第12夜 少女未満

 夢をみた。


 私は少女くらいの年齢だ。近所に住んでいる、小説家のおじさんに憧れている。ちょっと気障で少し不思議なSF小説を書く、サングラスのおじさん。私はいつもおじさんの家に遊びに行く。

 おじさんはあまり仕事をしている様子もなく、いつもニコニコと私を出迎えてくれる。私はちょこんとおじさんの膝に座る。それが最高の誘惑になると思って。

 けれどおじさんはちっとも、私の色気に惑わされる様子がない。

 ニコニコしたままで、私の頭を撫でてくれる。嫌じゃないけれど、子ども扱いされているようで、ちょっとさみしい。

 ふと、自分がとても幼いことに気が付く。髪型も服装も、まるで子供。

 おじさんが自分をみつめる瞳が、妹や娘に向けられるそれだということにも。

「あーあ。私、もっと大人ならよかったのになあ」

 そう、ため息交じりにつぶやくと、おじさんは、

「……まったくだね」

 と答えて、軽く肩をすくめた。


 この人は、こんな時にまで、自分の書く小説みたいに、気障なんだな。

 私はそう思って、泣き笑いの顔になる。


(おしまい)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きのうみた夢のお話 くまみ(冬眠中) @kumami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ