この役立たず!

 怪しげなマントの男が王女の口に手を添える。


 鷲鼻が目立つ顔が、目を細めることによっていっそう人相が悪くなる。


「さあ、王女様。口を大きく開けてください。」


「そんなはしたないことできません。」


 王女は毅然とした姿勢でいう。


「いいんですか。そんなこと言って。私はあなたを好きにできることになっているんですよ。さあ、大きく口をあけるのです。」


 そういうと、マントの男は王女の口に無理やり絹のハンカチを詰める。

 こういう時は通常パンティーを詰め込むというのが流儀な気もするが、さすがに相手は王女。清らかなる姫君である彼女の前ではいくら俗物にまみれたマントの男でもそこまでするのはためらわれた。


「ふぉんなふぉふぉすふぃふぇふぁににふぁる(こんなことしてただじゃ置かないわ。)」


 王女はハンカチをかまされ言葉にならない言葉で抗議する。さすが王女。こんな時でも姿勢は美しい。彼女のもつ二つのたわわなメロンがより一層豊かな実りに見える。

 男は一瞬、その姿に見とれた後、我に返った。

 ゆっくりと嗜虐的な笑みを作り王女の口に水晶でできた球をねじ込む。


「ああ、王女様。もっと大きくお口を開けましょうね。ほら、もっと。」


 口を閉じることのできない王女はいやいやをするが当然逃れることができない。

 2個目の玉を加えさせられるとツーっと口の端からよだれが垂れた。

 紅をひいてない、サクランボ色の唇から透明な唾液がしたたり落ちるさまは非常にエロティックだ。


「さあ、王女様そのままこちらの朗読してください。」


「ふぁふぁふぉ、ふぉふぇふぇ。」


「さあ、もっとちゃんとお願いするのです。強情な王女様だ。まっ、じゃじゃ馬を手名づけるのも悪くなかろう。」


 男がそう言ったときに、とうとう王女の我慢の限界が来た。

 口にねじ込まれていた水晶球を吐き出し王女はこういった。


「役立たずめ!お前は首よ首!」


 王女の剣幕に押されたマントの男は部屋を逃げるようにでていった。

 王女の部屋には怒り狂った王女と彼女の次女だけがのたたずむ。

 次女は困ったように微笑んだ後、王女の治療ノートの一ページにまた新たなバツ印を書き込んだのであった。

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