のマナーの悪さに辟易した住職がその墓地を立ち入り禁止になさったんだとか。懸命な判断でしょうね。
3.本名はまるで別人
作中にも出ましたが、沖田総司は通称名です。本名は
普段使うフルネームだと、沖田総司房良となるんでしょうか?ちなみに、あとがきにも出てきた二人は、坂本龍馬
諱(いみな:「直柔」や「小楯」の部分)は本名なのは最近知ったんですが、えらい人が呼ぶときに使ったり、本人が死んでから使う名前だそうです。というのと、どんたけ偉くても相手を諱で呼ぶのは失礼だという話も聞きます。通り名で使う苗字の他に、更に本姓があるってなんてややこしい……!
以上、たぶんだいたいの方がご存じであろう小ネタ集でした。お粗末様です。
黒い猫 豊福 れん @rentoki24
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
子連れフロリダ生活記録/豊福 れん
★20 エッセイ・ノンフィクション 完結済 110話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます