#5' ミスフォーチュン・レイディ

 少女が路地裏を歩いていた。レンガで舗装された道、両脇を挟むように雑居ビル。その上に、落ち始めた陽光が郷愁を誘う色を投げかけている。そんな夕暮れ時の道を悠々と闊歩するのは、学校帰りなのか制服姿の少女。短く切りそろえている襟足が、少し高めのヘッドホンの下で個性的にうねっている。彼女お気に入りのその機械は高い遮音性を誇り、彼女が普段悩まされているの声すらシャットアウトしてくれるものだ。


 ……彼女、九頭見くずみ 流美るみは機嫌がよかった。可愛い後輩とお気に入りの彼ティルクーニア情報交換どきどきのデートをセッティングした帰りだったからだ。彼女自身、彼に期待しすぎていると思っている。恋の予感というわけではない。悪意に捉えられかけている後輩が、その死の淵から逃げおおせられるのではないかという、期待。

――歩くリズムに合わせて上下する心が、その思考ゆえにに気づけなかったのは、仕方のないことだったのかもしれない。


 ひた、ひた、ひた。


 背後から響く足音。素足で歩くような、どこか現実感のない音に、九頭見は思考の海から引き戻された。その瞬間に、身体の芯にねっとりと触られるような不快感が走る。異能力者からの宣戦布告ワーディングの気配だ。振り返るより先に、直感が鳴らした警鐘に従うことにした。


「……ルルハルリ!」


 超自然の力レネゲイドを集中させ、空中に鋭角を描く。指先からこぼれ、宙に描かれる幾何学模様がくすぶり、おぞましい匂いが立ち込める。同時に、背後を振り返りターゲットを視界にいれようとした。なびく髪、制服のスカート。ヘッドホンで塞いだ耳は周囲の雑音を削り、半分以上を構成し終えたの荒い息遣いだけを拾っている――。


















 待って。なんで、



















 一瞬の空白、動揺。そう、神話生物の囁きすら軽減する高性能なヘッドホンをしているというのに……。振り返った少女の視界は、黒と白に隠された。つまり、高速で移動した余波で逆立つ髪と、白いワンピースの色に。

 息を飲む。間近に迫った異形の少女は、子供の合唱のような声で囁いた――。

















 レンガ造りの道路、両側を挟むように立ち並ぶ雑居ビル群。そんないつもの日常で、非日常の赤い花が咲いた。崩れ落ちる少女の肢体、霧消する空想生物。

 見下ろすは、白いワンピース姿の幼い少女。右手は変形し、剣のように鋭く尖り……犠牲者の赤を、地面に垂らしている。彼女はノイズ塗れの声で、数人の子供が同時にしゃべるような声で……もう一度、誰ともなく尋ねた。


「わたしたちの、なまえは?」


答える者はいない。ただ、九頭見は途切れる意識の中で必死に携帯電話に手を伸ばし――。




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1、助けを呼んだ。

2、呼ぶ前に力尽きた


 →投票結果:2



追加投票(得票数大引く得票数小)

奇数:致命傷の前にPC1が現場にたどり着ける。

偶数:次シーンは入院中の九頭見に面会するシーンになる。

 →結果:19票。10(選択A)-9(選択B)で奇数

  よって次シーンはマスターシーンの続き


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もすぐりーん・いんふぇくしょん たり @euth

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