女神と学ぶ異世界史

「みなさん、ごきげんよう。」


 黒のタイトスカートと開襟のブラウス、銀縁の眼鏡という出で立ちで女神が黒板の前に立つ。

 さしずめ、女教師風というところだろうか。

 ムチムチとした太ももと、寄せてあげたおかげでブラウスの胸元からチラリと除くブラジャーのレースのせいで目のやり場に困る。


「はい、先生にご挨拶してー。」


 女神はそんなこと言いながら、わざとかがんで胸元をチラリズムから、露出狂への進化する。

 その様子を見て俺がどぎまぎしていると、女神は満足したように微笑んで黒板の前にもどっていく。


「じゃあ、教科書の38ページを開いて。もちろんみんな予習してきたよね。」


「あのーせんせい。申し訳ないのですが、ここは俺とあなたしかいませんし、今回が1回目のじゅぎょうなんですが。」


 俺はおずおずとつっこむ。

 別に何を突っ込んだわけではない。

 現代の授業においてはぼけと突っ込み生徒はどちらもこなさなければいけないという理不尽な状況にある。

 そう今時の授業というのは教師がぼけたら生徒であっても突っ込まなければいけない。

 教師がぼけたらすかさず突っ込みをいれ、教師のネタは空気を読んで速やかに笑う。

 今日の学校教育において授業中においても常に空気を読むというのは欠かせない能力なのである。

 しかし、女神は少し不満そうだ。

 おそらく自分のセクシーコスプレを見せつける相手があまりにも淡泊であることに不満があるのだろう。


「もっと、なんにんも召喚すればよかった。特に女性に免疫のない童貞。」


 などとぶつぶつと文句を言っている。


「せんせい、授業してください(棒読み)」


 などと抗議をするが、女神はまだ自分の女教師コスプレを見せびらかしたりないらしく、


「童貞でイケメンでゲイじゃない若い男を召喚しましょう!」


 などとほざいている。

 俺は、物語を進めるべく仕方なくつぶやく。


「やれやれ。」


 お約束のもつ魔力は非常に強力だ。

 女神は途端に注意をこちらに戻し、すこしだけ赤くなって授業を始めた。


「本日、皆さんにご紹介するのは、エゲルース王国です。ぶっちゃけるとこの国は残念ながら科学技術は大したことがありません。異世界では人気かつお約束の剣と魔法が主力の中世のヨーロッパ風な世界観です。そのため、問題が解決したあとは観光なんかすると皆さんが大好きなネズミの国には劣るかもしれませんがそこそこのエンターテイメントとして楽しめると思います。

 通貨については、向こうにいって適当に物々交換でもしてなんとなく感覚をつかんじゃってみてくださーい。いや、手抜きではないですよ。ほら、貨幣価値ってどんどん変わっていくものだから、やっぱり説明受けるんじゃなくて自分で実感したほうが身につくっていうか。」


 非常にいい加減な授業である。


 この女神はかなりあほなんじゃないかと読者の皆さんは不安であろう。そこで、これから向かう世界について手元の教科書および女神の説明を意訳して説明させてもらおう。


 どうやら俺が召喚される世界は異世界転移としては今人気のかなり条件のいい世界らしい。

 建物や服装は中世ヨーロッパ風の美しい景観が保たれている。

 ご都合主義という感じで、言葉は女神の魔法により通じることになっているという。

 また、こちらの世界とは異なり、動物も二足歩行に進化しているというこれまたファンタジーらしさ全開で様々な人種(?)がいるため、差別にならないように発言に注意すること。

 あとは、これから俺が救う王女は「温室の姫君」と呼ばれ、王女のくせにほとんど国民の前に姿を現したことがない。正真正銘の箱入り娘、深窓の令嬢、温室育ちとのことだった。

 残念ながら、女神から聞き出せた情報はこんなものだった。

 女神はいまだにコスプレの大変さについて熱く語っていて、俺が救わなければいけない世界のことをすっかり忘れている。

 俺は仕方がないので、女神に要求する装備とスキルを書き出すことにした。

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剣と魔法の異世界で声優やってるけど質問ある? @kamiyamayui

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